1000億ドル超のAI基盤計画「Stargate」、その構想はどこまで実体化したか?
2025年7月22日、OpenAIは公式ブログにて「Stargate advances with 4.5 GW partnership with Oracle」と題した発表を行ったので解説していく。
超大規模AIインフラ構想「Stargate」
これは、OpenAIが長年構想してきた超大規模AIインフラ構想「Stargate」に関して、その第一フェーズが実装段階へと移行したことを示す重要なマイルストーンである。
4.5ギガワット分のAI専用データセンター群を全米で構築
今回の発表では、OpenAIがOracleとともに全米規模で4.5ギガワット(GW)分のAI専用データセンター群を構築するパートナーシップを締結したことが明らかにされた。これにより、OpenAIはAIトレーニングおよび推論のための専用インフラ整備を本格化させ、将来的なAI能力の指数関数的拡張に備える体制を整え始めたことになる。OracleはすでにOpenAIのモデルを稼働させるクラウド基盤のひとつとして稼働中であり、今回の連携はその拡張にあたる。
複数のパートナーと共同で推進するAIインフラ
同時に、SoftBankもOpenAIのStargate構想におけるパートナーとして言及されている。OpenAI公式ブログ(2025年7月22日付)では、SoftBankとのパートナーシップが「強い勢いを持って進んでいる(moving forward with strong momentum)」と明記されており、現在はデータセンター建設候補地の評価(site assessments)を共同で実施中であることが示されている。また、OpenAIはStargateを「AIインフラプラットフォーム全体の呼称(overarching AI infrastructure platform)」と再定義し、Oracle、SoftBank、CoreWeaveとの提携を軸にした国際的なスケールでの展開を進めている。OpenAIはこのStargateという名称を、単一施設を指すのではなく、複数のパートナーと共同で推進する「AIインフラプラットフォーム全体」の名称として再定義している。
この節目の発表により、1年以上前から断続的に報じられてきたStargate構想が、いよいよ実体を持ち始めたことが確定的となった。以下では、この「Stargate」計画の初期構想から現在に至るまでの経緯を、事実に基づいてたどっていく。
1000億ドル構想「Stargate」の軌跡
2024年3月、Reutersが報じた内容によると、MicrosoftとOpenAIは共同で「Stargate」と呼ばれるスーパーコンピューターキャンパスの建設を計画していた。構想は全5フェーズから成り、最終段階であるフェーズ5の中核となるStargateの完成時期は2028年、予算総額は1000億ドルに達する可能性があるとされた。主な資金提供者はMicrosoftであり、報道時点での推定では総額1150億ドルに達するとの指摘もあった。
この構想は、当初からOpenAIの大規模AIモデルの学習に必要となる膨大な計算資源を長期的に確保するための中核的インフラ計画であり、「クラウド上の神殿」とも形容される次世代AIインフラの原型と見なされてきた。(以下のNote参照)
Stargateはどのように再始動したのか──トランプ政権と新AIインフラ戦略
トランプ大統領がStargate構想を公式発表
二次トランプ政権発足の翌日となる2025年1月21日、ホワイトハウスにてトランプ大統領はStargate構想を公式発表した。この日、彼はOpenAI、Oracle、SoftBankを主軸としたコンソーシアムが主導するAIインフラへの民間投資を最大5,000億ドル規模で展開する計画を公表した。初期段階では1,000億ドル枠で開始し、段階的に拡大すると明言された。
会見にはOpenAIのサム・アルトマン、Oracleのラリー・エリソン、SoftBankの孫正義が並び、それぞれがトランプ政権によって設立されたジョイントベンチャー「Stargate LLC」のステークホルダーとして紹介された 。トランプ氏は米国内のAIリーダーシップを強化するために大統領令(executive order)の活用を検討していると述べ、データセンター建設を国家戦略レベルで支援する意向を示した 。
発表直後、OracleやNvidiaなどの主要テック株が一斉に上昇し、投資家の期待が明確に反映された。市場はこのStargate発表を「Big Techの構造的後押し」と受け止めている。
これによりStargateは単なる技術構想ではなく、国家のAIインフラ戦略として明示されたプロジェクトとなった。今後は、具体的な初期データセンター建設、雇用創出、中国とのAI覇権競争といった文脈の中で進展が注視されることになった。
マスク氏が「孫正義にはそんな資金力がない」といちゃもんするもトランプ牽制
トランプ政権がStargate構想を公式発表した後、イーロン・マスク氏が「孫正義氏やSoftBankには5000億ドルの資金調達能力がない。孫氏が支えられるのはせいぜい100億ドルだ」とX(旧Twitter)上で指摘した。
この指摘に対して、トランプ大統領は「問題視しない」と発言した。マスク氏の批判は「彼らがお金を出せるか?」という問いにすぎず、トランプ氏は「政府ではなく、当事者たちが資金を用意すればよい」とした。
さらにトランプ氏は「彼らは非常に金持ちで、資金を用立てることが期待されている」と述べ、マスク氏の疑念に首をかしげた。加えてトランプ氏は「マスク氏は参加側の一人を嫌っているだけだ」とも語り、論点を孫氏の資金力から個人的な好悪にすり替えた。
以上の流れにより、Stargate構想を巡る中で、マスク氏の資本への懐疑に対し、トランプ氏が明確に支持の姿勢を示した構図が浮かび上がった。
ブルームバーグの記者エミリー・チャンがStargateを視察
ブルームバーグ記者エミリー・チャン氏は、テキサス州アビリーンに展開するStargateプロジェクトの建設現場を直接取材した。彼女はドローンや現地レポートを通じ、「Stargateメガファクトリー」と称されるAI専用データセンターの全貌を初めて明らかにした。
建設規模と技術構成
プロジェクトは8棟のデータホールを想定し、各ホールに最大40万枚以上のBlackwell GPUを設置予定であることが明示された。電力容量は約1.2GWとされ、2026年中盤の全面稼働を見込んでいる。
冷却手法においては、閉ループの水冷循環システムが導入され、風力発電とガス火力併用のエネルギー構成により、再エネのみでは賄いきれない実情を想定した構造とされている。
進行している投資規模
当初の100億ドル規模から、現時点で500億ドル超をコミット済み、必要に応じてさらに5倍(=最大2,500億ドル)まで拡張可能とされている 。
エネルギーと環境への現実的対応
ネットゼロ目標は達成困難とされた。現場責任者は「再エネ証書やオフセットの活用が現実的な対応策」とコメントし、小型原子炉・地熱・核融合などの新技術探索が視野に入る状況と報じられた。
サプライチェーンと地政学的リスク
アルミ・鋼材・先端チップなど依然として中国依存が高く、「国内製造だけでは需給を満たせない」とし、CHIPS法に基づく国内生産拡充と、アイスランド・日本などとの分散型サプライチェーン強化が不可欠とされた。
サム・アルトマンCEOへのインタビュー
利用量増加を主要課題と位置づけ、AI普及により当初想定以上のインフラが必要になると強調。
戦略構想は「SF的なゲートのイメージ」から名付けられ、孫正義・ラリー・エリソンとの連携を経て今の計画に至ったと説明された。
技術が人類にもたらす雇用の未来について、「ロボットの可視化が心理的に衝撃を与える」とし、倫理的慎重さも必要と述べた。
このBloombergの現地レポートは、Stargateの「構想」から「現実」への移行を明確に示しており、プロジェクトが建設段階ではなく、完全稼働へと歩を進めている点が最大の特徴といえる。
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