「信頼した」リハビリの陰影――回復という名の"型"
信頼することは
素晴らしい ことです
でも
脳卒中のリハビリの現場では
その信頼が招いた
繰り返される 現実に
無力感を抱くことが
あります
そんな 想い出を
綴りました
似ていく動作――回復期の "型"
2年ほど前
わたしは 一時
某自費リハビリテーション施設にて
リハビリを提供していました
そこで
ある 脳卒中片麻痺の女性を 担当しました
比較的 年齢はお若い
麻痺は 左側
杖を使って おひとりで 歩かれます
最初に 彼女の歩き方を見たとき
『あ~… また…』
と 思いました

麻痺側ではない 右足に大きく体重を乗せ
左足は 突っ張ったように 硬くして
大きく前へ振り出します
足首が かえらないので
装具を装着しています
左腕は 強く曲がり ご自分の胸の前に 手がある状態です
お客様たちは
いろいろな ご年齢
発症した 脳の中の部位も
バラバラのはずなのに
歩き方は 皆
似ています
麻痺している足が
つっぱる
重く感じる
麻痺している腕は
強く曲がり
伸ばそうとしても なかなか伸びない
指は もう 伸びない
その腕は
使えない
ただあるだけ…
本来であれば
退院したときの 歩き方は
脳の損傷部位や大きさにより
「異なるはず」
です
しかし
そこの施設でお会いする
「杖でひとりで歩ける」
レベルの お客様は
皆 同じような歩き方
入院されていた病院は バラバラ
つまり どこの 回復期病棟でも
退院したときは
皆 同じような歩き方
そして だいたい みなさん
話されることも
似ている
…
歩いているうちに よくなる
ひとりであるいていても よくならない
理学療法士がいるところで 歩いていれば
いつか よくなる
…
症状も似ている
体が 痛い
麻痺をしている 手足が つっぱる
夜 よく眠れない
朝 起きたときが いちばん 体が硬い
…
そして それを
「脳卒中とは こういう 病気」
という
「ひとこと」 で
「納得」 している
…
痛みがあれば
痛み止めの薬
眠れなければ
眠れる薬
(本来の睡眠とは脳波が異なるけど…)
体が硬くなれば
マッサージをしたり温めたり
腕がこれ以上硬くならないように
日頃から反対の方の腕で動かす
「脳卒中だから
症状がでて
薬や何かで 対処する」
この パターン…
でも もう
彼女の指は
伸びない…
回復の "常識" という檻――症状の反復
入院中の リハビリが どのようなものであったのか
いろいろ 教えてくださいます
最初は 大きな 装具 を付けて 訓練を始めて
だんだん その装具が 小さくなって
今は この装具に なりました
歩く 速さを 定期的に 測定していて
だんだん 速くなることが 実感できて
うれしかった
リハビリは 幸い
偉い先生に みてもらえた
だいたい みなさん そんなお話
彼女は
「ボトックス注射」
も 経験されている
足首が下向きで硬くなりすぎた
立っても 踵がつかなくなった
ふくらはぎに注射
「筋肉を柔らかくしてくれる薬」
と 彼女は言ったけど
2~3か月 筋肉の作用を小さくするだけで
「硬くなる原因」
が 変わらなければ
元に戻る
彼女も 結局 硬くなっている
退院するときは どのような指導をされましたか?
と お聞きすると
「動かなかった 足が動くようになったのは リハビリのおかげ
リハビリをやめると すぐにどんどん 悪くなる
長嶋茂雄さんも 言っていたように
一日休むだけで 悪くなる
だから がんばって 歩いてください」
退院時の指導が
「歩いてください」
だけ
しかも このような話
珍しくない
…
杖 や 装具 など
「道具」の話
力の強さ 歩く速さ
歩いた 距離 時間 などの
「数値」の話
担当リハビリの 役職
病院の 評判などの
「評価」の話
痛み止め 眠剤などの
「薬」の話
介護保険サービスなどの
「制度」の話
そういう
「外側」
の はなしが
多い
身体が怖がる――数値が導く「誤解」
そういう 方々は
わたしのような リハビリは
受け入れられない
特に
難しいことなんて
何もしていない
病巣から判断するに みたいな
難しい 脳神経の話を
しているわけではない
あなたが この病気になった意味は?
なんて 哲学的な話を
しているわけじゃない
ご理解いただけないのは
こんな アプローチ
「立っているだけでいいですよ
でも そのまま動かないで」
と 指示を出す
わたしは 全身のバランスを見ながら
少しずつ 左足に 体重を誘導する
すると ある一定のところで
立つ姿勢を 勝手に 変えられる
体が 勝手に 動いてしまう
なぜなら
やったことが ない 動きだから
立つ 歩く で
絶対に必要な動きなのに
それを しようとすると
体が 「怖い」 と思ってしまう
(本人の感情ではなく)
姿勢を修正して 再び 行うと
また 勝手に姿勢を 変えてしまう
これでは 意味がない…
「あ 左足に 体重を乗せる練習ですね?」
と 彼女は
自分なりの 理解の仕方に 勝手に解釈してしまう
「入院中いっぱい 練習しましたよ!
左右の足の体重が どれくらい乗っているかの
測定する装置 使って
練習するうちに どんどん よくなったんです!」
と うれしそうに その時の動きをしてくれる
腰を 大きく くいっと 左にひねる 動き
左足に体重が乗った "ような" 結果
が出る動き
わたしが 求めているのは
そんな動きじゃない
そもそも そんな動き
立っているとき
歩くときには
絶対しない
絶対しない 動きを
練習して
数値がよくなったと
喜んでいる
そんな病院のリハビリが
目に浮かぶ
努力が裏切る――予測できたはずのリスク
左の足首が硬くなるので
装具も金属製の支柱が付いたものになっている
「リハビリ頑張り屋さんだから
装具も 壊れにくいもの にしようねって
先生が 金属製にしてくれたんですよ」
さすがに この発言には
お返事が できませんでした
絶句
に 近い 状態でした
…
それにしても この女性の
麻痺による 体の緊張の高まり(痙縮)は
強い…
残念ながら
脳画像の情報が 無い
それを みれば
理由がわかりやすいのだけど
彼女の体の反応から
考えてみる
「筋肉の緊張をおさえる神経の道」
が
影響を
受けているのかもしれない
(延髄毛様体脊髄路など)
もしも そうならば
入院中のリハビリは
かなり 慎重にしなければならない
努力的なリハビリが
右側の手足を りき(力)ませるような
努力的な リハビリ
がんばる リハビリ
が
どんどん この 左手足を
残酷に 硬くしてしまう
とくに 腕は
空中にあるものだから
その影響を
受けやすい…
正確に判断できない――リハビリされた「思考」
彼女が 入院していた病院は
かつて わたしが働いていた 病院だった
「わたし そこで 働いていました」
なんて 言わなかった
今の あの病院のリハビリの
仲間
だとは 思われたくなかった
だけど 彼女は
わたしの 働いた病院を
知りたがった
わたしの リハビリの腕前を
経験した病院で
判断したかったのでしょう
あまりにも 彼女にとって
「理解できない」リハビリ
を してましたからね
改善した部分が あったけど
わたしのリハビリの おかげ
だとは
おもっていなかった
入院中のリハビリの先生の
「指導」どおり
たくさん歩いたから
よくなった
そう 思っておられた
彼女が入院中
単純にがんばらせる リハビリを
させていたのは
その病院の
回復期病棟のリハビリの責任者だった
現在も
この県の 理学療法士協会の役員のひとり
かつて わたしを
病院から
"追い出してくれた"
Tという 理学療法士だった
経験・地位という「信頼」――Tという権威
Tは エビデンスが 好きだった
エビデンス の 意味を
勘違いしていたけど
海外の論文を よく読んでいた
そして その写真を見て
現場で 真似をしていた
ボールを使う 画像を見たら
次の日は ボールばかり 使っていた
「最近 アメリカの 論文で
効果があるって 報告があったんですよね」
と 患者さんに 言っていた
「日本ではまだ 知られていないけど
アメリカでは 有名」
この 論法が
好きだった
ちゃんと その 論文を読めば
「このタイプの方に このような効果が 認められた」
と きちんと
「条件」 が 書いてある
Tが している 相手の患者さんは
「このタイプ」
では なかった
「一応 私 主任です」
「私 一応 管理主任です」
「私 経験年数 結構ありますよ」
と 患者さんへ
遠慮がちに
「必ず」
言っていた
自分が休みのとき
代わりにリハビリするスタッフを
限定していた
わたしのようなリハビリをするスタッフが
あたらないようにしていた
でも それも 限界がある
わたしや 仲間が
Tの代わりに リハビリをすることがある
「この前 T先生の代わりの人に
リハビリしてもらったら
よかったよ~
あんな リハビリもあるんだね
さすが T先生の部下は
優秀だね!」
と 患者さんに言われることが
嫌
だったのだろう
リハビリ室で そんな話を聞いて
わたしや 仲間は
ふっ
と 気づかれないように 笑ったっけ
今思い出して
懐かしい気持ちを 抱く
みんな
辞めていって
今は
みんな
バラバラ
お元気に されているかな…
借り物の眼鏡を外す――自分の身体へ還る道
あのころ
「患者さんのためのリハビリを」
という 言葉を 盾に
お互いの リハビリを 批判し合っていた
そして
わたしたちが
負けた
一部の仲間は
リハビリの考え方を
組織に 合わせていった
合わせられなかった
わたしを含むものたちは
病院から
去っていった
…
入院して リハビリができる期間は
短くなっていくのでしょう
行われる リハビリも
その患者さんの 本来の回復よりも
限られた期間で
自宅へ退院できるような
能力を獲得することが
優先されます
入院中のリハビリが
重要であることは
かわりませんが
退院後
生活する中での
リハビリも
ますます 重要に
なっていくのでしょうね
あ
もう
なってますね
元患者さん たちが
ご自分の お体を
そして お心を
外からの 借り物の 眼鏡で
見るのではなく
ほんとうに 必要な ことを
知り
ほんとうに ご自分の体 心を
感じ
られるよう
お手伝いが
できたらなぁ
なんて
思いました
結び――移ろうもの 残るもの
昨日は 衆議院選挙でしたね
災害級の豪雪の日でも
するんですね
そういう こと
なんですけどね
問題は…
なんてね
ここまで お付き合いいただき
ありがとう ございました
どうぞ 今日という日が
あなたにとって
善い一日と なりますように
Unsplashのaustin austinが撮影した写真

