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📖【短編小説】「烙印」

(あらすじ)
夏の終わりの田舎町の中学校。気弱な少年・颯太が、教室の空気に押し潰され、命を絶った。誰もが主犯ではなく、誰もが共犯だった。落書き、嘲笑、冷たい視線――忖度が忖度を呼び、歯車は止まらず、取り返しのつかぬ悲劇を生んだ。主人公・悠斗は、颯太の死を前に祖父の猟銃を手に告別式へ向かう。颯太の遺志とは何か。赦しか、復讐か、それとも空虚な沈黙か。いじめの連鎖と人間の弱さを描く短編小説。空気が織りなす悲劇は、誰もを飲み込む――



短編小説「烙印」

その事件には主犯がいなかった。
誰もが、ただ空気を読み、求められていると信じた役割を演じただけだった。

X月XX日 親友の颯太が亡くなった。

田舎町の中学校。湿った夏の教室で、事件は静かに芽吹いた。

佐藤颯太、十四歳。気弱で、眼鏡の奥の目はいつも伏せがちだった。彼は目立たぬ生徒だったが、ある日、誰かが彼の机に「キモイ」とだけ書いた。

それが始まりだった。誰が書いたのか、誰も知らない。だが、誰もがその文字を見た。

笑い声が教室を満たし、颯太は顔を赤らめ、俯いた。

次の日、別の誰かが彼の鞄にゴミを詰めた。誰もが笑い、誰もが「これがこの場で求められている」と感じた。

颯太もまた、笑顔で受け入れるのが自分の役割だと信じた。笑わなければ、もっとひどくなる、と。

宮本悠斗もその教室にいた。十五歳、成績は平凡、友達もそこそこ。悠斗は颯太を嫌いではなかった。こうなる前は、お互いの家を行き来したりするような親しい仲だった。

だが、空気が彼を動かした。
級友の嘲笑に加わらねば、仲間外れになる。

颯太に冷たい視線を投げねば、裏切り者と見られる。
悠斗は小さな悪意を重ねた。健太の教科書に落書きをし、廊下で肩をぶつけた。心では「やめたい」と思いつつ、誰もがそうしているのだから、と自分を納得させた。

颯太は次第にやつれた。
笑顔は消え、眼鏡の奥の目は死んだ魚のようだった。

ある朝、彼は学校に来なかった。
夕方、川辺で颯太の遺体が見つかった。

首に縄の痕。

誰もが驚き、誰もが黙った。

教師はいじめを知っていたが黙認し「不幸な事故」と言い、親たちは囁き合った。「あの子、元々弱かったから」。

誰も主犯を名指さなかった。
なぜなら、そこにいる誰もが共犯だったから。

悠斗の胸は軋んだ。
颯太の死は、誰かが望んだものではなかった。

空気が、忖度が、歯車を回し、誰にも止められず
彼を殺したのだ。

颯太の告別式の日

制服姿の級友たちが、列をなした。
ハンカチを手に、涙する子たちがたくさん見受けられた。

会場の入り口付近では、級友を失った子どもたちの悲痛な叫びをカメラに収めようと、ワイドショーのインタビュアーが待ち構えていた。

「とっても・・いい子でした・・」
「どうして、こんなことに・・・」
「前日まで元気に笑っていたのに・・」
「将来、医者になって人を助けたいって言ってました・・」

みんな口々に死んでしまったクラスメートのことをカメラの前で伝えた。

颯太が亡くなる前日、悠斗は颯太に会っていた。

夕暮れが迫る屋上に二人はいた。

颯太はとてもやせこけ、生気がなかった。

「やつれてるみたいだけど、大丈夫か?」
心無い言葉だと思った。その要因の一翼を悠斗自身も担っていたからだ。

「あぁ、大丈夫だよ。僕はキミのためにも死ねないんだ」

「僕のためだって?」

「あぁ、わかるだろ。僕がここで情けなく、リタイヤしてしまったら、次はキミだからね、僕は負けるわけにはいかないんだ」

悠斗は黙って颯太の横顔を見つめた。

「大丈夫、キミのことは恨んでいないよ。空気を読んだだけだろ?わかっているよ。僕だってそうだ。誰かがこの役にならないと、誰かが忖度しないと別の誰かがさ・・」

それなら自分が代わりにと言えない自分が悠斗はもどかしかった。

「けど、このいじめは僕が死ぬまで終わらないだろうね、そういう結末なんだと思う・・そろそろ空気を読まないといけないかもね・・」

壮太は悲しい顔を一瞬見せた。

「悠斗、ありがとう、こんな状態になっても、こうして友達として接してくれるのはキミだけだったよ・・さぁ、そろそろ帰ろう、こんなところ誰かに見られたら大変だからね」

その翌日、颯太は亡くなった。

颯太の母親から、颯太が書いた手紙を渡された。

そこには、遺書がしたためられていた。
自分をいじめていた人間のことが綴られることはなく
僕への気持ちだけが綴られ、「守り切れなくてごめん」と最後に。

告別式の日、、

悠斗は祖父の古い猟銃を携え告別式に向かう。
重く、冷たい鉄の感触。

颯太の遺志を忖度するなら、どうすべきか。
颯太の死を悼むべきか、それとも、、

告別式に参加している級友たちは、誰も颯太を見ていない。
誰もがその場の空気を読み、悲しみを演じているだけだ。

銃声が響いた。
体育館の屋根に空いた穴から、夏の光が差し込む。

「エチュード」
作詞.✋

この事件に、
誰も主犯はいなかった…
誰もがただ
空気を読んだだけ…

笑い声が教室を満たす
示し合わせたわけじゃない
誰もがみんな知っていた
求められてる役
演じただけ

忖度が、歯車を回す
小さな悪意が積もってく

主犯なんていなかった
みんなで作ったクラス劇
役に没頭、抜けられなくなった

クランクアップは聞こえない

空気を読んで
忖度して
全員が闇の中
手を繋いだ

首に縄の痕
胸に烙印が焼ける

キミが主役に選ばれた…

夕暮れの屋上
大切なシーン

「キミのために死ねない」

悲しい笑顔、一瞬の光
でもこの連鎖は、終わらない

主犯なんていなかった
みんなで作ったクラス劇
役に没頭、抜けられなくなった

クランクアップは聞こえない

空気を読んで
忖度して
全員が闇の中
手を繋いだ

首に縄の痕
胸に烙印が焼ける

キミが主役に選ばれた…

誰が主犯?
誰も名指ししなかった

見渡せば
みんな同じドラマの共演者
一つの作品作りに没頭してた

烙印は、消えない

主犯なんていなかった…
空気を読んで、忖度して…
ただ熱心に演じただけ

次はキミ…
かわりばんこに
演じましょう?

誰も主犯はいなかった…

誰もがただ…
空気を読んだだけ…

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