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巣立ちの朝

とうとう長男が我が家から巣立つ日がやってきました。
出産直後の転勤〜小学校入学直前の帰任、私の両親の介護、仕事と育児でバタバタな家庭で育った長男。
必死に子育てしていたら、いつの間にか私が見上げる様な立派な社会人に成長していました。


⬛️子育て真っ只中の時に目に飛び込んできた漫画

息子達がまだ小さい頃、Twitterでこんな投稿を見つけ、涙があふれて止まりませんでした。

「私も、いつかはこんな日を迎えるのか…寂しさに耐えられるだろうか…」なんて思いながら何度も読み返しました。

心を打たれたまま、しばらく動けずに。

「このお母さんのように、しっかりと送り出してあげないとダメだよね…」と、未来の自分に喝を入れたのを覚えています。


◾️最後の大学生を満喫

無事に第一希望の会社に内定をいただき、入社式までは最後の大学生活をとことん遊ぶつもりなのか、真面目君だった黒髪ヘアスタイルはゆるふわパーマ金髪ハイライトに大変身。
びっくりしちゃったけど、似合っててカッコよかったよ。

昼夜逆転で夜中に帰宅する毎日。
最後の青春を謳歌していたね。
「自律神経おかしくなるから夜寝て昼活動しなさい!!」と100万回言ったけど…直らなかったけどね…


◾️急な風が吹く

入社式も終え、ピッカピカの新社会人として長男は慣れない毎日を過ごしていました。

昼夜逆転の日々が嘘のように、朝早く起きスーツを着て、ビシッとした格好で「行ってきます」と家を出ていく。
そんな日々が数ヶ月続き、我が家のルーティンになっていました。

私は「まだしばらくは実家にいるだろう。最初はお給料も高くないしボーナスも少ないし、家を出るのは1年後くらいかな?」とぼんやり思っていました。

しかし突然、長男が夜中にガサゴソ何かを始め、「家を出ていく準備として、モノを整理するわ」と言い出したのです。

小学校卒業の記念品、中学時代の教材や部活の道具、高校の制服、大学受験で使ったテキストの山…
机や棚の中から出るわ出るわ。「5.5帖の部屋にこんなに入ってたの?!」と驚くばかり。

容赦なく45リットルのゴミ袋にガンガン詰め込み、20袋分位は捨てたかな…
でも、亡くなった私の父からもらった古い腕時計は捨てなかったね。壊れてるのに、捨てられなかったんだね。

生前、私の父が付けていた時計

じいじが空から「おお、捨てないでくれたのか」と、見ていて喜んでたと思うよ。臭いタバコを吸いながら。

そして部屋が段々空っぽになっていくのを、私は複雑な気持ちで見守っていました。

今思えば、この時に「風が吹いた」のだと思います。
前に進むための背中を押すような風が、私の気持ちなど関係なく2人を強く押し始めました。


◾️物件探しが始まる

常々、私は昔から子供達に「あなた達が自立する時はママが最高の部屋を探すからね!知らない不動産屋さんに飛び込まないでよ!」と言っておりました。

私は新卒から畑は違えども不動産業界に長く身を置いています。
妊娠・出産・転勤で一度離れましたが、再就職は迷いなく不動産業1本で転職活動をしました。

運良く、すぐり不動産に拾っていただき、勤めて10年以上になります。
このスキルを子供達に活かしたいとずっと思っていました。

しかし、「まぁ、今の段階では相場の検討くらいかな」と希望エリアの物件をのんびり探していたのです。

普段と違うエリアをのんびり勉強していたが…

10件ほど紹介したところ、ある一つの物件がキラッと光りました。

これは長年不動産業に身を置いた私も唸る、とても条件の良い物件だったのです。

普段からXのTLで「考えるな買え」とうるさくポストしている私です。
売買でも賃貸でも、良い物件に出会えたら即行動。
物件との出会いはタイミングとご縁が9割です。逃してはなりません。

すぐさま一緒に内見、納得がいくまでとことん採寸。
内見1件目にして即申込を致しました。さすが不動産屋の息子です。

良いのです。
「もっと良い条件の物件に出会えるかも…」なんてフラフラしていたらこの物件は他に持って行かれてしまいます。即決に値する物件でした。

帰り道の途中、長男と2人でラーメンを食べました。
思い出に残る、きっと死ぬ前に走馬灯の一コマとして出てくる味となるでしょう。


◾️忘れられない賃貸借契約

無事に審査承認も頂き、とうとう私の職場で契約です。

よく考えたら職場でなくても契約できるのですが、こういった人生の節目は「ビシッ」とした方が良いと私は常々思っています。

しっかりとご契約のご案内を渡し、初期費用の振込もしてもらい、宅建士証を提示し、とうとう母と息子がカウンター越しに対面して契約となりました。

まさか、私が長男に重説する日がくるなんてね。
もちろん、長男からもらったピアスを付けて挑みました。
気付いてくれたかな。毎日大切に付けてるんだよ。

あれこれバタつきましたが、無事に契約終了。
「こんなにハンコ押すの??」って驚いていたね。
不動産業界、まだまだハンコ文化は根強いのよ。

書類をまとめ、あとは入居日前日に鍵を渡したら終了です。

そう、鍵を渡したら終了…
「彼の家」が「ここ」ではなくなる日です。


◾️そして独り立ちへ

巣立ちの朝。

新居の鍵を渡し、
この日から我が家は彼の「現住所」から
時々帰る「実家」になったのです。

シーズンオフのお布団を洗濯してしまう時も
「あ…3人分しかないのか…」とか
いつもの調子でカレーを作ろうとしても
「あ…ルー全部じゃなくて半分で良いのか…」とか
「あ…お米こんなに炊かなくても良いのか…」とか

結論
「あ…そもそも明日から長男のご飯作らなくて良いんだった…」

我が家から家族が1人減る事実を、事あるごとに叩きつけられます。

そして長男の部屋と同じように
私の心も「がらんどう」に。

でもね。
思い出すのは赤ちゃんの時からずっと見守っている寝顔。
不思議と大人になっても、母から見る寝顔は変わらないものです。

私が一緒に寝ないと泣いていた息子
私が背中をぽんぽんしないと眠らなかった息子
夜泣きが酷くて夜中に2人でドライブ行ったこと
夜泣きが酷くて午前2時に録画の「いないいないばあ」を観たこと
度重なる病気や怪我の時に全力で看病したこと

全てが蘇る。

息子は私に背を向け、前に進み出した。
私はその背中を見ている。

今、息子の部屋のカーテンは、静かに風に揺れている。



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赤すぐり❦ いつも遊んでくれてありがとう