ショートショート 「エクレア食べたい」 #アマノ文筆クラブ
神は天空から地獄を見ていた。
時刻は午後3時、その片手にはおやつのエクレア。
口に頬張ろうとした際、少し力みすぎて中のクリームが指先につく。
潔癖症な神は咄嗟に振り返りティッシュを取ろうと体を捻った。
あ”!
持病のギックリ腰が再発。
全身に駆け巡る電撃は指先に到達し、エクレアは稲妻の如く地獄に落ちていった…。
約10万km/秒で落下するエクレア。
うずくまる神。
地獄は逆三角形の形をしており、八層(上から等活、黒縄、衆合、叫喚、大叫喚、焦熱、大焦熱、阿鼻)からなっている。
一番深い阿鼻地獄まで距離にして約86.4万キロ(地球を約21周する距離に相当)。それを僅か8.64秒で到達したエクレア。
もっとも罪の重い者達がいる阿鼻地獄。
地獄はまさに地獄絵図となった。
焦げた硫黄の霧の中、罪人たちはエクレアを巡って血の池地獄から這い出し、舌を伸ばして追いかける。
「エクレア食べたい」
「エクレア食べたい」
「エクレア食べたい」
罪人達を取り締まる鬼達も一緒になって捕物合戦に。
「エクレア食べたい」
「エクレア食べたい」
「エクレア食べたい」
地獄の秩序はエクレアのカスタードクリームの魅惑よって一瞬でトロけてしまった。
神と地獄の汚点として記録には残せなかったが、
この話は『神もエクレアを落とす』と地獄での格言になった…とか、ならなかったとか。
神と地獄の亡者のみが真実を知っている…。
完
(本文575字)
あとがき
別件で地獄の事をネタで調べていたので、エクレアと聞いてビビッと繋がった。シャトレーゼのエクレアが好き。近々買って食べようと思う今日この頃。
