エンリコ・フェルミ博士から学ぶ、実験に対する姿勢
はじめに
お空の星は明るいあかり、そらのあかりだよ!今日はあまりに有名なフェルミ博士の名言にせまるぞ!
"There are two possible outcomes: if the result confirms the hypothesis, then you've made a measurement. If the result is contrary to the hypothesis, then you've made a discovery."
「実験には二つの結果がある。 もし結果が仮説を確認したなら、君は何かを計測したことになる。 もし結果が仮説に反していたら、君は何かを発見したことになる。」
・・・あっ、一つだけ確認しておくけど、仮説も立てずに実験したりはしてないよね?(にっこり)
この言葉からわかる通り、そもそも仮説を立てていなければ計測も発見もできないからね!
さて、本題!
フェルミ博士が作った世界で初めての原子炉「シカゴパイルワン」
フェルミ博士といえば、理論物理でも実験物理でも大きな成果をおさめた、研究者の鑑のような人物である。「フェルミ〜」と彼の名を冠する科学用語は極めてたくさんある。
そんなフェルミ博士。実は1942年12月2日にシカゴ大学の小さな地下体育館で人工の原子炉を世界で初めて作った人物なんだ。

・・・お、「人工」でない原子炉があるのかって?あるんだな、これが。しかしそれはまたの講釈。天然原子炉も1つの記事を構成できるくらい面白い。楽しみにしてて。
本題に戻ろう。
臨界反応とは・・・
中性子は放っておくとどんどん以下のような反応が起きて数が減っていく。
他の原子核へ吸収される(中性子捕獲反応、直接過程など核反応を伴う)
中性子は単体では不安定な原子核。半減期15分でベータ崩壊して陽子(水素の原子核)に壊変する
一方でウランなどの重元素は1つ中性子を吸収すると、2つ以上の原子核に核分裂し、その過程で2個以上の中性子を放出する。つまり、反応1回で消費する中性子より、多くの中性子を生み出すことができる。
ただ、何も考えないただ単にそこにウランをおいているだけの環境では、上に示した中性子が減っていく反応の方が圧倒的に優勢で、中性子はどんどん減っていき、やがて反応は収束する。
ここで中性子が減らない工夫やもっと増やすような工夫を考える。
中性子発生部分の表面積を小さくする(ウランを球状に配置する)ことで、中性子の漏れを減らす
中性子のエネルギーを散乱反応で減らしてウランと反応しやすくする(減速材)。(散乱反応では中性子は減らない)
減速材やその他炉心構成材料に中性子を吸収しやすい不純物が少ないものを選択する(たとえばホウ素はよく不純物としてまざるが、極めて中性子をよく吸収する特性がある)
こうすることで「減っていく中性子」と「新たに生まれる中性子」がちょうど釣り合うようになると、核分裂で生成した中性子が次の新たな核分裂を引き起こす連鎖反応が新たに中性子を打ち込まなくても持続する。
この状態を「臨界(critical)」と呼ぶよ。
原子力発電所の炉心も、この臨界状態を人の手で安定的に保つ仕組みなんだ。
世界初の人工原子炉はこうやって作られた
今は実験データが豊富にあるため、ウランと黒鉛をどう配置すれば臨界に達するか極めて正確に予測できるわけだけど、当時はウランがどれくらいの確率で核分裂するか、まだ高精度な実験データがない時代。しかも、今でこそ原子核のデータはあらゆる分野に先駆けてオープンサイエンスのスタンスをとって、誰もが閲覧できる形で公開されているけど、当時は軍事研究にもなりうるため、測定値を秘匿することも多かった。
想定外の現象で、いきなり臨界に達してしまわないように、中性子を極めてよく吸収するカドミウムでできた棒を配置して、その周りにウランを球状になるようにホウ素を不純物としてほとんど含まない黒鉛で囲みながら配置していった。
ただ、ウランを積み上げている途中で臨界に達してしまう可能性だってある。なので、中性子検出器($${BF_3}$$比例計数管)を用意しておき、指数関数的に中性子が増えていかないことを確認して、「よし、まだ臨界に達していない」として、積み上げていった。
ただし、あとで述べるがフェルミ博士はこの時点では臨界に達さないという仮説を持っていた。
このほんのちょっと前までは空気の核反応の確率もわかっていなかったので、一度地球上のどこかで臨界反応が起こったら全ての元素が核反応を起こしてしまって、地球が滅びるかもしれないという懸念すら現実的な脅威だった。
確かに測定データが存在しない限り、そのようなことがおきないとは言えなかっただろう。
しかし、フェルミ博士はこの実験の時にはすでに空気のような軽い元素は原子核反応を起こしにくく、仮に起こしても中性子は放出しにくいため臨界が無限に地球全体に広がることはない、としっていたはずだ。
さて、35トン相当(約6トンの金属ウランと約50トンのウラン酸化物)ものウランは全部積み上げても臨界に達することはなかった。カドミウムの棒が強力に中性子を吸収してくれていたおかげである。
このカドミウムの棒は、抜き差しで臨界度を調整する・・・現在でも用いられている制御棒として働く。ここからは、少しずつ制御棒を引き抜いていって、中性子の吸収を減らしていき、核反応がどんどん起こるようにしていくわけ。
制御棒はなんと、手で引き抜かれていったんだ。
現代なら絶対にリモート操作だよね・・・。フェルミ博士もそのすぐ横にいたという恐るべき状態。
その時、フェルミ博士は静かに言った。

「その制御棒を、あと47ミリ引き抜けば臨界に達する」
実際にその通り、47ミリ引いた瞬間に検出される中性子の数が指数関数的に増えた──シカゴパイルワンは臨界に達したのだ。
まさに仮説が実験がピタリと重なった瞬間だった。
しかし・・・だれかチェレンコフ光を見たんじゃ…(汗)。
高エネルギーの粒子が眼の中を通ると、青白い光が見えることがあるんだ。
ただ、当時の参加者の記録にはそんな報告は残っていないみたい。
いずれにせよ・・・今なら怖くてできないよ、こんな実験・・・誰も死ななくて本当に良かったとしか言いようがない。
少し話を戻そう。
臨界に達する直前の彼のセリフを思い出して欲しい。
「あと47ミリ」である。
現在でこそ原子炉物理は確立した理論があるわけだけど、フェルミ博士はその基礎ともなっている中性子拡散方程式を世界で初めて独自に立て、実測データから必要なウランの量や制御棒の条件などを計算しており、実は積み上げている途中に臨界には達さず、制御棒をここまで抜けば臨界に達するという「1ミリも狂っていない仮説」を立てていたのだ!
予想通りの結果になったとき、科学者はどんな気持ちになると思う?
主に二つのパターンがある。
「予想通りでつまらない(新たな発見はなかった)」
「計画通り(ニヤリ)」
この時のフェルミ博士はどっちだったんだろうな〜?
さて・・・この後、原子炉を科学技術として確立するために、シカゴ・パイル1(CP-1)から始まった一連の実験は、翌年には改良型のシカゴ・パイル2、3とどんどんアップデートされていき、冷却材や遮蔽構造、安全系統などについて研究が進められていった。
つまり、現在わたし達のエネルギー源として活躍している商用の原子炉は、全てこのシカゴ・パイル・ワンからつながってきた技術だということ。
もちろんその研究成果は平和利用だけでなく、マンハッタン計画における核兵器開発でも重要な位置をしめていた。原子力はいつでも使い方をあやまるととんでもないことになるということもまた、わたしたちは忘れてはいけない。
参考:シカゴ大学のウェブサイトには、英語だけど詳しい情報が掲載されているよ!(トップページにでてくるフェルミと、制御棒を手で抜いている青年の動画は超貴重!まさに「あと47 mm」と言われたのはこの時なのかもしれないよね!)
実験には二つの結果がある。 もし結果が仮説を確認したなら、君は何かを計測したことになる。 もし結果が仮説に反していたら、君は何かを発見したことになる
この言葉を、あのフェルミ博士が「47ミリ先」を正確に読み切った人だと思いながら、もう一度読んでみよう。
彼は周到な仮説を毎回立てていたはずだ。それは世界で初めての人工的な臨界実験でも、1 mmの狂いもなく予測できるほどのものだったことからも明らかだ。
ここまでよく考えられた実験だからこそ、仮説に反していたなら「発見」だと初めて言えるってわけ。
冒頭で「仮説も立てずに実験したりしてないよね?」って言ったけど、「フェルミ博士ほどじっくりと仮説を立てて実験をしているか?」と言われるとわたしも「はい!」と即答はできないかもしれない。
わたしくらいだと仮説に反した結果が出た実験にはまだ「仮説に抜けがある」ことが否定できないからだ。
実験結果が得られて、即座に「大発見だ!」と自信を持ってフェルミ博士は声をあげた経験がきっとあるのだろう。
でなければこの名言はでてこないはずだから。
わたしたちも、フェルミ博士を見習ってじっくりと検討して仮説をうちたて、結果が得られたら即座に「大発見だ!」と言えるような実験が計画できるようにつとめたいね!!
まとめ
どうだった?
最初にフェルミ博士の名言を読んだ時と、この記事を読み終わってからもう一度復唱した時で、言葉の重みが変わっていたらうれしいな。
かわったよ!という方はぜひコメント欄で教えてね!
今日からまた北海道へ出張〜。飛行機で寝るために早起きして記事を書いてみた♪ 推敲は・・・ごめん、今日はあまりしてない。空港でやるかも。
(公開した後推敲するやつ・・・)
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えっと…おやつも買っていい?🍪