「国宝」の原作を読んでからその原点となった作品を観る「残菊物語」
2代目尾上菊之助の悲恋を元にした村松梢風の同名小説を『雨月物語』の溝口健二監督が1939年に映画化した溝口健二監督の代表作のひとつです。
「国宝」の原作を読んだらその解説でこの作品が「国宝」の原点になったとあったので観てみました。

物語は
5代目尾上菊五郎の養子として育った菊之助は、自分の芸の未熟さを率直に指摘してくれる弟の乳母のお徳に心を開いてゆく。ところが、ふたりの身分違いの恋は周囲に猛反対され、菊之助は大阪の大御所のところへ身をよせる。一年後、お徳も後を追ってやってきて二人は一緒に暮らすが、大阪の大御所が亡くなると大阪の劇場を追われてしまう。それから4年、旅役者の一座になってドサ周り続けるが座長が夜逃げしてしまい…
2時間22分と結構な長尺ですが間違いなく傑作
展開のいくつかは確かに「国宝」に影響を与えているのが明らかでした。
主人公は歌舞伎の家に養子に迎えられ、その家の七光りでチヤホヤされているけど、陰では芝居がイマイチで言われていて、そういうかりそめの人気に嫌気がさしていたところにお徳という弟の乳母が彼の相談相手になってくれたのに心惹かれて、そのことが親の怒りを買って、彼は家を出て関西の歌舞伎界の大御所のところに身を寄せます。そこでも評判はイマイチで劇場主は隙あらば役から外したいと思っているときに大御所が亡くなり、劇場からは役がなくなったからと旅芝居の一座に身を寄せることに。そこから4年ドサ周りの生活にすっかりすさんでいった主人公が、旅芝居の一座の座長の夜逃げで行き場を失くし、その土地に巡業に来ていた歌舞伎役者を見つけて、出演させてくれないかとお徳が段取りし、その一座で「積恋雪関扉」に出演し、彼はしっかり成長していたことを示し、東京の歌舞伎界へ返り咲きます。
彼の成功の裏でお徳は姿を消して、関西へ。関西の巡業で二人は再会するもお徳は結核で亡くなり…
という悲恋の物語です。
実話を元に映画化
この作品は2代目尾上菊之助の実話を元にしているそうで、「国宝」にその血を引く寺島しのぶが出演していたりすることや、主人公の名前が喜久雄だったりするのは菊之助から来ているのかもと思えました。
関西の大御所が亡くなり居場所を失くす主人公の姿は半二郎が死んで居場所を失く喜久雄に重なります。
演目にも「国宝」とのつながりが
菊之助が復活する演目が「積恋雪関扉」なのもそのあと連獅子するのも「国宝」の喜久雄の前半に繋がります。
陰で菊之助を支えるお徳の姿は春江やそのほかの喜久雄にかかわる女たちに投影されている気がしますが、やぱpり、こっちがあまりに傑作なので「国宝」のダイジェストな感じはかなり印象が残念です。
「国宝」はイマイチでしたがこの傑作に出会うきっかけになったことを思えば観て良かったと思えます。
「国宝」4回目
原作を読んだので「国宝」の4回目を観ました。
これまでは観るたびにイライラしていましたが、今回はわりと冷静に観られました。
徳次絡みのエピソードが軒並みカットされていて、それに絡む藤駒の娘綾乃の青春から成人してからのエピソードがなくなり、原作にない最後の再登場があります。
原作を読んでからだと前にイライラした場面もだいたい原作通りでイライラより、同じやんというリアクションになりました。
それでもクローズアップの多用や過剰なBGMと編集、気持ちを説明しがちなセリフが目立ち、ダサいなあという気分はかわりません。
でもこの臭さこそがヒットの要因なんだろうなあと実感。
