1100マイルへの挑戦者・女傑キャサリン・レッグ【INDY 500】【NASCAR】🇺🇸
毎年5月の最終月曜は米国にとってメモリアル・デー(戦没将兵追悼記念日)に当たる特別な日。
インディ500はこの特別な日前後にに行われるからこそ、シリーズ中いや、全米のモータースポーツシーン中で特別な存在として扱われることも多いのです。
一方NASCARでもこの日は特別な日として本拠地シャーロットにおいてコカコーラ600が行われます。
その名の通り600マイルを走破するロングディスタンスのレースはシリーズ中、シャーロットで行われるこのコカコーラ600だけです。
そしてこの両方のレースにチャレンジする(Double Duty)と言う恐ろしくもロマン溢れる蛮勇いや、英傑が存在するのです。
インディアナポリス〜シャーロット。
直線距離は、片道約430マイル(約690km)

この距離を移動するだけではなく
インディ500を昼間に走り、コカコーラ600を夜に走る。
マシンも飛行機のような空力バリバリのインディカーと重戦車のようなNASCARカップカー。

このチャンレンジを完走できたのは今まで、トニースチュワート一人のみ。
2026年現役のカイルラーソンも24年、25年にチャレンジしていますが、完走はできていません。
そんな過酷なチャレンジを行う猛者が今年一人の女性が立ち向かいます。
イギリス出身のキャサリンレッグ
彼女はこれまでIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権(GTDクラス)での優勝経験や、ル・マン24時間、デイトナ24時間レースなどの耐久レースでの豊富な実績を持っています。異分野への適応力と高い耐久性が求められる今回の挑戦は、今年のモータースポーツにおける大きなハイライトでしょう。
全米を横断する極限の挑戦。「ダブル」の過酷な全スケジュール
インディ500とコカ・コーラ600、同日に開催される2つのビッグレースを股にかける「Double Duty」。彼女のこの途方もない挑戦がどれほど過酷なのか。インディ500の予選を起点として、その全貌を時系列で追ってみましょう。
嵐の前の大移動(金曜日〜土曜日)
すでにインディ500の予選(10マイル)を走り切り、決勝グリッドを27位で確定させている彼女ですが、レースウィークの週末に休息の暇はありません。
金曜夜: インディアナポリスでインディの最終プラクティス(カーブデイ)を終えた後、NASCARの予選に出走するためにシャーロットへ飛びます(フライト①)。
土曜夜: シャーロットでのNASCARの練習走行と予選を終えると、日曜昼のインディ500本番に備えて、再びインディアナポリスへとんぼ返りします(フライト②)。
この週末だけで、インディアナポリスとシャーロット(直線距離で片道約430マイル)を2往復。コース上でも、両カテゴリーの練習走行や予選を合わせ、最低でも300〜400マイルを走り込んでいます。
決戦の日曜日:第1幕「インディ500」
そして迎える日曜日。分刻みのスケジュールが幕を開けます。
12:45頃: インディ500がスタート。限界のスピードで500マイル(200周)を戦い抜きます。
15:30〜16:00頃: インディ500フィニッシュ。チェッカーを受けた直後、休む間もなくピットからゴルフカート等で大急ぎで移動を開始します。
息を呑む「最後のダッシュ」(空の移動と回復)
ここからは、次のサーキットへ向けたタイムアタックです。
16:00過ぎ: サーキット内または近隣から待機中のヘリコプター(または警察先導車)に乗り込み、周辺の小規模な空港(航空管制の許可が早く下りる場所)へ向かいます。
16:30頃: 待機していたプライベートジェットに乗り換え、シャーロットに向けて離陸(フライト③)。
【機内での「回復」】 約55分〜1時間のこのフライトが、ドライバーにとって唯一の休息時間です。医師のチェックを受けながら、失われた水分を補うために2リットル前後の点滴(IV)を受け、同時にNASCAR用のレーシングスーツへの着替えも済ませます。
17:30頃: シャーロットのコンコード・リージョナル空港に着陸。
17:40頃: 空港で再びヘリコプターに乗り換えます。
17:50頃: シャーロット・モーター・スピードウェイのインフィールド(コース内側)に直接着陸。ファンに手を振りながら、一直線にNASCARマシンへと向かいます。
限界のその先へ:第2幕「コカ・コーラ600」
18:00〜18:20頃: コカ・コーラ600がスタート。NASCAR最長の600マイル(400周)の過酷な夜が始まります。
これほど急いで移動しても、レース直前に行われるNASCARの「ドライバーズ・ミーティング」には間に合いません。そのため、規則により予選でどれだけ良いタイムを出していても「最後尾スタート」となるペナルティを受けるのが、このダブルにおける恒例となっています。
総計:全米横断レベルの疲労度
数字をまとめると、その狂気的なスケールが浮き彫りになります。
コース上での総走行距離: 約1,450マイル(約2,330km)
航空機での移動距離(3フライト): 約1,290マイル(約2,076km)
【合計】約2,740マイル(約4,400km)
わずか1週間強の間にこれだけの距離を移動し続ける計算になります。これは、北米大陸の東海岸から西海岸まで(ニューヨーク〜ロサンゼルス間が約2,400マイル)を自力で走破し、さらに少しお釣りがくるほどの距離です。
数字だけを見てもとんでもないチャレンジだと言うことがわかります。実際は、ここに出した数字以上に肉体的・精神的な負荷が彼女にのしかかるのでしょう。
兎にも角にも、無事にこの極限のチャレンジを完遂してほしいですよね。
