リーガルテック初の上場。~GVA TECH IPOプロジェクトの軌跡 ~
2024年12月26日、GVA TECHは東証グロース市場に上場しました。
AIリーガルテックで初の上場であったことや、申請期赤字での上場、承認ギリギリまでのコーポレートアクションなど、当社のIPOはそれはもう論点が多く、非常に手のかかるIPOだったと思います。実際に証券会社の担当者からも「これは初めてのケースです」と何度も言われましたし、極めて困難が多く泥臭く突き進んだ上場でした。
上場後、何人かの上場準備を進められている・検討をしている方々から上場準備に関わる質問を受けることがありましたので、せっかくなら同じような境遇の方々に何か参考になればと思い、noteにまとめることと致しました。
小型のIPOで、決してキラキラしたエピソードはありませんが、困難な上場にチャレンジするという文脈で何かしらの共通項になる部分はあるかと思います。複数回にわたると思いますが、ご一読頂けますと幸いです。
なお、各会社の状況、証券会社・監査法人・東証、そしてそれぞれの担当者のスタイルなどにより左右される部分が本当に多いため、ここに書いた内容はあくまでも1事例として捉えていただくのが良いと思います。
はじめに
まず本題に入る前に、当社のご紹介をさせていただきます。
GVA TECHは、企業法務のデジタル化を推進するリーガルテック企業です。
「OLGA」という契約書や法務案件の管理、契約書のチェックといった業務を、AIを活用して効率化するSaaSサービスや、国内で年間約150万件ある法人登記の申請業務をカンタンにする「GVA法人登記」を運営しております。
2017年1月に代表の山本が創業し、多くのステークホルダーの方々に支えられて、2024年12月に東証グロース市場に上場しました。
上場準備業務にあたり、過去の契約書や案件の質問や書類提出も多く、自社内でも使っている「OLGA」は非常に活躍いたしましたので、もし上場準備を進められる方は、ぜひ一度ご検討いただけると幸いです。
また、簡単に私のご経歴とGVA TECHに参画した経緯もご紹介いたします。
新卒は東証プライム上場のSierの会社で経営企画を約4年、法務を約3年経験しました。そこから当時マザーズ市場に上場したばかりのアプリのベンチャー企業に転職し、1人法務をやりながら、並行して当時のCFOとともに経営企画と一部IRを担当。その過程で、東証プライム市場への市場変更PJも経験しております。
その後当時の創業者と数名のメンバーで、BREWというスタートアップへの支援や投資を行う会社を立ち上げ、投資担当として活動していたのですが、初めて出資させていただいたのが、今のGVA TECHでした。
元々、企業の法務部門を数年間経験していたがゆえに、各企業におけるリーガルの重要性とポテンシャル、その強い課題感を持っていたことと、GVA TECHのポテンシャルが非常にクロスして、GVA TECHを支援したいと思ったことがきっかけでした。
そこからGVA TECHの資金調達などを支援させてもらいながら、2021年9月により深く関わりたいと考え、当初は出向という形で、コーポレート全体の責任者として参画したのが始まりです。
(代表の山本と出会って出資を決めたタイミングでは、月次売上数百万円だったので、非常に感慨深いものがあります。)
2021年9月に参画してから、主幹事証券や監査法人を探し始め、2022年12月期からN-2期として上場準備を開始することになります。また、参画当時の管理部門は、社歴の長いメンバー1人ですべてを回されている状態で、その体制構築から私のGVA TECHでの仕事はスタートすることになります。
それでは、本題に入ります。
上場までの流れ

2021年9月:上場準備開始
上場準備に向けた管理部門の体制構築から開始しました。参画当時は前述のとおり、管理部門は1名で、月次締めも外注している部分が多かったため、まずは経理体制を整えることから始めました。
運よく、年内に監査法人出身の管理部長を迎え入れることができ、私が全体管轄をしながら、経営企画や資金調達・IRの役割を担い、管理部長と担当者とで経理・労務・総務を担う3名の体制で、管理部門の業務と上場準備業務を進めることになります。
まずは、監査法人と主幹事証券を探すところからで、そこに向けて、収益認識基準への移行、ソフトウェア資産の整理、事業計画の精度向上あたりから着手いたしました。
管理部長は監査法人で上場準備企業の支援経験もあり土地勘があったためかなりサクサクと進めて頂けました。また担当メンバーも、経理・労務・総務とかなり広い範囲で業務をカバーしてくれて非常に心強かったです。
2022年(N-2期):監査法人と主幹事証券の選定とIPO準備着手
まずは監査法人を探すところからでした。事業自体は興味を持っていただける監査法人は多かったのですが、売上規模が前期で約3億円程度で、大手などは規模的に引き受けてもらえませんでした。また、当社が12月決算なのですが、決算対応期をずらすために決算期の変更を求められることも多く、この点は、上場を目指されるのであれば、3月決算、12月決算は避けるなどはテクニカルに考えて良いかと思います。
ご紹介中心にトータル10社ほどアプローチし、2月に現在のみおぎ監査法人に引き受けて頂くことが決定しました。
次に、主幹事証券の選定です。大手証券会社には一通りアプローチし、最終的にみずほ証券に決定させて頂きました。選定理由としては、当社の事業理解と当社をしっかりと推していきたいという気持ちが非常に伝わってきたためです。
改めて感じることは、主幹事選定時のバリュエーションは本当に水物で、実際の上場までの2~3年で外部環境がごろっと変わってしまいます。それよりも、この長期間のプロジェクトを共にしていくチームとして、しっかり信頼できるかという点に重きを置いて選定するのが、良いと思います。
夏ごろに主幹事選定が完了し、IPOに向けてのロードマップが引かれ、2024年12月上場で進めることが決定しました。結果的には、このロードマップ通りに進むことになります。
ショートレビューで抽出された課題に対して対応しはじめるフェーズに入ります。規程の制定など基本的な準備はおおむねN-2期中には完了し、非常に順調な進捗でした。
2023年(N-1期):決算体制の再構築と証券審査への準備
この時期に取り組んだことは、監査役2名による監査役協議会の設置、任意の報酬委員会の設置、四半期決算のトライアル、Ⅰの部・各種説明資料のドラフト作成、J-SOX対応、内部監査の開始が大きいタスクでした。ボリュームの大きい課題が多いため、できるだけ手前手前で準備して対応を進めることをお勧めします。
この頃は証券会社の公開引受チームと月1で定例MTGを行い、業績と課題対応への進捗を共有し進めておりました。
この時期に大変だったことは、まず1Qで、管理部長と担当者が揃って退職することになったことでした。1から管理部門の立て直しが必要になり、早急に改めて管理部長の採用を進めることになります。1歩間違えれば、上場延期もありえたと思います。
また、この頃同時並行でエクイティでの資金調達も行っていたため、リソースという面で非常に厳しい時期でした。今思うのは、上場準備時期においては、管理部門のリソースは多少余剰があるくらいの方が、致命的な状態を回避できますし、様々なコーポレートアクションも積極的に取りやすくなるため良いように思います。
後半になってくると、証券会社の引受審査に入るための準備が少しずつ始まります。特に引受審査に入る前に、東証事前相談としてクリアしておく論点がいくつかあり、そのうちの一つの「サービスの適法性」については、代表の山本を中心にかなり時間をかけて対応していました。具体的な話は後述しますが、この点についても、何かのピースがズレていれば、上場延期もありえたと思います。
2024年(N期):上場申請と怒涛のコーポレート対応

いよいよ申請期に入ります。それはもう怒涛の1年間で、もう一度やれと言われても絶対にやりたくありませんw
申請期はかなりボリュームも多いので、できるだけ簡潔にいきます。
2~3月:東証事前相談
相談事項としては、①赤字上場、②プロダクトの適法性、③代表の他社代表との兼任。②が重たく、1回では終わらず、追加対応も含めると、東証申請直前までかかりました。
4~8月:証券会社による引受審査
1回あたり、数十問~100問程度の質問があり、3週間くらいで最終回答提出をし、その翌週くらいにその回答に沿ったヒアリングがあります。だいたい1回4~5時間のヒアリングでした。
4月:キックオフ
5月:引受審査第1回ヒアリング
6月:引受審査第2回&第3回ヒアリング
7月:引受審査第4回ヒアリング
8月:第1~4回のヒアリングの宿題事項や継続質問、東証申請に向けた準備、監査法人・社外役員面談など。
この時期、並行して、増資や従業員向けSOの発行も行いました。
9~11月:東証審査~上場承認
9月:上場申請
東証に訪問して必要な書類を提出するとともに、成長可能性資料のドラフトに基づいて事業内容の説明を行います。
10月:東証審査第1回~第3回ヒアリング、オファリングストラクチャーの決定
ヒアリングは基本的には東証に訪問して対応します。
証券会社の審査よりも、タイトで質問事項が提示されてから1週間で回答の提出、その数日後にヒアリング。すべてのヒアリングが1か月内で完了しました。当社の場合、コーポレートアクションもいくつかあったため、証券審査には無かった質問も多く苦労しました。
余談ですが、東証の担当者も若い方だったのですが、このタイトな期間で回答を確認し、ちゃんと事業を理解されている質問をされていて感心しました。一度どうやってこの短時間で確認されているのですかと聞いたところ、「なんとか(気合で)頑張ってます」と苦笑いで応えられてましたw
後半からは、証券会社とオファリングストラクチャーと価格算定ロジックの最終詰めです。この算定ロジックをもとに、Compsとなる各社の株価推移に基づき、想定価格を確定していきます。その価格の確定前に、売出しやロックアップレターの交渉を株主の方々としていく必要があるので、詳細は今回は割愛しますが、なかなか難しいコミュニケーションにはなりました。
11月:開示書類とロードショー準備、株主とのコミュニケーション
10月でおおむね東証のヒアリングは完了し、この時期は「監査役・独立役員・社長面談」と「社長説明会」がイベントとしてはあり、また、継続質問の回答、業績の月次進捗の共有、当期の業績見込み、成長可能性資料のチェック、その他数多くの上場関連書類の作成・提出などが中心です。基本的には、この段階では概ね審査はパスしている状況ですが、それでも上場承認日までは気が休まりません。
また、Ⅰの部・有価証券届出書、目論見書、成長可能資料、ロードショーマテリアルのピークを迎えます。当社の場合、コーポレートアクションもギリギリまで行っており、種類株式のダウンラウンド調整、10月末のSO発行(社外協力者向け)とサービス名の全面変更など、開示書類の更新もぎりぎりまで非常に多く発生しました。(東証、監査法人、証券会社、印刷会社、関東財務局など、複数の関係者から、複数のバージョンに対してチェックコメントが頻繁に入り、そのアレンジだけで、正直倒れそうでした。。)
また、ロードショーマテリアルは、開示書類ではないため、ロードショー時までに開示されている内容、具体的には有価証券届出書とホームページなどで公開されている内容などに限り記載できます。ゆえにこの内容を書くなら届出書の更新も必要等の調整が必要でした。この頃証券会社の方々とは頻繁にコミュニケーションを取り、企業公開部、公開引受部、ECM部の方々には夜遅くまでお付き合いいただきました(基本オンラインでしたが、夜20時に一斉の消灯になるようで、オンラインMTG中に一斉に皆さんがブラックアウトするので大変そうでしたw)
並行して、この期間に手間がかかったのは、上場に向けた既存株主とのやり取りです。当社は80名程度の株主がいたのですが、その全員に証券口座を期日までに開設していただくことと、そのほとんどの方々から制度ロックアップ・任意ロックアップの書面を現物入手する必要があり、これも期日を1日でも遅らせるとアウトなので非常に大変でした。口座開設は、証券会社のプライベートバンカーのチームにご対応いただくのですが、基本1~2名のところ4~5名の方についていただき、前代未聞の多さだったようです。(株主の皆様は非常に協力的でしたが、もし連絡がつきにくい株主や海外の株主がいる会社はどうしても時間がかかってしまいますのでご注意ください)
なんやかんやありまして、11/21当日午前中に、無事に上場承認の連絡が担当者より電話が入ります。上場承認や、上場日までに開示のタイミングが何度かありますが、それぞれでEDINET開示と東証での投げ込みといった対応があり、時間指定でスケジュールされます。この辺りも緊張感のあるイベントでした。
11-12月:ファイナンスに向けた対応と上場日までの準備
上場承認後は、公開価格を決めるためのプロセスに入っていきます。大きなイベントとしては株価の仮条件を決めるためのロードショーです。当社の場合、すべてオンラインで行いましたが、様々な投資家の方々とお話しできました。資本市場でGVA TECHがどう見られてどう評価されるのか、新しい視点も頂け非常に有意義な機会でした。
ロードショー後のアンケート回収→仮条件レンジの確定→ブックビルディング→公開価格決定。価格やブックビルディングの状況によっては、最悪PJがストップする可能性もあったのですが、このあたりで自社でやれることはほとんど無く、証券会社の方々にご尽力いただきました。
価格が決まれば、あとは上場日に向けて、セレモニーや当日の記者会見、StockVoiceの準備など粛々と取り進めていきます。
12月26日:無事に上場日を迎えます。朝一での上場セレモニーだったので、セレモニー会場で初値を確認できたのですが、その瞬間ようやく安心できました。
余談:上場承認から上場日までの間で、上場が中止になるケースも聞いていたため、あらゆるリスクを想定して備えました。そのうちの一つとして、代表の山本がよく「X」を利用しているため、その炎上リスク回避のために、私がアカウントを預かり、パスワードを変更して、厳重に管理するようにいたしました。上場日にようやくアカウントを返したのですが、それが何より嬉しそうでした。
上場準備と管理部門の体制
次に、上場準備と管理部門の体制について、簡単にご紹介します。
経営企画部と管理部の2部体制にしておりますが、最終的には以下の体制で、合計で10名のメンバーがいます。
一方で、体制整備には時間がかかってしまい、うち5名(★)が申請期に入社してもらったメンバーでした。

このうち、赤字の3名中心で上場準備を行っておりましたが、東証審査中の10月頃から上場日までは全員総力戦で、様々なイベントに対応して、なんとかやり切りました。
上場準備時の私と管理部管掌取締役の役割分担ですが、主にファイナンス周りは私が主導し、株主関係や数多くの手続き関係を管理部管掌取締役に主導してもらい、常に連携しながらお互いにフォロー・カバーしつつ、良い連携の中で進めてまいりました。
ちなみにこの管理部管掌取締役は、過去に3度IPO経験があり、GVA歴は浅いながらも非常に頼りがいがあり、彼がいなければ困難なIPOも成し遂げられなかったです。
主な論点
最後に、当社が上場するにあたり、論点になったものを以下に列挙いたします。予め指摘されていたものから、突発的なものも含めて、相当いろんなことがありました。
具体的な説明は今回は割愛しますが、最初の3点は、東証事前相談事項でもあり、次回のnoteで少しご紹介できればと思います。
赤字上場
プロダクトの適法性(弁護士法・司法書士法)
代表の兼任問題
ダウンラウンドIPOによる株主や新株予約権付融資への影響
信託SOの取扱い
セーフハーバールールを活用した1円SOの会計処理の論点
申請期での増資やSO発行
サービス名の直前の変更
株主数が多いことで生じる様々なハードル
大量の単元未満株
最後に
ここまでの長文・駄文をお読みくださり、ありがとうございます。
多くのハードルを乗り越えて上場までたどり着きましたが、上場実現に何が必要だったかと問われると、
「なぜ上場するのか。そしてなぜこのタイミングでするのか」という問いへの答えと、それを絶対に実現しようとする強い意志
これが最も重要だったと感じます。
準備段階から、証券審査、東証審査、ロードショーと常に問われましたし、自分の中でもそれを問うタイミングはありました。当社としては、リーガルテックという重要な情報資産をお客様から預かる事業を運営する上で社会的信用を高めることは最重要と考え、できるだけ早期に上場することが最も顧客価値の向上に資すると考えました。
これを常に考え続けてきましたし、絶対にこのタイミングという信念を持ってましたので、なんとか折れずに進めて来れたのだと思います。
いろんな意見があるとは思いますが、経営陣としては今後もこの道が正解として全力で突き進んでまいります。
上場はあくまでも当社の事業成長と「法とすべての活動の垣根をなくす」というパーパス実現のための一つのプロセスでしかなく、上場後のこれからの成長が最も重要です。
引き続き、応援のほどよろしくお願いいたします!
※もし、以下に当てはまる方々がいらっしゃいましたら、いつでもお時間作りますので、ぜひお知らせください!
当社の上場について、より詳しい話を聞いてみたい方
上場準備でのリーガルテックの活用方法に興味がある方
GVA TECHの仕事に興味がある方
