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契約書レビューに生成AIを使ってよいか|法務業務で任せる範囲と、人が判断する範囲の分け方

公開日:2026年8月9日/最終更新日:2026年8月9日/情報確認日:2026年8月9日
※本記事は執筆時点の公開情報をもとにした一般的な整理であり、法的助言ではありません。弁護士法をはじめとする法令の解釈・適用や、個別の契約の判断については、弁護士等の専門家へご確認ください。

結論:任せられるのは「探す・並べる・気づかせる」まで。決めるのは人です

契約書の確認に時間がかかる。担当者が一人しかいない。事業部から「急ぎで見てほしい」と言われる。こうした状況で、生成AIを使えないかという相談が出てきます。

一方で、法務の業務は判断を誤ったときの影響が大きく、慎重にならざるを得ません。「使ってよいのか」という問い自体が止まったまま、結局これまでどおり手作業を続けている組織もあります。

AIよろず室では、この判断を「使うか、使わないか」で決めないことをおすすめしています。契約書の業務を工程に分けると、任せやすい部分と、任せてはいけない部分がはっきり分かれます。

  • 探す(過去の類似契約、自社ひな形、条項の所在)

  • 並べる(版の差分、相手方案との対応、条項の突き合わせ)

  • 気づかせる(抜けている条項、期限、数値の不整合)

  • 決める(受け入れるか、どう修正するか、リスクを許容するか)

最初の3つは、人が確認できる形で支援を受けやすい工程です。最後の「決める」は、AIの出力が読みやすくても、人が責任を持って判断する部分として残します。

この記事で分かること

  • 契約書業務のうち、AIに任せやすい工程と、任せない工程の分け方

  • 弁護士法第72条との関係について、法務省が公表している整理の要点

  • そのまま使える「契約書業務のAI利用チェックシート」

先に確認する前提:弁護士法第72条との関係

社内で議論を始める前に、公的な整理を押さえておくと話が早くなります。

法務省大臣官房司法法制部は、令和5年8月に「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」を公表しています[1]。同資料では、弁護士法第72条で禁止される、いわゆる非弁行為に該当するか否かは、個別の事件における具体的な事実関係に基づき判断されるべきものであり、同条の解釈・適用は最終的には裁判所の判断に委ねられる、とされています[1]。

そのうえで、「その他一般の法律事件」に該当するには、訴訟事件等に準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するという、いわゆる「事件性」が必要と考えられ、これは契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等、諸般の事情を考慮して個別に判断されるべきものとされています[1]。

同資料では、次のような例示もされています[1]。

  • 取引当事者間で紛争が生じた後に、裁判外で紛争を解決して和解契約等を締結する場合には、「事件性」が認められ、「その他一般の法律事件」に該当し得る

  • 親子会社やグループ会社間で従前から慣行として行われている物品や資金等のフローを明確にする場合や、継続的取引の基本契約に基づき特段の紛争なく従前同様の物品を調達する契約を締結する場合には、「事件性」を認め難いことが通常であり、同条に違反しないと考えられる

  • 企業法務で取り扱われる契約関係事務のうち、通常の業務に伴う契約の締結に向けての通常の話合いや法的問題点の検討については、多くの場合「事件性」がないとの当局の指摘に留意しつつ、諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる

なお、この論点は現在も検討が続いています。内閣府の規制改革推進会議のワーキング・グループには、令和8年1月9日付で法務省大臣官房司法法制部から「弁護士法72条とAIリーガルテックサービス」と題する資料が提出されています[2]。

ここから言えるのは、契約の性質によって前提が変わるということです。同じ「契約書のレビュー」でも、紛争が起きた後の和解書と、従来どおりの取引基本契約に基づく発注書では、置かれた状況が異なります。自社の案件がどちらに近いかは、社内で分けておく価値があります。

具体的な案件が該当するかどうかの判断は、この記事では行えません。判断に迷う案件は、弁護士等の専門家へご確認ください。

契約書業務を、4つの工程に分ける

ここからはAIよろず室による実務整理です。公的な診断基準ではありません。自社の体制や取引の性質に合わせて調整してください。

1. 探す

過去の類似契約、自社のひな形、特定の条項がどの文書のどこにあるか。社内に蓄積された文書から必要なものを見つける工程です。

ここでの誤りは、探し漏れという形で現れます。見つからなかったものに人が気づきにくいため、「AIが挙げなかった=存在しない」と扱わない運用が必要です。

2. 並べる

自社案と相手方案の差分、前回版からの変更点、条項ごとの対応関係を整理する工程です。

比較の作業自体は機械的で、人がやると見落としが起きやすい部分です。ただし出力は必ず原文と照合します。特に、削除された条項は差分に現れにくいことがあります。

3. 気づかせる

抜けている条項、期限や金額の不整合、他の条項との矛盾を指摘させる工程です。

ここは「指摘の網羅性」を期待しないでください。指摘があった箇所を人が確認するという使い方であれば有用ですが、指摘がないことを確認済みの根拠にはできません。

4. 決める

その条件を受け入れるか、どう修正案を出すか、どのリスクを許容するか。

ここは工程として分離し、人が担います。AIの出力は判断材料の一つであり、そのまま社内の結論として扱わないことを、運用として決めておきます。

AIへ渡す前に決めること

契約書には、相手方の情報、未公開の取引条件、担当者の氏名や連絡先が含まれます。使う前に、入力してよい情報の範囲を決めてください。

個人情報保護委員会は、個人情報取扱事業者が生成AIサービスへ個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認すること、また個人データを含むプロンプトを入力する場合には、提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないこと等を十分に確認することを求めています[3]。

加えて、契約書には相手方との秘密保持義務が及ぶ情報が含まれる場合があります。秘密保持契約の条項によっては、第三者のサービスへ入力すること自体の可否を確認する必要があります。この確認は、AIの性能とは別の問題です。

コピペして使える「契約書業務のAI利用チェックシート」

契約の類型ごとに1枚作ります。すべて埋まらなくても構いません。埋まらない欄が、着手前に決めるべき項目です。

対象の切り分け

  • 対象とする契約の類型:

  • 紛争が生じている案件を含むか(含む場合は対象から除外するか):

  • 相手方が争う姿勢を示している案件の扱い:

  • 海外法令や外国語が絡む案件の扱い:

任せる工程

  • 探す:使う/使わない

  • 並べる:使う/使わない

  • 気づかせる:使う/使わない

  • 決める:人が行う(固定)

情報の取り扱い

  • 利用を認めるサービス・プラン・アカウント:

  • 入力してよい情報:

  • 匿名化・削除する情報:

  • 入力してはいけない情報:

  • 秘密保持契約上の確認結果:

確認と責任

  • 出力を確認する人:

  • 何と照合するか(原文・自社ひな形・過去の締結版):

  • 社内へ回す前の承認者:

  • 弁護士等へ相談する条件:

記録と見直し

  • 使用した記録を残す場所:

  • 記録する項目(契約類型、使った工程、修正箇所、所要時間):

  • 見直し日:

  • 中止する条件:


契約書の確認業務のうち、どこまでをAIに任せ、どこから人が判断すべきかを整理したい場合は、AIよろず室の30分の無料相談で、実際の契約類型を一つ伺い、工程の切り分けを具体化します。月額39,800円(税別)で、御社のAI担当者として継続的に支援するサービスもご用意しています。対応範囲と費用は着手前に確認します。売り込みや、その場での契約のお願いはいたしません。



AIの出力を、そのまま社内へ回さない

法務の確認結果は、事業部門にとって「進めてよいかどうか」の回答として受け取られます。出力をそのまま転送すると、確認済みの結論として扱われることがあります。

社内へ回す前に、次の4つを付けてください。

  • 根拠となる条項:どの条項に基づく指摘か

  • 確認した人:誰が原文と照合したか

  • 未確認の事項:判断できなかった点、情報が足りない点

  • 判断を保留した点:専門家へ相談する予定の論点

とくに3つ目と4つ目が重要です。指摘が並んでいるだけの文書は、読む側に「すべて確認済み」という印象を与えます。確認できていない範囲を明示することが、法務の出力では品質そのものになります。

使わない方がよい場面

次のような場面では、AIの利用を前提にしないか、範囲を強く限定してください。

  • 取引先との間で、すでに紛争が生じている

  • 相手方が明確に争う姿勢を示している

  • 和解、示談、訴訟に関連する文書を扱う

  • 前例のない取引形態で、社内に比較対象がない

  • 外国法が準拠法となる、または外国語の契約書である

  • 相手方との秘密保持契約上、第三者サービスへの入力可否が確認できていない

  • 期限が迫っており、出力を十分に確認する時間がない

最後の項目は見落とされがちです。確認の時間が取れないときほど、AIの出力をそのまま使いたくなります。 その状態で使うことが、最も影響の大きい誤りにつながります。

効果は、レビュー時間だけで測らない

導入の効果を「1件あたりの確認時間」だけで測ると、実態を見誤ります。次を合わせて記録してください。

  • 1件あたりの所要時間(AIの利用時間と、人の確認時間の合計)

  • 事業部門へ回答するまでの日数

  • 差し戻しや再確認が発生した件数

  • 原文との照合で見つかった、AIの出力の誤り

  • AIが指摘しなかったが、人が見つけた論点

  • 弁護士等へ相談した件数と、その理由

5つ目は特に重要です。AIが挙げなかった論点を人が見つけた件数は、指摘の網羅性を期待しすぎていないかを確認する材料になります。この件数が多い類型では、任せる工程を狭めます。

法務の専任がいない組織の場合

法務部門を置かず、総務や経営企画が契約業務を兼任している組織では、判断の負担がより大きくなります。

この場合、AIに期待する役割は「専門家の代わり」ではありません。専門家へ相談すべき案件を早く見つけることに置く方が現実的です。

  • 自社ひな形との差分が大きい契約を抽出する

  • 期限、金額、解除条件など、確認漏れが起きやすい項目を洗い出す

  • 相談時に持参する論点を整理する

この使い方であれば、判断そのものをAIへ委ねることになりません。相談前の準備が整うため、専門家へ確認する時間の使い方も効率化できます。

自力で進められる範囲と、相談した方がよい状態

次の状態であれば、この記事のチェックシートから自社で進められます。

  • 対象とする契約の類型を、社内で切り分けられる

  • 入力してよい情報の基準が、すでに文書としてある

  • 出力を原文と照合できる担当者がいる

一方、次の状態では、着手の前に整理が必要です。

  • どの契約類型から始めるべきか決められない

  • 秘密保持契約上の扱いを確認できておらず、判断する担当が決まっていない

  • 事業部門から「AIで早く確認してほしい」と求められており、確認工程を省く圧力がある

  • 過去の締結版や自社ひな形が整理されておらず、照合の基準がない

  • 法務の担当者が一人で、確認の負荷が集中している

AIよろず室では、業務診断、AI活用ロードマップ、実装、社内定着までを支援しています。月額39,800円(税別)で、御社のAI担当者として継続的に支援するサービスをご用意しています。規模の大きい開発や個別実装が必要な場合は、対応範囲と費用を着手前に確認したうえでご案内します。なお、法令の解釈や個別契約の妥当性の判断は対応範囲外であり、弁護士等の専門家をご案内します。

よくある質問

Q. 契約書を生成AIへ入力すること自体に問題はありますか。

一律には判断できません。契約書に含まれる情報の性質、相手方との秘密保持契約の条項、利用するサービスの契約条件によって変わります。まず入力してよい情報の範囲を社内で決め、必要に応じて相手方への確認や専門家への相談を行ってください。

Q. AIのレビュー結果を、法務の確認済みとして扱ってよいですか。

推奨しません。出力は判断材料であり、人が原文と照合し、確認できていない範囲を明示したうえで社内へ回す運用にしてください。確認済みとして扱うと、後から範囲の認識が食い違います。

Q. リーガルテックのサービスと、汎用の生成AIは何が違いますか。

本記事は特定製品を比較する趣旨ではないため、機能や料金には踏み込みません。選定にあたっては、扱う情報の条件、社内の確認体制、既存の契約管理の運用と合うかを基準にしてください。

Q. 「事件性」があるかどうかは、社内で判断できますか。

法務省の資料では、「事件性」は契約の目的、当事者の関係、契約に至る経緯や背景事情等、諸般の事情を考慮して個別に判断されるべきものとされています[1]。社内で機械的に線を引くことは適切ではありません。判断に迷う案件は、専門家へ確認してください。

Q. まず何から始めればよいですか。

紛争が生じておらず、社内に比較対象が多い契約類型を一つ選んでください。そのうえで「探す」「並べる」の工程だけを使い、原文との照合で誤りがどの程度出るかを記録します。記録が集まってから、任せる工程を広げるかを判断します。

まとめ

  • 契約書業務を「探す・並べる・気づかせる・決める」に分け、決める工程は人が担う

  • 弁護士法第72条との関係については法務省が整理を公表しており、「事件性」は諸般の事情を考慮して個別に判断されるものとされている

  • 契約の性質によって前提が変わるため、紛争が生じている案件などは対象から切り分ける

  • 出力には根拠条項、確認者、未確認事項、判断を保留した点を付けて社内へ回す

  • 効果は確認時間だけでなく、差し戻し、原文との照合で見つかった誤り、AIが挙げなかった論点で測る

契約書の確認にAIを使うかどうかは、性能の問題ではありません。どの工程を任せ、誰が何と照合し、どこから専門家へ渡すかを先に決められるかどうかです。この線引きができていれば、負荷の大きい確認業務から段階的に始められます。

「自社の契約業務で、どこから試すべきか」を整理したい方は、AIよろず室の30分の無料相談をご利用ください。現在の契約類型と体制を伺い、最初に切り分ける工程を一つ具体化します。売り込みや、その場での契約のお願いはいたしません。



この記事を書いた人
AIよろず室。
AIコンサル企業や大手広告代理店でのデジタルマーケティング等を含め、IT業界で20年以上の経験を持つエキスパートです。課題の発見から、業務に合わせたAIツールの作成・レクチャーまで支援します。月額39,800円(税別)で、御社のAI担当者になるサービスを展開しています。


参考資料

[1]法務省大臣官房司法法制部「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」(令和5年8月公表/2026年8月9日確認)
https://www.moj.go.jp/content/001400675.pdf

[2]法務省大臣官房司法法制部「弁護士法72条とAIリーガルテックサービス」内閣府 規制改革推進会議 ワーキング・グループ資料5(令和8年1月9日/2026年8月9日確認)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/meeting/wg/2501_06ai/260109/ai06_05.pdf

[3]個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(令和5年6月2日公表/2026年8月9日確認)
https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/


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