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京都|日常から、すこしだけ逸れて

━━ Loc:Kyoto DAY1

「修学旅行ぶりだな。」
京都を訪れる人のうち、わたしと同じように数十年振りという人は、きっと、少なくないだろう。
歴史にさほど詳しいわけでもなく、修学旅行の記憶もほとんど残っていない。
そんなわたしが、帰りの新幹線では「あぁ、京都、よかったな」「秋になったらまた来たいね」と話していた。
その変化は、たぶん思ってたよりもずっと早く訪れていたのかもしれない。初日の夜から。

用事があり名古屋に寄っていたため、京都に到着したのは夕方。G.W.前だというのに尋常に暑いのは、東京も同じ。ちゃんと天気予報をチェックしてきたし、服装は想定通り問題なし。
日傘は悩んだ末に持って行ったが、正解だったかどうかは今でもわからない。
東京とさほど気温も変わらず、日没にはまだ少し早く、空は明るさを残していた。

京都駅で新幹線を降りてそこからさらに一駅、五条。

今回お世話になったホテルは、「Minn 烏丸五条 京都 Station North」。

今回は家族で京都に訪れたのだが、仕事の都合で来られなかった姉を除いても、5人旅行。なかなかに大人数。全員が一部屋に集まって寝泊まりできる施設はなかなか見つからない。

チェックインを済ませると、みな思い思いに荷物を置いてくつろぎはじめるが、のちに、そこが宿泊期間中の居場所となるので、意外と重要な場所取りだったりする。

しかし、そこは家族。長年共に暮らしてきた阿吽の呼吸から、誰からともなくソファやベッドまで、自然に各自のポジションについていった。

名古屋から買ってきた和菓子をつまみながら、徐々に、しかしあっという間に、そこは“ホテル”ではなくいつもの家の空気に染まっていった。

さて、そろそろかな、とさっそく夜ご飯へと繰り出した。

街を探索しながら気になる呑み屋さんにふらっと入る、そんなスタイルがお気に入りだが、今回は家族旅行。大人数&ノンアル勢もいるため、そうはいかない。
「清潔感がある」「メニュー豊富」「大人数OK」
旅の前の一仕事。この条件を満たす店探しがある。
これがふだんのぷらっと旅との大きなちがいだ。

下調べの結果、1日目は「寿司と天ぷらと樽酒 四条烏丸店」にお邪魔することに。

しっぽりとした風情のある外観とは裏腹に、中は明るく清潔感があった。
なにやら、最近リニューアルしたばかりだそう。
うむ。これなら趣味も食の好みもバラバラな家族でも、問題ないだろう。

名物の天然ふぐのてっさをはじめ、手の込んだ小鉢が並ぶ。
メニューを選ぶ時間でさえも、思いのほかたのしめた。

なめろうは、ふだん酒を飲まない姉にとっては新鮮であり、なぜか呑兵衛の父までも「これは何だ、うまいな」と気に入っていた。東京でも食べたことあるだろうに。

ノンアル勢はいつの間にかデザートまで堪能していて、わたしと父は最後にもう一杯、と熱燗をたのむ。

家族みんな、それぞれ満足気だ。

お店を出るころにはすっかり日も暮れ、外は夜。
熱燗で火照った体には少々堪える気温だった。
念のため持ってきた軽いアウターがなければ震えていただろうほどに、京都の夜は涼しかった。

お腹も満たされたところで、高台寺を目指して夜のバスに乗り込む。
高台寺のライトアップは、姉がたのしみにしていた初日のメインイベントだ。

夜の静寂に包まれた高台寺に足を踏み入れた瞬間、想像していた“京都の夜”は、いい意味で裏切られた。

人を飲み込むかのようにそびえ立つ竹林。小道の両側から夜空を覆うように竹が伸び、明かりを見失った。池の水面に反射する、反転したもうひとつの世界。奥行きをなくしたような、底知れぬ深さが地面に広がっていた。高台寺という場所そのものが持つ長い時間まで、容赦なくライトに照らされているようだった。まぶしさと吸い込まれるような影のコントラストに眩暈がする。足元がふわっと浮いて、わたしは光と闇に包まれた。

同じライトアップでも、東京のイルミネーションとはちがう。
照らされていない暗闇までもが、静かに支配されているような圧倒的な時間が流れていた。

都心からバスで30分ほどの場所に、こんな光景が広がっているとは。こんな時間が流れているとは。

気がつけば閉門時間が迫っている。
わたしと母の間くらいの年齢であろう係りの女性に、出口へと促される。

「暗いので、お気をつけて」

その言葉がやさしさなのか、それとも京都言葉なのかは、まだわからない。わからないままでいたい気もする。

京都の旅が、ようやく始まった初日の夜だった。



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この旅を一本にまとめた総集編も公開しました。


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