道を作るつもりはなかった 歩きやすくしただけだった
【こちらの記事は、朗読音声を聞きながらご覧いただくことを推奨いたします。】
道を作るつもりはなかった。歩きやすくしただけだった
森を抜けようと思ったわけじゃない
最初から地図があったわけでもない
向こう側に町があると知っていたわけでもない
ただ、目の前が歩きにくかった、
石があった、
枝があった、
ぬかるみがあった、
だから、それをどかした
ただ、それだけだった
一歩進んで、また歩きにくい場所があれば整える
少し進んで、また整える
その繰り返しだった
最初は「前に進む」ことすら目的じゃなかった
ただ、自分が転ばないために、
疲れないために、
迷わないために、
歩きやすくする
それだけだった
人はよく
「最初からそこまで考えていたんですか?」と聞く
でも正直に言えば、そんなことはない
そんなに先なんて見えていない
見えているのは、せいぜい少し先の足元くらいだ
二か月先くらい
そのくらいだ
その範囲なら整えられる
でも、その先は分からない
だから、決めない
決めないまま進む
その代わり、足元だけは整える
これが、自分のやり方だ
歩いていると、途中で疲れる
戻るのも面倒だ
だから、その場に休憩所を作る
メモを残す、
考えを整理する、
一度立ち止まれる場所を作る、
最初は自分のためだった
忘れないため、
戻りやすくするため、
確認しやすくするため、
ただ、それだけだった
でも不思議なことが起きる
後ろから来た誰かが、その休憩所を使い始める
「ここ、ちょうどよかった」
そう言って座る
置いてあったメモを読む
その先の道を歩く
最初は、自分だけの休憩所だったはずなのに
いつの間にか、人が集まり始める
気がつけば、小さな宿屋みたいになる
また別の誰かが来る、
また使う、
また残す、
気がつけば、集落みたいになる
…
……
………
あとから振り返ると
全部繋がって見える
最初から計画していたように見える、
最初から町を目指していたように見える、
最初から道を作っていたように見える、
でも違う
本当は違う
ただ歩きやすくしただけだ
ただ戻りやすくしただけだ
ただ休みやすくしただけだ
それだけだった
でも、その「それだけ」が積み重なる
整えた場所、
休んだ場所、
残した記録、
置いた言葉、
それが全部残る
点だったものが線になる
線だったものが道になる
人はそれを「伏線」と呼ぶ
でも自分の感覚は少し違う
伏線は、先に張るものじゃない
後ろに残るものだ
歩いた跡が、あとから伏線になる
進んだ結果が、あとから意味になる
その時点では意味なんて分からない
でも残る
残ったものが、あとから誰かの地図になる
ブログもそうだった
最初から今の形を目指していたわけじゃない
ただ、考えを置いた、
整理した、
休憩所を作った、
ハブを作った、
連載を作った、
分けた
残した
それだけだった
でも気づけば、王国になっていた
国を作ろうと思ったわけじゃない
道を作ろうと思ったわけじゃない
歩きやすくしたかっただけだ

ただ、それだけだった
でも今、振り返ると分かる
森は抜けていた、
休憩所は宿屋になっていた、
宿屋の周りに人が集まり、
集落ができていた、
その先には、もう町が見えている
多分これからも同じだ
先の町を目指して地図を書くことはない
また歩く、
また整える、
また疲れる、
また休憩所を作る、
その繰り返しだ
そしてきっと
また気づいた頃には
新しい道ができている
