押尾コータロー「ReBOOT & Collabo」
アコースティックギタリスト・押尾コータローのメジャーデビュー10周年を経て、新たなスタートを告げる2枚組アルバム『ReBOOT & Collabo』。
Disc 1には、11年目の再始動(ReBOOT)をテーマにした新作インストゥルメンタルを収録。一方、Disc 2の「Collabo」盤は、まったく異なる表情を見せてくれます。
そこに収められているのは、ジャンルもキャリアも異なる8組のアーティストとの真っ向勝負。押尾コータローのアコースティックギターを軸に、相手の「声」とどう対話し、どんな空間を作り出しているのか。全8曲の濃密なセッションの聴きどころを紐解いてみます。
Disc 2 『Collabo』トラックリストと聴きどころ
01. 瞳をとじて with LISA
平井堅の名曲を、m-floのオリジナルメンバー・LISAを迎えてカバー。LISAの持つソウルフルかつ伸びやかな歌声と、押尾さんの柔らかく繊細なギターのアルペジオが見事に溶け合います。R&B的なグルーヴ感とアコースティックのぬくもりが同居した、アルバムの幕開けにふさわしい美しいトラックです。
02. IF YOU WANT with 氷室京介
アルバムの中でも圧倒的な緊張感と凄みを放つトラック。オリジナルが持つ壮大なロックサウンドを、押尾さんはパーカッシブな奏法と太い低音で見事に再構築しています。その静けさとダイナミズムの中で、氷室京介というヴォーカリストの持つ孤高のソウルと声の圧力が、より一層ダイレクトに胸に刺さります。
03. 時の過ぎゆくままに with 工藤静香
沢田研二の名曲を工藤静香とともにカバー。彼女特有の妖艶で哀愁を帯びたボーカルラインに、押尾さんの哀愁漂うコードワークが寄り添います。無駄な装飾を削ぎ落としたアコースティックな空間だからこそ、工藤静香の歌声が持つ「ドラマ性の強さ」が際立ちます。
04. 瞳をとじれば with カサリンチュ
ヴォーカル&ヒューマンビートボックスの2人組ユニット・カサリンチュとのコラボレーション。ヒューマンビートボックスのリズムと押尾さんのパーカッシブなギター奏法が絡み合い、アコギ1本とは思えないオーガニックでポップなグルーヴを生み出しています。
05. ... & Smile with 今井絵理子
今井絵理子の持つ透明感のある歌声と、前向きなメッセージを包み込むようなポップチューン。押尾さんのギターはボーカルの温かみを引き立てるように、やさしく、それでいて軽やかに弾むようなリズムを刻んでいます。
06. Smile Blue with DEEN
DEENの爽やかなコーラスワーク、池森秀一の伸びやかなボーカル、押尾さんの爽快なギターアプローチが見事なシナジーを生んでいる楽曲。風が吹き抜けるような心地よいアンサンブルで、ポップスにおけるアコースティックギターの最良の形を示しています。
07. Shape Of My Heart with 渡辺美里
スティング(Sting)の名曲を渡辺美里とカバー。原曲の持つ哀愁と美しいメロディラインを、渡辺美里の深みのある歌声と押尾さんの繊細なタッチのギターが見事に表現しています。洋楽カバーでありながら、二人の個性がしっかりと刻まれた名演です。
08. ナイト・ウェイブ (Live Version) with 甲斐よしひろ
ラストを飾るのは、甲斐よしひろとのライブバージョン。スタジオ録音とは一味違う、ステージ上の熱気と緊張感がそのままパッケージされています。甲斐よしひろのハスキーで生々しいボーカルと、それに応える押尾さんのエモーショナルなギターのぶつかり合い。ラストにふさわしい圧巻のライブセッションです。
おわりに
相手の「声」を引き出す職人技 このコラボレーション盤を聴いて感じるのは、押尾コータローという人は単にテクニックを誇示するのではなく、「相手のボーカルが一番美しく響く隙間(構造)」を見つけ出す天才だということです。
分厚いバンドサウンドから解き放たれ、アコースティックギターという最小限のフレームに置かれたとき、8組のボーカリストたちの「裸の歌声」と「本質的な魅力」がはっきりと浮かび上がってきます。
押尾コータローは伴奏に徹しているのではない。相手の魅力を最大限に引き出しながら、自らも対等な演奏者として音楽を完成させる。その絶妙な距離感こそが、この『Collabo』盤の最大の魅力です。
アコースティックギターという楽器の可能性の広さと、日本のポップス・ロックを彩ってきたボーカリストたちの凄みを同時に堪能できる、屈指の名盤です。
