セレナは誰のもの?
先月、中古でセレナを買った。
本当の持ち主は妻だ。ローンも妻が組んだ。だから厳密に言えば妻の車。でも、わが家にはもう一人、自信満々に「これは自分の車」と言い張る人物がいる。保育園に通う息子だ。
息子のセレナ愛は本気で、歩けば5分の保育園でも「迎えはセレナ」が絶対条件。妻が仕事でセレナに乗って行く日は、私のムーブで迎えに行くしかない。そんな日に保育園へ着くと、息子は駐車場を見回し、すぐに異変に気付く。
「……セレナじゃない。」
半分泣きそうな顔になり、「セレナじゃないとダメ」と訴えてくる。私は「今日はママがお仕事で乗ってるからね」と説明する。でも、そんな事情は息子には関係ない。
息子にとって大事なのは、「自分のセレナ」が迎えに来ることなのだ。
歩いて迎えに行った日なんて、さらに大変だった。「なんでセレナじゃないの?」という顔で納得してくれない。たった5分の道なのに、息子の中では移動手段ではなく、セレナそのものがお迎えの主役らしい。
結局その日も、家に着くまで私はバシバシ叩かれながら歩いた。
ローンを払っているのは妻。
迎えに来たのは私。
でも息子の頭の中では、セレナは完全に「自分の車」。
家に着いても、セレナはまだ帰ってきていない。
私は叩かれた腕をさすりながら、「この家で一番立場が弱いのは、もしかして俺なんじゃないか」と少しだけ考えた。
その頃、本当の持ち主である妻は、息子の愛車に乗って仕事をしていた。
