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「中身は良いのに決まらない」を抜け出した女性デザイナーの話

「私の提案、ちゃんと中身は良いはずなのに、なぜか決まらないんです」

先日、ある女性Webデザイナーさんから、こんな相談をいただきました。技術もセンスもある方で、作るもののクオリティは本当に高い。それなのに、見積もりを出すと「検討します」で止まってしまう。彼女は「価格が高いのかな」「実績が足りないのかな」と、ずっと自分を責めていました。

でも、お話を聞いていくうちに、原因は値段でも実績でもないことが見えてきました。今日はそのときの気づきを、私自身の失敗もまじえながらお話しさせてください。きっと「わかる、私も同じかも」と思う方がいるはずです。

「いい提案」なのに、なぜか決まらない違和感

彼女の提案書を見せてもらうと、文章はとても丁寧で、論理的で、抜けがありませんでした。デザインの意図も、納期も、料金の内訳も、きちんと書いてある。普通に見れば「いい提案書」です。

でも、私はそれを読んだとき、なんとも言えない違和感を覚えました。うまく言葉にできなかったのですが、「正しいけど、自分ごとに感じない」という感覚でした。

実は私も、独立したての頃にまったく同じことをしていたんです。良い提案を書こうとするあまり、業界の言葉や、自分が学んできたきれいな表現ばかり並べていました。今思えば、あれは「お客様への提案」ではなく「自分の有能さの説明」になっていたんやと思います。

ヒアリングのメモに、宝物が眠っていた

そこで私は、彼女がお客様と最初に話したときのヒアリングメモを見せてもらいました。すると、そこには宝物みたいな言葉が、たくさん眠っていたんです。

たとえば、お客様はこんなふうに話していました。「今のホームページ、なんか自分の店っぽくないんです」「お客さんに"ちゃんとしたお店ですね"って思ってもらいたくて」「正直、パソコンが苦手で、更新するのが怖い」。

ところが、提案書にはこの生々しい言葉が、一つも残っていませんでした。代わりに「ブランドイメージの最適化」「信頼性の高いUIデザイン」「運用負荷の軽減」と、きれいに翻訳されてしまっていたんです。意味は同じ。でも、温度がまるで違いますよね。

お客様の言葉を、そのまま借りるだけ

私が彼女に伝えたのは、たった一つのことでした。「お客様が言った言葉を、そのまま提案書に書いてあげてください」。

人は、自分が使った言葉で語りかけられると「あ、この人は私のことを本当にわかってくれてる」と感じます。逆に、どれだけ正しくても、知らない言葉で説明されると、心がすっと離れてしまうんです。

具体的には、こんなふうに変えてもらいました。

  • 「ブランドイメージの最適化」→「"自分の店っぽくない"を、"これこそうちの店"に変えます」

  • 「信頼性の高いUIデザイン」→「初めて見た人に"ちゃんとしたお店だな"と感じてもらえる作りにします」

  • 「運用負荷の軽減」→「パソコンが苦手でも、怖がらずに更新できる仕組みにします」

  • 提案書の冒頭に、お客様が口にした悩みの言葉を、そのまま一行載せる

やることは、新しい何かを足すことではありません。お客様がすでに言ってくれた言葉を、ただ拾って、そのまま返してあげるだけなんです。

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書き直したら、その場で「お願いします」

数日後、彼女から少し興奮ぎみのメッセージが届きました。書き直した提案書を持って、別の見込みのお客様と打ち合わせをしたそうです。

提案書の一行目に、その方が前回ぽろっとこぼした「今のサイト、見るたびにちょっと恥ずかしくて」という言葉を、そのまま載せておいたそうなんです。すると、お客様はそこを読んだ瞬間に顔を上げて、こう言ったそうです。

「これ……私が言ったことですよね。なんだか、すごくわかってもらえてる気がします」

そこから先は、価格の説明をほとんどしないまま「ぜひお願いします」と決まったそうです。彼女は「私、今まで自分の言葉で着飾ることばっかり考えてました」と笑っていました。中身は、ずっと良かったんです。ただ、伝え方の入り口が違っていただけ。

なぜ「自分の言葉」だと、響かないのか

ここには、ちょっと切ない真実があると思っています。私たちは専門家であろうとするほど、つい「きちんとした言葉」を使いたくなります。素人っぽく見られたくない、プロらしくありたい。その気持ち、痛いほどわかります。

でも、お客様が本当に求めているのは「正しさ」ではなく「わかってもらえた感覚」なんですよね。難しい言葉は、ときに壁になります。やさしい言葉、お客様自身の言葉は、橋になります。

これはデザイナーさんに限った話ではありません。カウンセラーでも、講師でも、ハンドメイド作家でも、まったく同じです。お客様の言葉の中に、答えはもう全部入っている。私たちはそれを、聞き逃さずに拾えるかどうか。本当に、それだけなのかもしれません。

今日のまとめ

最後に、今日のお話を整理しておきますね。

  • 提案が決まらないのは、価格や実績ではなく「伝え方の入り口」のことが多い

  • お客様のヒアリングメモには、響く言葉がすでに眠っている

  • 専門用語に翻訳せず、お客様が口にした言葉をそのまま提案書に返す

  • 提案書の冒頭に悩みの言葉を一行載せるだけで、反応がはっきり変わる

  • お客様が求めているのは「正しさ」ではなく「わかってもらえた感覚」

もし今、「中身には自信があるのに、なぜか選ばれない」ともやもやしているなら、それはあなたの価値が足りないからじゃありません。きっと、伝え方の入り口を少し変えるだけで、ちゃんと届くようになります。あなたの良さは、もうそこにあるんやから。

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