ツンデレ童話(14):ツンデレ百人一首(壬生忠見編)
時は平安の頃、都の空には幽かに雅な調べがこだまし、貴族たちは恋の歌を詠み交わしては、風流を競い合う毎日を送っておりました。

そんな折、路地裏戦隊シノブンジャーの『シノブレッド』なるお方がおられた。彼は平兼盛の『忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで』を声に出して詠んでいたところ、『シノブレッド… 忍ぶれど… これはもしや洒落にあらずや?』などとひとりで盛り上がり、吹き出しては自画自賛していたという。
一方、その頃の宮廷には、目立たぬながらも心中に秘めた情熱をもつ若き歌人、壬生忠見がいた。奥手ゆえ恋心を口にできずにいたが、その想いは胸を焦がし、ついに歌へと託してしまったのだ。
『恋すてふ 我が名はまだき 立ちにけり 人しれずこそ 思ひそめしか』
『え、ええっ!?』
忠見は気づいてしまった。――これでは、自らの恋心を公に曝すも同然ではないか。
『いやいやいや、違う! これはただの歌の技法にござる…!』と、ツンデレな言い訳を巡らす暇もなく、その歌は貴族たちの間で大いに話題となり、いつしか『忠見殿が恋に落ちたらしい』という噂が飛び交いはじめる。慌てふためく忠見が必死に否定するも、周囲はまるで取り合わない。
『な、なにゆえ勝手に決めつけるのだ! ただの歌だと申しておるのに!』
『まあ、忠見殿の頬が朱く上気しておられるではないか』
『こりゃあ疑う余地もございませぬな!』
『や、やめぬか!!』

だが、騒ぎはさらに広がりを見せる。なんと当の噂を耳にしたのは、忠見が思いを寄せていた神菜姫であった。彼女は品の良い微笑みを浮かべ、しとやかに近寄ってくる。
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『忠見さま。その歌、とても美しゅうございますね』
『ひ、神菜姫!? い、いや、これは… ただの修辞にござって…!』
戸惑う忠見をよそに、神菜姫はくすりと微笑んだ。

『もしや、わたくしのことを…?』
『うっ…!』
ロマンス・ポンコツの壬生忠見、陥落。
その日の夕刻、都の空に響き渡ったのは、風流な恋の歌ではなく『や、やはり詠むのではなかったーーーっ!!』という、忠見の慟哭の声であった。
武智倫太郎
