野呂先生と考える日本のリーダーシップと影響力(1)
このnoteという空間を通じて、野呂先生のように国際的な視野を持ち、経営学、武術、プロレスなど多岐にわたる分野を通じて世界を深く理解されている有識者と対話できることは、非常に大きな喜びです。
この試みは、軽薄なテレビ番組や『マスゴミ』とまで揶揄される日本のマスメディア、またビュー数やフォロワー至上主義が目立つYouTubeやTwitterでは得られない、noteならではの独自の価値を持った取り組みといえるでしょう。
今回初めてこの記事をお読みいただく方々のために、まず野呂先生がどのような方かについてご説明します。
このようにリンクを貼るだけで、作者も読者も手間を省ける点は、noteならではの特徴です。これにより、情報へのアクセスがスムーズになり、知的生産性を大幅に向上させることができます。noteが持つ真の威力がここに表れています。
一般的に、YouTubeの番組や対談記事では、司会者や進行役のモデレーターが冒頭で、誰がどのような趣旨で対話しているのかを説明する舞台設定がなされます。ここで意外と見落とされがちな点ですが、主催者のいるイベントでは、主催者の意向が強く反映されるため、登壇者や出演者の意見の大半が削除されたり、都合よく編集されてしまうことがあります。そのため、視聴者が目にする内容は、すでに主催者側の意図によって色づけされているのです。
しかし、本日突如スタートしたこの企画では、野呂先生と私、武智倫太郎が公開書簡形式で自由に意見を交わすため、外部の干渉が一切ない『本音トーク』が可能です。
さらに、この場にはプロレスで言うところのレフェリーに相当する司会者がいません。つまり、これは1987年10月4日の『アントニオ猪木 vs マサ斎藤』の巌流島決戦に匹敵する、ガチンコの対話が展開されるわけです。このシチュエーションを想像しただけでも、プロレスファンなら心が躍るのではないでしょうか。
野呂先生と私の共通点の一つは、どちらもnoteでの収益化を目的としておらず、実名で英語の学術論文を執筆したり、日本国内でのハードカバーブックや電子書籍を商業出版したりと、文筆活動を生業にすることが可能な点です。ただし、査読済みの学術論文を書くことは、大学教授や研究者にとって一種の義務とも言えるため、厳密には『文筆家業』とは異なる側面があります。
大学や日本の公的な研究機関(AIST〈産業技術総合研究所〉、NIMS〈物質・材料研究機構〉、RIKEN〈理化学研究所〉、JAXA〈宇宙航空研究開発機構〉、NARO〈農業・食品産業技術総合研究機構〉、NICT〈情報通信研究機構〉)などで教育や研究に携わる方々なら、ご存じの通り、国際的に知名度の高い学術論文が発表されると、世界中の学会やコンファレンスから講演依頼が殺到します。その結果、主要都市で開催される学術会議への寄稿依頼が次々と届き、あっという間に2年先まで講演スケジュールが埋まってしまう、という現象が生じるのです。
コロナ禍以降、ビデオコンファレンスの増加により状況は少し変化しましたが、コロナ以前の大学教授たちは、まるでプロレスラーが興行をこなすように、自身の『ヒット論文』を武器に世界中の主要都市を巡業していました。しかも、これらの学会は、多くの場合、その国を代表する観光地で開催されるのが特徴的です。
こうした現象が生じる背景には、有名な学者や論文執筆者が国際的に引く手あまたであることがあります。そのため、講演主催者は少しでも登壇者の意欲を引き出すべく、パリ、ミラノ、ドバイ、上海、バルセロナ、フランクフルト、ミュンヘン、ロンドン、ニューヨーク、シンガポール、シドニー、バンコク、イスタンブール、京都など、魅力的な都市を開催地に選ぶのです。
これは、京都議定書が京都で締結された理由とも重なります。京都は、環境問題における歴史的な転換点として、持続可能な開発や気候変動対策が始まった象徴的な場所です。さらに、日本の歴史や文化の奥深さを国際社会に示す場として、東京ではなく京都が選ばれたのも納得できる選択です。
【心の中の古舘】ここからが本題だ! そう、いつ試合が始まるのかさえ分からない――これぞまさに令和の言論版・巌流島決戦だ! さあ、ペンは剣よりも強し! この鉄則が、今、リング上――いや、言論の場で炸裂する! まるでジャーマンスープレックスのように、鋭く、強烈に響き渡る! これが言葉の闘いだ、これが真剣勝負だ!
【野呂】日本最大級の知性である武智倫太郎の言葉を勝手に引用して、解釈したことをお断りしたい。
【武智】学術論文は引用されてこそ価値があります。しかも、その引用に解釈を加えていただくなど学者冥利に尽きます。
野呂先生と私は海外での生活が長いので、当たり前のように会話が進んでいきますが、ここで対話の前提条件となっている、国内外の大統領や首相の回顧録がどのように扱われているかの一般論を説明します。
回顧録が語る国の文化:政治家の自伝が注目される国とされない国
政治家の任期終了後に出版される回顧録や自伝は、その国の文化や政治への関心を反映する鏡といえます。興味深いのは、この回顧録に対する国民の関心度が国によって大きく異なることです。例えば、アメリカやイギリスでは注目を集める一方で、中国や日本ではあまり話題になりません。それぞれの背景を紐解いてみましょう。
関心が高い国々
アメリカ
アメリカでは、大統領経験者の回顧録は通常ベストセラーとなるため、どの出版社が回顧録を出版できるかを巡って熾烈な競争が繰り広げられます。バラク・オバマの『約束の地』やジョージ・W・ブッシュの『Decision Points(決断のとき:和訳されていない)』は、リーダーシップの裏側や重要な政策決定の背景を知る貴重な手段として広く読まれています。
この現象の背景には、自己表現を重視する文化や、大統領という国家の象徴に対する国民の深い関心があります。アメリカ人はリーダーの個人的なストーリーに共感し、それを通じて自身の成長や洞察を得ようとする傾向が強いのです。
イギリス
イギリスでは、元首相の回顧録が政治的教訓や歴史的洞察を提供する重要な文献として位置付けられています。例えば、トニー・ブレアの『A Journey』やウィンストン・チャーチルの回顧録は、リーダーの決断の背景を学ぶための手段として広く読まれています。政治家の個人的な視点が、歴史や政策の理解に直結するという認識が、これらの書籍への高い関心を支えています。ちなみに、チャーチルは1953年にノーベル文学賞を受賞しており、これは『The Second World War』シリーズや、彼の演説の文学的価値が評価された結果です。
フランスとドイツ
フランスでは政治家の回顧録が哲学的・文学的な価値を持つことが期待され、シャルル・ド・ゴールの回顧録などが高く評価されています。一方、ドイツではリーダーシップや政策決定の記録としての価値が重視され、ヘルムート・コールの著作など、ヨーロッパ統合や歴史的背景に関連する内容が特に注目を集めます。
関心が低い国々
中華人民共和国
中国では政治家の個人的な回顧録はほとんど出版されません。中国共産党の統治体制下では、個人の視点よりも党の公式な歴史観が重視されるため、政治的に敏感な内容が表に出ることは稀です。
日本
日本では、元首相の回顧録が出版されるものの、専門的な政治や歴史に興味を持つ一部の読者層に限られることが多いのが現状です。これは、日本社会が集団主義的であり、個人の物語や功績よりも、組織や制度の役割を重視する傾向があるためと考えられます。
さらに、回顧録の執筆自体についても、『そもそも読む価値があるのか?』という疑問が生じる場合があります。たとえば、『宇野宗佑回顧録:神楽坂芸者のスキャンダル』や『森喜朗回顧録:ノミの心臓、サメの脳みそと呼ばれて』といった架空のタイトルを例に挙げると、総理大臣としての実績が乏しいとされる人物の回顧録は、その存在意義を問われかねません。このように、『そもそも総理大臣としての仕事をしていなかったのでは?』という批判に繋がり、結果として回顧録の需要も低下してしまうのです。
中東やアフリカ諸国
中東諸国では、宗教や家系が統治の基盤となるため、政治家個人の回顧録は珍しい存在です。アフリカでは出版市場や読書文化が発展途上にあり、政治家の個人的な経験を記録するという習慣が根付いていない場合があります。
関心度を左右する要因
政治文化の違い
アメリカやイギリスのように個人主義が強い国では、リーダー個人の経験や決断が重視される傾向があります。一方、日本や中国など集団主義が根付く社会では、組織や制度が焦点となるため、回顧録への関心が低い場合があります。
メディアと出版業界の影響
アメリカやイギリスでは大規模なマーケティングが行われ、回顧録が商業的にも成功する仕組みが整っています。一方で、日本では政治書籍が一般読者向けに広く流通することは少なく、関心が限定的になります。
情報公開度と透明性
アメリカやイギリスは情報公開度が高く、政治家の回顧録が政策や歴史の裏側を知る手段とされています。一方、日本や中国では、政治に関する情報は一部の専門家や関心層に限定されがちです。
国民の政治参加意識
アメリカやイギリスでは政治参加が市民の権利・義務として認識され、政治家の考えや経験に関心が集まります。これに対して、日本では政治参加への意識が比較的低く、選挙の投票率も他国と比べて低い傾向があります。
野呂先生の慧眼
【野呂】日本の政治家は私利私欲ばかりで、世界の平和など考えてない。だから世界の人たちは、岸田さんの回顧録があったとしても誰も目もくれない。
【武智】国益よりも私利私欲が優先されることは、一部の国では見られる現象です。しかし、G20に名を連ねる先進国で、これほどまでに私利私欲に傾倒し、世界平和を一切考えない国というのは非常に珍しいことです。そのため、私は岸田さんの回顧録など読む価値がないと主張したかったのですが、野呂先生が私の稚拙な文章の行間に込めた意図を、見事に汲み取ってくださっています。
【心の中の古舘】おっと、ここで言葉が暴走だ! 武智選手、岸田選手の話をしている最中に、なんと――まさかの『おニャン子クラブ』生稲晃子への批判を開始! さあ、外務大臣政務官といえば、武智が得意とする海外事業とも密接に関わるポスト。外務省キャリア官僚の頂点、事務次官の上司に相当する重職ですよ! この重要なポストに『おニャン子クラブ』とは、まさに石破茂総理、一体何を考えているんだッ!
しかも内閣府政務官には、元SPEEDのメンバー、今井絵理子を起用! いやいや、これは驚きました! そう、今井絵理子といえば、RAIMMANのリングネームで知られるプロレスラー今井礼夢の母親だ! ここは武智選手、毎回今井絵理子から礼夢選手の試合チケットをもらっている関係から、擁護に回るかと思いきや――まさかの石破茂総理批判! もうリング上は大混乱! 収拾のつかない状況になってきたぞッ!
日本の歴代首相の中で、回顧録や自伝を執筆した主な政治家は以下の通りです。ここでは、著者自身が執筆したものか、第三者が記録・編集したものかという観点も含めて検証します。
吉田茂:『回想十年』
著者:吉田茂
内容:本人が執筆した自伝的回顧録で、戦後日本外交の中心人物としての記録を詳細に記述しています。
田中角栄:『田中角栄回顧録』
著者:早坂茂三
内容:元秘書である早坂茂三が田中角栄の言葉を基に構成したもので、本人執筆ではありませんが、当時の発言やエピソードを中心に描かれています。
中曽根康弘:『自省録―歴史法廷の被告として―』
著者:中曽根康弘
内容:本人が執筆した回顧録で、戦後日本の政治と中曽根政権の政策が振り返られています。
竹下登:『政治とは何か―竹下登回顧録』
著者:竹下登
編者:伊藤隆、御厨貴
内容:竹下登への2年にわたるインタビューを基に構成された回顧録で、リクルート事件や消費税導入を巡る政策課題が記録されています。
宮澤喜一:『宮澤喜一回顧録』
編者:御厨貴、中村隆英
内容:聞き書き形式で、官僚出身の視点から日本政治を振り返った内容となっています。
橋本龍太郎:『橋本龍太郎回顧録』
編者:五百旗頭真、宮城大蔵
内容:本人へのインタビューを基に構成され、橋本政権時代の改革や政策について記録されています。
小泉純一郎:『決断のとき ――トモダチ作戦と涙の基金』
著者:小泉純一郎、常井健一
内容:本人が執筆したように見える内容ですが、実際には常井健一が郵政改革やその背景を回顧しています。
安倍晋三:『安倍晋三 回顧録』
著者:安倍晋三
聞き手:橋本五郎、尾山宏
監修:北村滋
内容:本人へのインタビューを基に構成された回顧録で、第一次・第二次政権の主要政策や信条について詳細に綴られています。
吉田茂、田中角栄、中曽根康弘あたりまでは、その回顧録を読んでも面白いと感じられるかも知れません。しかし、それ以降の首相たちの回顧録や自伝は、総じて総理時代の失策の言い訳に過ぎず、個人的には全く興味を引きません。
中曽根康弘については、日本国内ではロナルド・レーガンとの『ロン・ヤス』関係を築いたことや、『不沈空母』発言で知られています。しかし私は、現在の日本経済がここまで悪化した原因の一端は中曽根康弘にあると考えています。
中曽根康弘と日本の半導体産業の衰退
日本の戦後復興を牽引した中曽根康弘政権(1982年~1987年)は、経済改革や行政改革を通じて『戦後政治の総決算』を掲げ、多くの実績を残しました。しかし、その時代背景と政策が、後の日本の半導体産業の衰退に間接的な影響を与えたとする指摘もあります。
以下では、中曽根政権期の政策と日本半導体産業の変遷を振り返り、その関連性を考察します。
1980年代、日本半導体産業の黄金期
・日本企業(NEC、東芝、日立など)は、メモリ市場で世界シェアの50%以上を占めました。
・高品質かつ低コストな製品で、米国企業(Intel、Texas Instrumentsなど)を圧倒しました。
・日本の半導体産業の躍進は、戦後の政府と産業界の緊密な協力(官民協調)による成果でした。通産省(現:経済産業省)の主導で進められた『VLSI計画』(1976年~1979年)は、その象徴的な例です。
米国との摩擦と日米半導体協定
・日本の半導体産業の急成長は、アメリカとの激しい貿易摩擦を引き起こしました。
・1980年代後半、アメリカは日本製品が米国市場を不当に侵食していると批判。
・中曽根政権は日米関係を最重要視し、1986年に『日米半導体協定』が締結されました。
日米半導体協定の影響
・日本は市場アクセスの透明性を確保することを義務付けられ、外国製品のシェアを20%に引き上げる目標が課されました。
・この協定は、米国企業に日本市場への進出の道を開く一方で、日本企業にとっては競争条件の厳格化を意味しました。
・この政策は日米関係の安定化に寄与しましたが、結果として日本の半導体産業の競争力を削ぐ一因ともなりました。
バブル経済と長期的影響
中曽根政権期の政策は、短期的には日本経済の安定化を図りましたが、長期的には以下のような課題を残しました。
為替問題:プラザ合意(1985年)により円高が進行し、日本製品の競争力が低下。
国際競争力の低下:日米半導体協定後、日本企業の技術革新への投資ペースが鈍化。
官民協調の希薄化:1980年代以降、通産省の主導力が弱まり、産業界の足並みが乱れる。
日本半導体産業の衰退とその教訓
中曽根政権が直面した日米摩擦への対応は、当時の政治的必要性としては妥当な判断でした。しかし、半導体産業の長期的な競争力強化という視点では、不十分だったと言えるでしょう。
国際協定の影響を見極める重要性
短期的な貿易摩擦解消が、長期的な産業競争力を損なうリスクを認識する必要があります。
技術革新の継続的支援
政府と産業界の協力体制を維持し、新興市場への対応力を高めるべきでした。
国際的な戦略の柔軟性
国内市場の開放と競争力強化を両立させる戦略が求められました。
現代への示唆
現在、日本の半導体産業は再起を図っていますが、かつてのリーダーシップの喪失が尾を引いています。中曽根康弘の時代に見られたような、政府と産業界の一体化した戦略が再び求められています。
半導体産業の復活は、単なる技術力の問題ではなく、国家戦略そのものです。中曽根政権の教訓を活かし、長期的なビジョンを持つ政策が必要とされるのです。
中曽根康弘の時代がもたらした栄光と課題を振り返ることは、未来へのヒントを与えてくれるでしょう。日本半導体産業が再び世界をリードする日を目指し、政策の再構築が進むことを期待したいところです。
【野呂】しかし、僕も武智先生も、世界は『ないものねだりだが、日本がリーダーシップをとってくれればいいのに』と切望していると感じています。
【武智】日本が現在取るべき最善の戦略は、いわゆる『弱者戦略』であると考えます。
これは、米ドル決済を停止する国が増加する中で、日本が米国陣営とBRICS陣営の対立構造を俯瞰し、キャスティングボートとしての強力な影響力を発揮することを意味します。このアプローチは従来のリーダーシップ論とは異なりますが、リーダーシップ論に入る前に、日本の存在感を世界に示す絶好の機会と捉えるべきです。
また、日本は国連協調路線を堅持しています。国連人権高等弁務官事務所がイスラエルの行動を戦争犯罪の可能性があると非難している状況において、日本が『国連を支持します』と表明するだけで、国際社会における日本の立場を明確に示すことができます。
声明文案
2024年10月28日
まだ一応日本国総理大臣の石破茂
イスラエルによる戦争犯罪の疑いに対する日本政府の立場
リーダーシップとは何か?
ここは『人格』という概念を導入すると分かり易くなると思います。人格には、人間個人の人格のほかに、法人格のような人格の捉え方もあります。そして、国家もまた独立した人格とみなすことが可能です。この視点を踏まえると、国際関係におけるリーダーシップを考える際には、『日本国』という人格が、世界の様々な『国人格』を有する国々の中でリーダーシップを発揮できるかを論じることで、従来の議論とは異なる新しい視点が見えてきます。
さらに、リーダーシップを論じる上で重要なのが、『ボス』と『リーダー』の違いです。ボスとリーダーの違いは、単なる肩書きの問題ではなく、その役割や姿勢、そして他者との関係性において顕著に表れます。
ボスとリーダーの違い
支配と共感
・ボスは権威に基づいて命令を下し、支配を通じて成果を求めます。
・一方で、リーダーは共感を通じてチームをまとめ、自発的な行動を引き出します。
目標へのアプローチ
・ボスは『指示』や『目標の押し付け』によってチームを動かします。
・リーダーは『ビジョンの提示』や『方向性の共有』によってメンバーを導きます。
信頼と恐怖
・ボスは『恐怖』を利用して権力を維持することがありますが、これは一時的な効果しか持ちません。
・リーダーは『信頼』を築き、それを基盤にして長期的な協力関係を構築します。
『You're Fired(お前はクビだ)』というセリフは、アメリカのエンターテインメントや文化において、いくつかの有名な人物やコンテクストで広まった背景があります。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)
ドナルド・トランプが司会を務めたリアリティ番組『The Apprentice(アプレンティス)』で、トランプが毎回のエピソードで参加者を脱落させる際に言う決まり文句として『You're Fired』が定着しました。この番組は2004年に放送が開始され、フレーズ自体が彼のパーソナリティやブランドイメージの一部となりました。現在、『You're Fired』と言えば、真っ先にトランプが思い浮かぶほど有名です。
ヴィンス・マクマホン(Vince McMahon)
プロレス団体WWEのCEOであるヴィンス・マクマホンも、このフレーズを頻繁に使用しています。彼が登場するストーリーラインの中で、権力を誇示する象徴的なセリフとして使われ、特にWWEのドラマティックな演出の一環として『You're Fired』を叫ぶシーンはファンに広く知られています。
イーロン・マスク(Elon Musk)
イーロン・マスクについては、このフレーズが直接的に彼の象徴として使われているわけではありません。ただし、彼のTwitter(現X)の買収後に、多数の従業員を解雇したことから、SNS上で冗談的に『You're Fired』と関連付けられることがありました。しかし、これはトランプやマクマホンのように本人が明確に使っているわけではなく、彼の行動に対して外部がこのフレーズを当てはめた形です。
ドナルド・トランプ、ヴィンス・マクマホン、イーロン・マスクの3名を『ボス型』と『リーダー型』で分類する場合、彼らは多くの点で『ボスタイプ』と言える特徴を持っています。ただし、状況や文脈によっては『リーダー型』の要素も見られるため、一概に断言するのは難しい部分もあります。それぞれを詳しく見ていきましょう。
ドナルド・トランプ(Donald Trump)
ボスタイプの特徴
権力の強調:『The Apprentice』での『You're Fired』というフレーズに象徴されるように、指示を出し、従わせるボス的なスタイルが際立っています。
個人主義:自身のブランドイメージやスタイルを全面に押し出し、個性を強調します。
対立的な手法:敵対者や批判者に対して、強硬な態度を取ることが特徴的です。
リーダー型の要素
トランプは特定の支持層(主にブルーカラー労働者層)の不満や期待を巧みに吸収し、大衆を動員する能力に長けています。この点では、彼を『リーダー型』として捉えることも可能です。
つまり、アメリカで『成功している』とされる人物は、エンターテインメント性に優れており、局面に応じて『ボス型』と『リーダー型』を巧みに使い分け、人々をコントロールする能力に長けていると言えます。
このエンターテインメント性の極致とも言えるのが、プロレスというショービジネスです。特に、世界で最もプロレス興行で成功しているWWE(World Wrestling Entertainment)のヴィンス・マクマホンや、イーロン・マスク、ドナルド・トランプは、最高のエンターテイナーであると同時に、優れたビジネスマンであると言えるでしょう。
日本国のリーダーシップとして考えるべきこと
国家という人格を持つ日本が、国際社会で『ボス』ではなく『リーダー』としての役割を果たすためには、次の要素が必要です。
ビジョンの共有
日本の強み(平和外交、技術革新、文化的影響力)を活用し、他国が共感できるビジョンを示すこと。
協調と対話
国連や地域協力の場で、他国の意見を尊重しつつ、方向性を提案する『共感型リーダーシップ』を発揮すること。
信頼の構築
歴史認識や人権問題を含む繊細な課題に対し、透明性と一貫性を持って対応し、国際社会の信頼を得ること。
共感によるリーダーシップ:日本が今こそ最大限に発揮すべき力
国際社会でリーダーシップを発揮するとは、単に強い指導力を示すだけではありません。それは他者に影響を与え、共に歩む力を意味します。この考え方はジョセフ・ナイの提唱する『ソフトパワー』に通じるものであり、現在のグローバルな課題に直面する世界において、これまで以上に大きな意義を持つようになっています。
なぜ今、共感によるリーダーシップが重要なのか?
現代の国際社会は、かつてないほど複雑で多極化しています。気候変動、パンデミック、経済的不平等、紛争といった課題は、一国の力だけで解決することは不可能です。そのため、信頼と共感に基づくリーダーシップがこれまで以上に求められています。
軍事力や経済力だけでは解決できない課題
かつての国際社会では、ハードパワーによる解決が主流でした。しかし、現代では、他国の協力を得るために、文化や価値観、外交政策を通じた『ソフトパワー』が重要になっています。
共感が信頼を構築する
信頼は一夜にして築けるものではありません。共感に基づくリーダーシップは、長期的な関係構築を可能にし、多国間での問題解決の土台となります。
分断の時代への対抗策
現在の世界は、国家間だけでなく、国内の政治や社会においても分断が進んでいます。共感は、分断された世界を繋ぎ直すための鍵です。
日本にとってのチャンス
日本はその文化的な特性と平和憲法に基づく外交スタンスを活かし、支配ではなく共感を基軸としたリーダーシップを追求することで、国際社会で独自の役割を果たすことができます。
文化的ソフトパワー
日本の伝統文化(和の精神、禅、茶道、武道など)や、現代のポップカルチャー(アニメ、ゲーム、映画)は、世界中で受け入れられています。これらを活用し、文化を通じた共感を育むことで、他国との信頼関係を強化できます。
信頼できる調停者として
日本は歴史的に、他国の争いを直接的に煽るのではなく、調停者としての役割を果たしてきました。多国間協力が必要な現在、日本の中立的で平和的な立場は大きな資産です。
国際協力の模範
日本はODA(政府開発援助)や技術支援を通じて、多くの国々に協力してきた実績があります。この協力姿勢をさらに強化し、『共感』を基盤としたリーダーシップを展開することで、世界の課題解決に貢献できます。
共感によるリーダーシップの威力
共感に基づくリーダーシップは、単なる理想論ではありません。それは、他国の信頼を得ることで、長期的かつ安定した国際的な影響力を発揮する実践的なアプローチです。ジョセフ・ナイが提唱したソフトパワー理論は、軍事力や経済力だけでなく、文化や価値観を通じた影響力の重要性を強調しています。そして、この『共感による力』は、現在のように多国間の協力が不可欠な時代にこそ、最大限の威力を発揮します。
日本は、支配や命令ではなく、共感を通じて世界をリードするというユニークなモデルを提示することで、国際社会における存在感をさらに高めることができるでしょう。
今こそ、日本は『共に歩む力』を武器に、国際社会での新たなリーダー像を示すときです。ジョセフ・ナイの理論がその意義を失うどころか、ますます輝きを増す今、日本はその思想を実践する先駆者として活躍できる可能性を秘めています。
武智倫太郎
