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チーズってなんだよ

おれは「街で声をかけられがち」という属性を持っておりまして、怪しいアンケート・宗教勧誘・果物の押し売りなどに遭遇したエピソードなど、枚挙に暇がありません。

この傾向は国境を越え、海外の人にも声をかけられがちということは以前にも言及したところでございます。これはおれの見てくれがたいへん愛らしい玉のような男の子であるために他ならないんですが、なんだかグローバルにナメられているような気にもなるので、街を歩く際はメンタルを少し尖らせ、おれはビーバップハイスクールでいう北高の前川なんだぞという気持ちでいるわけですが、効果のほどはあんまりなのです。


北高の前川。悪そうだろ?

それで、先日も街を前川の感じで歩いていたところ、地方から出てきたと思しき若い男女二人組に声をかけられました。あんまりふざけんなよ、マジに前川なんだぞおれは。要は二人で東京に遊びに来たので記念に写真を撮ってほしいということだったんですが、前川のくせに断れなくて軽率に応じてしまったんです。


それでカメラを構えたわけなんですがね。この時の掛け声が毎々少し気恥ずかしい感じがするんです。つまり言葉を選ばずに申し上げますと普段「はいチーズってなんだよバカなのか?」と思いながらカメラを構えています。なぜ写真を撮る時に乳製品の名前を声高らかに呼びかけないといけないのか、ということです。

このチーズってなんなんだってことなんですが、一説によると、英語圏では"Say Cheese!"(チーズって言って!)と呼びかけているのがルーツだということです。Cheeseの発音はネイティブだと「イー」の口で終わるため、笑顔に見えるという理由らしいです。

ただし、日本では「チーズ」は「ウ」の口で終わるのであまり意味がないという指摘もあるとのこと。そもそも、「はい!チーズ!」なので、海外とは違ってチーズとすら言わせていない、仮に言ってくれたとしても「ウ」の口で終わるし、マジで全く意味を為さない掛け声ということになりますよね。冷静に考えたらだいぶ恥ずかしくない?白昼堂々公衆の面前で急に乳製品の名前を叫ぶんですよ。しかもそこに意味はない。怖。はっきり申し上げると異常者ですよ。「革命!」と叫ぶのとさほど変わらないですからね。むしろそっちは思想が垣間見える分、意図というかやりたいことは伝わるわけですが、チーズに至ってはマジで思想が読めない。「クラスでもおとなしくて普段何を考えてるか分からない奴」って評されるタイプの犯罪者じゃん。この「はい、チーズ」の空虚さたるやですよね。


ただ、日本語にはより実用に即した他の掛け声も用意されています。「1+1は?」なんかが最たる例ですが、これもまた気恥ずかしい。言う立場でもかなり嫌ですが、言われる側の立場に立った時もまた嫌ですよね。急に計算問題が出されるんですよ。おかしくないですか?写真を撮ってもらうだけなのに突然算数の問題が出てくるんですよ。いくらイージーな問題とはいえ急にボールが来たら対応できませんって。「1+1は~~~?」って急に言われたら、そりゃQBKことシュートを外した時の柳沢の顔で写るしかなくなりますって。「に~~~!」って返す余裕ないです。

チーズだの計算問題だの、いずれにしても撮影した後で「あいつチーズの奴じゃん、キッツ~~~~!」みたいな顔をされたらどうしよう、「令和の時代にはいチーズて…」と思われたらどうしようという風に自意識がドライブしてしまい、どうにも掛け声に悩むというのが常でございます。

とはいえ他に良い掛け声も咄嗟に見つからず、結局彼らには蚊の鳴くような声で「はい、チーズ…」と呼びかけ、当然東京の往来の中にあって彼らの耳には届かず、タイミングを計りかねた彼らに、微妙な表情の写真を含む4~5枚の連写を差し上げて別れたわけなんですが。

じゃあ、こういう時なんて掛け声をとるのが正解なのでしょう?

おれ自身、チーズがそんなに得意ではないというのもまたこの気恥ずかしさに拍車をかけているのではないか?とも思っています。どうせ意味のない言葉なのであれば、得意でないものよりも好きな乳製品を叫んだほうが後味は良さそうです。『男はつらいよ』で、御前様が「はいチーズ」というところを「バター」と言って笑いを取る名シーンがありますが、あれなんかはかなりうまいですよね。しかも自然に笑顔を引き出すことにも成功している。これだ。この感じで好きな乳製品を叫べばいいんだ。こんな感じでしょうか。

「はい、ピルクル!」

あっちょっと無理かも。文字に起こしただけで恥ずかしいもん。言われた方もせっかく大好きな恋人と東京まで出てきて旅行を満喫しているところなのにとんだ異常者を捕まえてしまったと思うことでしょう。せっかくの二人の記念写真も苦笑い、そして別れたあとにしばらくおれのことを「ピルクル」と呼んで馬鹿にすることでしょうね。これではいけない。

…という感じで数日様々意識をオーバードライブさせながら考えていった果てに、おれの中で現状のベストの掛け声発表していいすか。発表しますよ。いきますよ、そこに並んでくださいね。はい、じゃあ発表しまーす。


あっこれ動画だった


そんな感じです。

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