花王が「捕水肌」技術を構築|水を引き寄せる新発想の保湿とは

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「補う・保つ」から「引き寄せる」へ — 花王の捕水肌技術
花王株式会社のスキンビューティ第1研究所は、2026年6月19日、周囲の水分を引き寄せて角層水分量を増やす「Water Capturing Skin(ウォーターキャプチャリングスキン:捕水肌)」技術を構築したと発表しました。乾燥は世界共通の肌悩みであり、保湿はスキンケアの最も基本的な機能として長く技術開発が重ねられてきました。しかし「化粧水を塗ってもみずみずしさが続かない」という声は依然として残っています。今回の発表で注目される点は、従来の“水分を補い・保持する”という発想とは異なり、時間の経過とともに角層の水分量が増えていく可能性を示したところにあります。花王はこの現象を、独自の顕微ATR-IR法(減衰全反射赤外分光法、Attenuated Total Reflection Infrared)を用いて確認しています。
着目点は「天然保湿因子の組み合わせ」
角層細胞が水分を保つしくみの中心には、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor, NMF)があります。NMFについてはこれまでも多くの研究がありますが、花王は今回、NMFが単一の物質ではなく複数の物質の組み合わせで機能している点にあらためて着目しました。この“組み合わせ”こそが保水機能を左右しているのではないかと考え、分子構造や物性の観点から保水効果を最大化する比率を検討しています。
NMF由来の複数の物質をさまざまな比率で混合し、空気中で3日間静置したところ、特定の組み合わせかつ特定の混合比において、粉体が液化するほど強い吸湿現象が生じる組成が見つかりました。
粉体が液化するほどの吸湿という現象は、周囲の水分を引き寄せる力の強さを直感的に示しています。花王はこの強い吸湿現象を応用すれば、新たな保湿アプローチが可能になると考え、さらなる検討を進めました。
ヒトの角層で「時間とともに水分が増える」ことを確認
花王は、この現象が実際にヒトの角層でも起こるかを確認する実験を行いました。対象は20〜40代の日本人男女3名で、前腕内側に3種類の水溶液を塗布しています。比較のため、一般的な保湿成分を含む水溶液2種類(比較製剤A・B)も用意されました。
塗布した部位は前腕内側
測定タイミングは塗布直後・3時間後・8時間後の3点
特殊なテープで角層を採取し、ATR-IR分光分析法で測定
指標はタンパク質当たりの水・ポリオール類のOH基の信号強度比(含水比)
比較製剤では塗布後から時間の経過とともに角層水分量が低下したのに対し、水分を引き寄せる組成を含む水溶液では、塗布後にむしろ増加していくことが確認されました。これは、角層が周囲の水分を引き寄せて保持している可能性を示す結果といえます。ただし被験者は3名と少数であり、現時点では基礎研究段階の知見である点には留意が必要です。
バリア成分なしで水分蒸散を抑制
さらに花王は、同じく20〜40代の日本人男女3名を対象に、技術ありの水溶液と、角層のバリア機能を高める成分を含む比較製剤とで、肌からの水分蒸散量(経表皮水分蒸散量、Transepidermal Water Loss, TEWL)を比較しました。塗布前と塗布8時間後のTEWLの変化量を比べたところ、技術あり水溶液はバリア機能を高める成分を含まないにもかかわらず、水分蒸散を抑制していたという結果が得られています。花王は、この技術が空気中の水分を角層に引き寄せると同時に、体内から皮膚を通じて蒸散しようとする水分も角層内部に抱えて逃さないはたらきをする可能性があると考えています。
まとめ — 期待と現時点の位置づけ
今回の発表は、保湿という成熟した領域に対し、NMFの“組み合わせ”という切り口から新しい着眼点を示した点が興味深い動きです。整理すると、注目点は次のとおりです。
NMFを単一成分ではなく組み合わせとして再評価した点
粉体が液化するほどの強い吸湿現象を見いだした点
ヒト角層で時間とともに水分量が増える傾向を確認した点
バリア成分なしでTEWL抑制を確認した点
プレスリリースでは具体的な製品名や配合成分、発売時期には触れられておらず、本技術は製剤開発につながる基礎研究の成果として位置づけられます。被験者数も限られているため、効果の一般化には今後の検証が求められます。それでも「補う・保つ」から「引き寄せる」へと保湿の発想を広げる試みとして、今後の製品応用の行方が注目されます。
参考ソース
周囲の水を引き寄せ、角層細胞の水分量が増加する現象を確認 Water Capturing Skin(捕水肌)技術を構築(花王ニュースリリース)
花王株式会社のプレスリリース(PR TIMES)
