和歌ゲーム|毎週ショートショートnote
帝の御前にて、歌合せが催された。
題は「恋未満」。
勝者には、帝の寵愛が賜られるという噂。
誰もが名を知る女房たちは、紅の衣をなびかせ、華やかな和歌を詠みあげた。
彼女たちの歌は、技巧を凝らした装飾のことば、華麗な比喩に彩られ、帝の目を引こうと競い合った。
殿上人(てんじょうびと)はその巧みさに感嘆の声を漏らした。
末席に控えていたのは、名もなき下級女官。
衣の色も薄く、声もか細く、誰の目にも留まらない存在だった。
だが、静かに筆をとり、震える指で一首を記し、そっと差し出した。
「見つめても 声にはせぬと 知りながら 袖が語りし 思ひをとめぬ」
帝はその歌にだけ、長く視線を落とした。
その夜、女官は静かに召された。
しかし、それきり女官の姿はどこにも見えなくなった。
翌朝、廊の柱に一枚の和紙が貼られていた。
「帝とて 花は摘めども 名を問わぬ あまたの恋が 香にまぎるなり」
勝者の名は記されず、女官は宮中の喧騒の中に香のように消えていった。
(402文字 ルビを除く)
今回参加させていただいたのは、こちらの企画になります。
いいなと思ったら応援しよう!
もしこの記事が少しでも役に立ったり、楽しんでいただけたりしたら、チップをいただけるととても嬉しいです!
いただいたチップは、今後のより良いコンテンツ制作のための書籍代📚とnote購入🗒️、他の方へのチップ代💰に使わせていただきます。
いつも応援ありがとうございます!