おせち風呂|毎週ショートショートnote
古来、日本人は正月を寿ぐ「おせち料理」に一年の福を願ってきた。
しかし、その正体がかつて武術界を震撼させた究極の根性試し「おせち風呂」であった事実は、今や歴史の闇に埋もれている。
この儀式は室町中期、暗殺拳の一派「大正月流」の入門試験として誕生した。
巨大な五段重の漆桶に煮えたぎる油を注ぎ、その中へ入門希望者を放り込むのである。現代の具材は当時の「障害物」の名残だ。
「黒豆」は皮膚を焦がす熱せられた黒鉛の礫であり、「栗きんとん」は全身に絡みつき脱出を阻む沸騰した松脂であった。
特筆すべきは、頭上に鎮座する「鏡餅」である。
これは数百キロの巨石であり、受験者は煮える桶の中で呼吸を整え、これを支え続けねばならなかった。
あの男塾名物「油風呂」でさえ、この「おせち風呂」に比べれば、三段目までの余興に過ぎないと言われている。
今日、我々が重箱の蓋を開ける際、無意識に背筋を正すのは、かつて死を覚悟して桶に挑んだ先人たちの記憶が、DNAを通じて呼び起こされる本能的な畏怖に他ならない。

あとがき
明けましておめでとうございます。
今回の内容、いかがでしたでしょうか。
「おせち風呂」という言葉を聞いた瞬間、私の脳裏に真っ先に浮かんだのは、あろうことか『魁!!男塾』名物の「油風呂」でした。
新春早々、おめでたいはずの頭の中が塾生たちの熱き血潮で満たされてしまったようです。

油風呂は、煮え立つ油の大鍋に入り熱さに耐えるというものです。水面に浮かぶ蝋燭の船が転覆すれば即座に引火し焼死するため、蝋燭の灯が消えるまで動かず耐えなければなりません。
おせちの具材に囲まれてゆったり浸かるどころか、一歩間違えば自分が黒焦げの具材になってしまう……。
そんな過酷すぎるイメージに支配されてしまったわけですが、皆様はぜひ、油ではなく「お湯」の、平和で温かい初湯をお楽しみください。
それでは、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
今回参加させていただいたのは、いつも感謝。
田原さんのこちらの企画になります。
※ご注意:
本記事の内容は創作であり、実在の書籍や史実とは関係ありません。
民明書房は、漫画『魁!!男塾』などで登場する架空の出版社で、当時のパロディ文化を象徴する存在です。
本記事をきっかけに、そのユーモアと背景を知っていただければ幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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