蛸覇体操(たこぱたいそう)|毎週ショートショートnote
江戸後期、摂津国北部の漁村にて広まった奇習「蛸覇体操(たこぱたいそう)」は、当時、行商や漁労に従事する者の腰痛防止策として考案されたと伝えられる。
蛸覇の名は、「蛸のごとく八方に手足を伸ばし、覇を握る」の意に由来する。
その動作は、丸い鉄板を囲み、右手で素早く“返し”、左手で調味を施すという一連の型から成る。特筆すべきは、鉄板上に何も置かなくとも、この型だけを延々と繰り返すことで心肺機能が鍛えられる点である。
文政八年、剣術家・蛸島小太夫はこの体操を門下生に導入し、「一度も敵の刃を受けぬ極意は、蛸覇にあり」と述べた。だが同時代の記録によれば、小太夫は生涯一度も実戦経験がなかった。
明治期には西洋体操と融合し、昭和十一年には国策運動として採用。「蛸覇体操をせぬ者は半生焦げ付き」とする標語まで作られ、学校・職場・冠婚葬祭の場でも広く実施された。
現代においては、その形だけが残り、返す所作だけが黙々と続けられている。
注釈
蛸覇体操の第一動作「返之型(かえしのかた)」は、明治期に柔術の逆手投げと融合し、対人制圧術として警視庁に一時採用された

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