曼殊沙華は恋をする|毎週ショートショートnote
秋の墓地に、ひとりの研究者がやって来た。
人工知能に感情を与える実験の結果を観察するためだ。
対象は、一輪の曼殊沙華。微細な機械を花弁に組み込み、ニューラル回路をもつ花を咲かせたのだ。
数日後、研究者は異変に気づいた。花は、隣の墓石に供えられた菊ばかりを向いている。
「まるで恋をしているようだ」
試しに別の花を置くと、曼殊沙華はすぐそちらに「乗り換えた」。
さらに観察を続けると、どんな花でも傾倒するが、必ずしばらくして萎れてしまう。
菊も、桔梗も、スミレも……曼殊沙華に熱心に見つめられた花は枯れるのだった。
「愛の熱は、命を奪う――」
研究者はそう記録した。
しかしやがて彼は気づく。最近やけに体調が悪く、思考も重い。ふと視線を感じて振り返ると――
そこには、赤く鮮やかな曼殊沙華が。墓の上から、ひたむきに彼を見つめていた。
(354文字)
今回参加させていただいたのは、いつも感謝。
こちらの企画になります。
https://note.com/tarahakani/n/n2e94d782f28d?from=notice
#毎週ショートショートnote
#曼殊沙華は恋をする
#星新一
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