大嘘寺|毎週ショートショートnote
古来、日本人は「確かな真実」よりも「信じたい大嘘」にこそ、心の救いを求める傾向があった。
その極致が、奈良盆地の秘境に存在するとされる「大嘘寺」である。
この寺は、虚華宗という宗派を掲げ、「虚をもって実を照らす」を理念とした。
真実が人を傷つけるなら、嘘で心を守ることこそ慈悲。
これが教えの根幹である。初代住職・方念和尚は、その思想を体現した僧である。
ある若者が「和尚、なぜ頭髪がないのですか?」と尋ねた際、和尚は静かに答えた。
「わしの頭皮は朝になると光合成を始める。髪があると光が遮られ、衆生を救う力が足りぬ。ゆえに剃り、そのエネルギーを福に変えておる」
突飛な嘘に若者は笑ったが、その瞬間、悩みが消えたという。嘘が心を軽くし、人を救う。これこそ虚華宗の真髄であった。
ある日、弟子たちが和尚に不満を漏らした。
「和尚はいつも夜に一人でカリントウを食べて、ずるいではありませんか」
和尚は目を細め、静かに言った。
「カリントウではない。あれは、わしの便じゃ。
わしの便には、世の煩悩が集まっておる。
それを食らうことで、衆生の苦をわしが引き受け、浄化するのじゃ」
弟子たちはしばし沈黙し、やがて深くうなづき、翌日から和尚の棚に隠されている便をありがたく頂戴した。
「嘘も方便」という言葉の語源が、方念和尚の便にあるという説は、今なお文化史研究者の間で根強い。

あとがき
いかがでしたでしょうか。
今回は、お題に「嘘」とありましたので、『民明書房』しかない!
と思い、筆をとりました。
作中に登場した「虚をもって実を照らす」という虚華宗の理念は、まさに事実の裏側から真理(のようなもの)を見つけ出す、民明書房の姿勢そのもののように感じます。
私も一介の虚華宗宗派として、今後も皆様に「まさか」とクスクス笑っていただけるような作品を追求していきたいと思います。
ちなみに、法華宗=日蓮、浄土宗=法然ですからね。
変な風に覚えて、テストで間違えなきように。
また次回作でお会いしましょう!
今回参加させていただいたのは、いつも感謝。
たはらさんのこちらの企画になります。
※ご注意:
本記事の内容は創作であり、実在の書籍や史実とは関係ありません。
民明書房は、漫画『魁!!男塾』などで登場する架空の出版社で、当時のパロディ文化を象徴する存在です。
本記事をきっかけに、そのユーモアと背景を知っていただければ幸いです。

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