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最低二万里|毎週ショートショートnote

きっかけは、塀越しに伸びた桜の枝をめぐる些細な口論だった。

K氏は、隣家のL氏に謝罪状を書いた。
だが改正郵政法では、配送は「最低二万里」、つまり地球一周の五十倍以上を旅しなければ不公平だという。

封筒は巨大な宇宙ポストへ吸い込まれ、月軌道を離れ、火星・木星を周回し、軌道エレベータで戻る最短コースに登録された。
所要十年、料金三百クレジット。
人の往復より安いと局員は胸を張る。

その十年間、地球の人口は再開発で流動し、住所は数字になった。K氏も家を売り、隣家へ越していた。

そして十年後――

銀色のドローンが旧K邸の玄関に降り、慎重に封筒を差し出した。
差出人は自分、宛先は「L氏」。受取人は現在のK氏。

封を切ると走り書きが一行。
「引っ越しました。お隣へ。」

K氏は溜息をつき、封筒を閉じて投函ボタンを押した。
宇宙ポストは再び唸りを上げ、最低二万里の旅費を請求した。
謝罪は、遠い。

(387文字)


今回参加させていただいたのは、いつも感謝。
こちらの企画になります。

#毎週ショートショートnote
#最低二万里

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