お取り替え制度|ショートショート【ノックの音が】
ノックの音がした。
扉を開けると、スーツ姿の男が立っていた。
「失礼します。お取り替え制度の最終確認に参りました」
この国では、配偶者・上司・隣人・友人など、身の回りの人間を年に一度だけ“お取り替え”できる制度がある。ただし、相手も同意しなければ成立しない。
今年、私は妻の交換を申請していた。お互い倦怠期で、口を開けば文句ばかり。交換先は人工知能を搭載した最新型の家事ロボット。文句は言わないし、愚痴も聞いてくれる。
「奥様の同意は得られています。ですが——奥様も、あなたを交換申請されていましてね」
「えっ」
「交換先は、かつてのあなたによく似た“理想的な夫”型ロボットだそうです。笑顔、収入、会話、すべて最適化されています」
私は絶句した。
「では、手続きに入ります」
男が淡々と端末を操作する。妻は黙って立っていたが、目はどこか晴れやかだった。
その日の夕方、家には完璧な家事ロボットと理想の夫ロボットが並んで立っていた。
そして私は、交換者保管センターへ送られた。年に一度の交換祭では、こうした“余剰分”が山のように発生するという。
私のような“不要品”を集めた巨大な倉庫には、どこか懐かしい顔ぶれが揃っていた。かつての上司、旧友、そして——ついさっき、別れたばかりの私の妻。
彼女は、私を見るなり、眉をひそめて言った。
「結局、またあなたと同じ部屋なのね、、」
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