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SMBCモビットの審査は21時で閉じる、夜型が遺伝で決まるなら決済は誰を締め出しているのか

徹夜癖は言い訳になるのか

夜更かしが直らない。直そうとして直らないので、そのうち「体質だから」と言うようになった。だいたい甘えと受け取られる。

本当に体質なのか気になって調べ始めたら、途中から話が決済の方へ逸れていった。逸れた先の方が面白かったので、そちらを書く。

夜型はどこまで遺伝なのか

2019年に発表されたゲノムワイド関連解析は、UK Biobankと23andMeを合わせた69万7828人を対象に、朝型か夜型かという形質に関連する351の遺伝子座を特定している。このうち327は新規の発見だった¹。

遺伝率の推定値には幅がある。双子研究や家族研究では12%から42%²、UK Biobank単独のSNPベース推定では13.7%¹。数字が揺れるのは測り方が違うためで、いずれにせよ「全部が遺伝子のせい」とは言えない。生活習慣や光の浴び方で動く部分は確実にある。

ただし逆向きの結論は動かない。夜型は個人の弛みだけで説明できる現象ではなく、人口の中に一定割合で存在し続ける形質だということ。ここから先は、この前提だけを使う。

深夜の不正発生率が上がる、本当の理由

教師あり学習を用いた不正検知の研究では、不正取引が22時から翌4時(GMT)の時間帯に集中する傾向が報告されている。被害者の大半が眠っている時間であり、かつ銀行側も監視体制を敷いていない時間だからだ³。同じ研究は、夜間の不正取引の件数そのものは日中より少ないとも述べている³。

ここが誤読しやすいところで、深夜に不正が急増しているわけではない。件数はむしろ減る。減り方が違うだけだ。

カード取引全体の時間分布は正午をピークとする山型で、食事時に小さな山ができ、深夜に向けて大きく落ちる⁴。一方で不正の側は、寝ている相手を狙うぶん夜になっても働き続ける。分母だけが先に消えるから、比率としては上がる。

24時間の時間帯別に、正当な取引件数が正午をピークとする山型で深夜に激減する一方、不正発生率は深夜に上昇することを示した模式図。

つまり深夜の高リスクとは「悪い人が増える時間」ではなく「真っ当な人が減る時間」のことだ。

そして先ほどの前提を戻すと、その減った分母の中に、毎晩必ず残っている人たちがいる。体質として夜に動く人間が人口の一定割合で存在する以上、深夜の正当な取引がゼロになることはない。統計から見れば無視できるノイズだが、当人にとってはただの日常である。

カード会社の設計は、むしろ夜型に優しい

ここは擁護しておきたい。

三井住友カードのモニタリングは24時間365日稼働し、利用者ごとの決済傾向や普段使っている国のデータを蓄積したうえで、その傾向に合わない利用を検知する仕組みになっている⁵。絶対時刻で切っているのではなく、その人自身の平常からの乖離を見ている。

この設計であれば、常習的な夜型が午前3時に決済しても、それがその人の平常である限り理屈の上では弾かれない。よく聞く「深夜だから止められた」は、正確には「あなたにしては珍しい時間だから止められた」である。

問題はその先にある。平常が定義できない人はどうなるか。

発行直後のカード、取引履歴の薄い利用者、初めて使うEC加盟店。個人のベースラインが存在しないとき、システムは全体の平均に頼るしかない。そして全体の平均は、朝型の生活で作られている。

信用を積んだ夜型は守られ、これから積む夜型が疑われる。順番として、少し厳しい。

貸金は、疑うより前に閉じている

不正検知が確率の話だとすれば、貸金の方はもっと単純である。時計で閉じている。

カードローンは申込こそ24時間受け付けているが、審査そのものには対応時間がある。SMBCモビットの場合、Webからの申込は原則24時間受け付けている一方で、審査受付は9時から21時まで。21時以降に申し込むと審査が始まるのは翌営業日の9時以降になり、即日融資は受けられない⁶。アイフルの解説でも、審査時間を短くしたいなら午前中など早い時間に申し込むよう明記されている⁷。

これは差別ではなく、単なる運用上の都合だ。審査には人が関わるし、銀行系であれば警察庁への照会も挟まる。夜間に窓口を開けておく合理性はない。

ただ結果として、夜型がもっとも冴えている時間帯に、金融の窓口は開いていない。疑われる以前に、そもそも列に並べない。

深夜2時に決済または申込をした場合の分岐図。カード決済は履歴があれば通り、履歴が薄い場合は全体平均で判定される。カードローンは審査受付が9時から21時のため翌営業日まで待機となる。

時刻は変数である。ただし重みは開示されない

では時刻そのものが、スコアの変数として使われているのか。

不正検知については、使われている。実運用の取引データを用いた研究では、モデルに入力される特徴量の一覧に「時刻(1時から24時)」が明示的に含まれている⁸。加盟店側の分析ツールでも、時間帯ごとの決済傾向を追う機能は標準的に提供されている⁹。時刻が変数であること自体は、特に隠されてもいない。

分からないのは重みの方だ。どの時間帯にどれだけの点数が動くのか、個人の履歴による補正がどこまで打ち消すのか。ここはスコアリングの中身そのものだから開示されない。開示すれば不正利用者に手の内を明かすことになるので、当然ではある。

公式統計にも手がかりはない。日本クレジット協会が公表しているのは四半期ごとの被害額、手口別の内訳、年間の不正利用発生率までで¹⁰、時間帯別の集計は存在しない。日本で「深夜の決済がどう扱われているか」を外から検証する材料は、事実上ない。

結果として、夜型が構造的に不利を被っているかどうかを、当事者が確かめる手段がない。不利かもしれないし、そうでないかもしれない。分からないまま使い続けることになる。

「正常な生活時間帯」という前提

時刻を前提に置いた設計そのものは、統計的には正しい。夜間の不正率は実際に高いし、夜間に審査体制を敷くコストは見合わない。どちらも合理的な判断である。

ただしその合理性は、夜に起きているのが本人の選択だという前提の上に成り立っている。遺伝率が十数パーセントから四割という形質を、どこまで選択と呼べるのか。

金融の設計に悪意はない。悪意がないまま、体質で分かれた少数派に静かにコストが乗る。この構造は与信や不正検知に限った話ではなく、時間帯を前提に置いたあらゆるサービス設計に共通している。24時間営業の是非がコスト効率だけで語られるのも、たぶん同じ根を持っている。

徹夜の言い訳を探して調べ始めたら、言い訳が通らない場所の話になった。今夜もまた遅い。

出典

  1. Jones, S. E. et al. "Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides insights into circadian rhythms" Nature Communications, 2019 https://www.nature.com/articles/s41467-018-08259-7

  2. Lane, J. M. et al. "Genome-wide association analysis identifies novel loci for chronotype in 100,420 individuals from the UK Biobank" Nature Communications, 2016 https://www.nature.com/articles/ncomms10889

  3. "A supervised machine learning algorithm for detecting and predicting fraud in credit card transactions" ScienceDirect, 2023 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2772662223000036

  4. "A Bayesian Simulator for Payment Card Fraud Detection" Finance and Economics Discussion Series, Federal Reserve Board, 2025 https://www.federalreserve.gov/econres/feds/files/2025017pap.pdf

  5. 三井住友カード「クレジットカード不正利用検知システムの仕組みとは?」 https://www.smbc-card.com/nyukai/magazine/knowledge/creditcard_fraud-detection.jsp

  6. みんなのモビット「カードローンは24時間申込や借入が可能?」 https://www.mobit.ne.jp/media/1027/index.html

  7. アイフル「カードローンの審査時間は?審査の流れや短縮させるポイントを解説」 https://www.aiful.co.jp/media/consumer-finance/column-0106.html

  8. "Credit card fraud detection through parenclitic network analysis" arXiv, 2017 https://arxiv.org/pdf/1706.01953

  9. 株式会社YTGATE「2025年クレジットカード不正利用被害額510億円。現状・原因・対策を徹底解説!」 https://ytgate.jp/news/trends/20260317-001/

  10. 一般社団法人日本クレジット協会「クレジット関連統計」 https://www.j-credit.or.jp/information/statistics/index.html

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