問われているのは「やりきる力」ではないか。食料品の消費税0%をめぐって
食料品の消費税0%をめぐる議論を見ながら、私はひとつの違和感を持ちました。
それは、税率そのものの話だけではなく、
「やると言ったことを、どうやりきるのか」
という話でもあるのではないか、ということです。
食料品は、ぜいたく品ではありません。
米、パン、野菜、魚、肉、卵、牛乳。
どれも、毎日の暮らしに欠かせないものです。
だから、食料品の消費税をどうするかという話は、単なる税率の話ではなく、生活の土台をどう支えるかという話だと思います。
「0%は1年、1%は半年」に感じた違和感
報道では、食料品の消費税率を0%にする場合、レジなどの改修に1年程度かかるという見方が出ています。
一方で、1%なら5か月から6か月程度に短縮できるという話もあります。
0%なら1年。
1%なら半年。
正直、私はここに違和感を持ちました。
もちろん、私はシステムの専門家ではありません。
だから、簡単に「すぐできるはずだ」と言い切るつもりはありません。
ただ、生活者として、そして民間企業で実務に関わってきた一人として、どうしても疑問が残ります。
0%にすると、何が具体的に問題になるのか。
1%なら、なぜ早くできるのか。
その差は、どこにあるのか。
「システム改修に時間がかかる」という説明だけでは、まだ十分に伝わってこない気がしました。
システム改修が大変なのは分かる
レジだけを直せば終わり、という話ではないのでしょう。
商品マスタ。
会計処理。
請求書。
返品処理。
在庫管理。
システム連携。
インボイス制度への対応。
実際、現在の軽減税率制度でも、対象品目の売上げや仕入れがある事業者には、税率ごとの区分を追加した請求書の発行や記帳などの区分経理が求められています。
現場には、現場の大変さがあります。
スーパーや小売店だけでなく、会計ソフトを使う企業、請求書を発行する会社、仕入れや売上を管理する現場にも影響が出るはずです。
だから、私は「大変ではない」と言いたいわけではありません。
大変なのは分かる。
でも、大変だからできない、で終わっていいのか。
そこに疑問があります。
本当にシステムだけの問題なのか
今の時代、システムもAIも大きく進化しています。
もちろん、国全体の制度変更は簡単ではありません。
企業ごとに使っているシステムも違います。
古いレジや古い会計ソフトを使っている事業者もあるでしょう。
だから、時間がかかるという説明自体は理解できます。
それでも、0%なら1年、1%なら半年。
この差を聞いた時、私は思いました。
本当にそれは、システムだけの問題なのか。
それとも、やると決める力の問題なのか。
もし本当に1年かかるなら、どこに1年かかるのか。
もし1%なら半年でできるなら、なぜ0%ではできないのか。
そこを、もっと分かりやすく説明してほしいと思います。
それなら、二段階で進める方法はないのか
もし、1%なら半年でできるというのであれば、私はこうも思います。
まずは1%で始める。
そして、その半年後に0%へ移行する。
もちろん、これは簡単な話ではないと思います。
事業者にとっては、制度変更が二回になる負担があります。
レジ、会計、請求書、商品マスタ、価格表示。
現場には大きな手間がかかるでしょう。
それでも、0%を公約として掲げたなら、
「できません」で終わるのではなく、
「どうすれば0%までたどり着けるのか」を考えるべきではないでしょうか。
少しサッカーに例えるなら、
最初から無理なロングボール一本でゴールを狙うだけが戦術ではありません。
中盤でボールをつなぐ。
相手の守備を動かす。
サイドを使う。
そして最後にゴールを決める。
大事なのは、途中のパスではなく、最後にゴールまで持っていくことです。
1%はゴールではなく、0%へ向かう途中のパスかもしれません。
本当に目指すゴールが0%なら、そこまでの戦術を示してほしい。
私は、そこに「やりきる力」が問われていると思います。

民間企業なら、どう動くか
民間企業なら、まず「やるか、やらないか」を決めます。
やると決めたら、工程表を作ります。
責任者を決めます。
期限を決めます。
どのシステムを直すのかを確認します。
どこに負担が出るのかを洗い出します。
いくら費用がかかるのかを見積もります。
もちろん、予定通りにいかないこともあります。
トラブルも出ます。
想定外の問題も起きます。
それでも、やると決めた仕事なら、前に進めます。
完璧な条件がそろうまで待っていたら、仕事はいつまでも始まりません。
一回やってみる。
問題が出たら直す。
足りないところがあれば改善する。
仕事とは、そうやって前に進むものではないでしょうか。
公約は、言った後が大事
選挙で公約として掲げたなら、問題はその後です。
言うだけなら、誰でもできます。
大事なのは、言った後にどう動くかです。
反対すること自体が悪いとは思いません。
財源の問題もあります。
事業者の負担もあります。
システム改修の問題もあります。
消費税については、財務省も消費税収が社会保障財源に充てられていると説明しています。つまり、単純に「下げればいい」だけでは終わらない面があることも分かります。
だからこそ、難しいなら、難しい理由を正面から説明してほしい。
変更するなら、なぜ変更するのかを説明してほしい。
時間がかかるなら、いつまでに何をするのかを示してほしい。
公約は、選挙の時だけの言葉であってほしくありません。
できない理由より、どうすればできるか
私は、食料品の消費税0%が絶対に正しい、と言い切りたいわけではありません。
財源の問題もあります。
社会保障との関係もあります。
現場のシステム改修もあります。
単純に「下げればいい」と言えるほど、簡単な問題ではないのでしょう。
それでも、食料品は毎日の暮らしそのものです。
だからこそ、政治の駆け引きではなく、生活の問題として考えてほしい。
そして、公約として掲げたなら、実行するための道筋を見せてほしい。
できない理由を並べる前に、
どうすればできるかを本気で考える。
これは政治だけの話ではありません。
会社でも、家庭でも、人生でも同じだと思います。
やると言ったなら、どうやってやりきるのか。
できないなら、何ができないのかを説明する。
できる方法があるなら、そこに知恵を絞る。
0%は1年。
1%なら半年。
本当にそれは、システムだけの問題なのでしょうか。
それとも、やると決める力の問題なのでしょうか。
食料品の消費税をめぐる議論を見ながら、私はそんなことを考えました。
