日本のX (旧Twitter)調査で判明した、反ワクチン派に関する5つの意外な事実
はじめに
COVID-19パンデミックを通じて、「反ワクチン」という言葉は日常的な語彙の一部となりました。西欧のヘッドラインが、ワクチン否定論を煽る右派ポピュリズムの姿を描き出す一方で、日本の状況は驚くほど異なり、より複雑な現実を呈しています。その物語は単一の政治思想ではなく、これまで交わることのなかった二つの異なる文化的潮流が、オンラインで衝突し、融合した結果生まれたものだったのです。
この記事では、東京大学などの研究チームが日本のTwitterデータを詳細に分析した学術研究(Journal of Computational Social Science掲載)に基づき、一般的に抱かれているイメージを覆す、反ワクチン派に関する5つの驚くべき実態を解き明かします。

1. 意外な事実1:反ワクチン派は「政治的関心が非常に高い」
調査では、ワクチン関連のツイートをするユーザーのプロフィールを分析した結果、驚くべき特徴が浮かび上がりました。反ワクチン傾向が強いユーザー群(「High group」)は、そうでないユーザー群(「Low group」)に比べて、プロフィールに「政治」「日本」「日本共産党」「原発」「民主主義」といった政治関連の単語を著しく多く使用していたのです。この「High group」とは、調査において、フォローしているアカウントに反ワクチン情報を発信するアカウントの割合が著しく高い(上位25%)と判定されたユーザー層を指します。
対照的に、反ワクチン傾向の弱いユーザーのプロフィールには、主に「ゲーム」「アニメ」「TRPG」「FGO」「ウマ娘」といった趣味の話題が並び、政治的なキーワードはほとんど見られませんでした。
このデータが明らかにするのは、反ワクチンという態度は、単なる情報の誤解から生じるだけでなく、その根底に強い政治的関心を持つ層によって形成されているという、直感に反する重要な事実です。
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2. 意外な事実2:パンデミック以前からの「根強い反ワクチン派」は、実は左派傾向が強い
次に、研究チームは反ワクチン派をさらに二つのグループに分けて分析しました。まず、パンデミック以前の2020年1月から反ワクチン傾向が強く、2021年12月までその姿勢を維持した「根強い反ワクチン派」(HH group)です。
このグループのプロフィールの特徴語を分析したところ、「れいわ(新選組)」「安倍政権」「日本共産党」「反戦」「沖縄」など、左派的な政治政党やイシュー(争点)に関連する言葉が際立って多く見られました。この傾向はデータでも裏付けられており、HHグループの実に44%(「左派」クラスターに31.3%、「左派的イシュー」クラスターに12.7%)が明確に左派系のコミュニティに属していました。彼らが実際に「立憲民主党」「れいわ」「日本共産党」といった左派政党の公式アカウントをフォローする傾向が強いことも確認されています。
アメリカなどでは反ワクチン思想が保守・右派と結びつけて語られがちですが、日本の「根強い」反ワクチン層には、それとは全く異なる政治的背景があるという事実は、大きな驚きと言えるでしょう。しかし、この「根強い反ワクチン派」は、パンデミックが可視化した現象の半分に過ぎません。より注目すべきは、パンデミックの混乱の中で全く新しいタイプの反ワクチン層が誕生したことです。
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3. 意外な事実3:パンデミックで生まれた「新しい反ワクチン派」の入り口は、政治ではなく「スピリチュアルと陰謀論」
パンデミックを境に、新たに反ワクチン傾向を示すようになったユーザー層も存在します。研究では、パンデミック前は反ワクチン傾向が弱かったものの、パンデミック後に強い傾向を示すようになったユーザーを「新しい反ワクチン派」(LH group)と定義しています。
このグループは、根強い反ワクチン派とは対照的に、政治的な関心は低いことが特徴でした。彼らのプロフィールを特徴づけるキーワードは、「集団ストーカー」(特定の個人が集団から組織的に監視・嫌がらせを受けているとする陰謀論)、「テクノロジー犯罪」(電磁波や超音波などを使った組織犯罪を指す陰謀論的な言説)、「柔軟剤」「免疫」「スピリチュアル」「宇宙」「波動」といったものです。このグループの最大の特徴は、その驚異的な均質性です。調査によると、彼らの実に82.7%が「陰謀論/スピリチュアル/自然主義」クラスターに分類されました。
この発見について、研究は重要な結論を次のように示しています。
この研究は、新しい反ワクチン派の出現が主に政治的懸念によって動かされたものではないことを示唆している。むしろ、陰謀論、スピリチュアルな言説、そして健康への既存の関心が、パンデミック中に反ワクチン的な態度を採用するための入り口として機能したのである。
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4. 意外な事実4:新興政党「参政党」は、この「新しい反ワクチン派」の受け皿となった
政治的な支持動向にも、二つのグループの間で明確な違いが見られました。根強い反ワクチン派(HH group)が既存の左派政党と強いつながりを持っていたのに対し、新しい反ワクチン派(LH group)は既存政党への関心が薄い、いわば「政治的に無所属」な層でした。
ここに、新興政党「参政党」が躍進する隙間がありました。反ワクチンを公約に掲げた参政党は、政治的に無関心だった新しい反ワクチン派(LH group)にとって、格好の受け皿となったのです。データは劇的です。LH groupの間で参政党の公式アカウントをフォローする割合は、2022年3月の13%から、国政選挙後の同年9月には24%へと急増しました。これに対し、根強い反ワクチン派(HH group)の支持拡大は限定的で、同期間のフォロー率は約7%から10%への微増に留まりました。
この現象が意味するのは、参政党の巧みさ(あるいは機会主義)です。既存の左派政党に支持基盤を持つHH groupとは異なり、政治的に未開拓だったLH groupの非政治的な不安(健康、スピリチュアル、陰謀論)に直接語りかけることで、参政党は巨大な支持層を急速に獲得したのです。これはオンライン上の感情が、国政レベルでの政治的代表の獲得にまで至った象徴的な事例です。
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5. 意外な事実5:非反ワクチン派の関心は「ゲームとアニメ」
では、ワクチンについてツイートはするものの、反ワクチン傾向が低い人々(Low group)は、何に関心を持っているのでしょうか。
彼らのプロフィールの特徴語は、「ゲーム」「アニメ」「TRPG」「ウマ娘」「FGO」など、趣味や日常生活に関するものが大半を占めていました。このことから、研究は「Twitterを趣味のプラットフォームとして利用している個人は、反ワクチン的な態度を持ちにくい傾向がある」と結論づけています。
この比較が示すのは、反ワクチン言説が、政治やスピリチュアル、陰謀論といった特定の関心を持つコミュニティの中では濃密に広がる一方で、全く異なる関心を持つコミュニティには浸透しにくいという、オンラインにおける情報拡散の明確な「分断構造」です。
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まとめ:オンラインの「うさぎの穴」が政治を動かす
今回の研究が明らかにした最も重要な発見は、日本の反ワクチン派が、一枚岩の集団ではないということです。彼らは、「政治志向の強い左派的な既存層」と、「スピリチュアルや陰謀論を入り口とする非政治的な新規層」という、水と油ほども性質の異なる二つのグループから構成されていました。
この研究は単なるワクチン意識の分析に留まりません。それは、非政治的だったオンラインのサブカルチャーから、いかにして現代の政治運動が生まれうるかを示す、痛烈な実例なのです。もはや「うさぎの穴」は、単に突飛な信念に行き着くだけではありません。それは国政選挙の投票箱、そして国会の議席にまで、一直線につながっているのです。
(NoteBookLMにて作成しました)
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