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SNSネイティブなのに…約4割の高校生がフェイクを見抜けない理由

突然ですが、あなたはこれまでに「信じて誰かに伝えた情報が、実はフェイクニュースだった」という経験がありますか。

スマートフォンで流れてくるニュースを見て、「これは本当のことだ」と思ってしまう。それは決して恥ずかしいことではありません。むしろ、情報に誠実に向き合っている証拠だと思います。でも、その誠実さが、ときに私たちを誤った方向へ引き寄せてしまうことがある。

2026年5月、「YOUTH TIME JAPAN Project(YTJP)」が全国の高校生3,275人を対象にした調査を発表しました。「フェイクニュースを見分ける自信があるか」「情報の真偽を確かめる習慣があるか」——高校生たちの正直な回答が、現代における情報リテラシーの現在地をくっきりと映し出していました。

公認心理師として、また情報と人間の心理の関係を日頃から考えている者として、このデータはとても示唆に富むものでした。今回は、その調査を読み解きながら、「情報と賢く付き合う」ためのヒントを一緒に考えてみたいと思います。



自信がある男子と、「わからない」と答えた女子


この調査でまず目を引かれたのは、男女間の意識の明確な差でした。

「フェイクニュースを見分ける自信はあるか」という問いに対して、男子高校生では「ある」が最も多く37.9%に達しました。一方、女子高校生では「わからない」が最も多く39.8%を占め、「ない」が僅差で2番目に続きました(YOUTH TIME JAPAN Project 高校生調査 #334 、2026年5月、計3,275名)。

この数字を見て、私がまず思い出したのは「自信があること」と「実際に見抜けること」は必ずしもイコールではない、という心理学の視点でした。

「ダニング・クルーガー効果」という概念をご存じでしょうか。実際の能力が低い人ほど、自分の能力を過大評価しやすいという認知バイアスのことです。つまり、「フェイクを見分けられる」という自信が高いほど、逆に警戒心が薄れてリスクが高まる——そういう皮肉な構造が、ここには潜んでいるかもしれません。

これは高校生に限った話ではなく、私たち大人も同じ落とし穴にはまることがある。「自分は大丈夫」と思っているとき、実は最も無防備なのかもしれないと、あるとき気づかされた経験があります。

6割以上が「確かめる習慣がある」という、小さくない希望


一方で、この調査には希望を感じさせるデータもありました。

「ニュースで見た情報が本当かどうか調べることはするか」という問いに対して、男女ともに「たまにしている」が最も多く4割以上を占め、「よくしている」と合わせると、男子63.2%、女子59.7%が何らかの形でファクトチェックをしているという結果でした。

6割を超える高校生が、情報を受け取ったあとに「これは本当なのかな」と立ち止まる習慣を持っている。これは、私が思っていたよりずっと頼もしい数字です。

ただし、「たまにしている」と「よくしている」では、日常的な定着度がまったく異なります。何か引っかかったときだけ調べるのと、情報に触れるたびに自然と「本当かな?」と問いかけられるのでは、フェイクニュースへの耐性はまったく別物になってきます。

「たまにする」を「当たり前にする」へ——そのわずかな差が、情報リテラシーの世界では大きな違いを生むのだと感じています。

なぜ、気をつけているのに騙されてしまうのか


ここで少し、心理学の話をさせてください。

フェイクニュースがなぜこれほど広まるのか。その理由の一つに「感情が認知を上書きする」という現象があります。マサチューセッツ工科大学(MIT)が2018年に学術誌Scienceに発表した研究では、フェイクニュースは正しいニュースよりも速く、広く拡散することが明らかになっています(Vosoughi et al., 2018)。そして、この拡散を担っていたのはボットではなく、人間そのものだったという事実が示されました。

人は、感情を揺さぶる情報ほどシェアしたくなる生き物です。「怖い」「怒り」「驚き」——そういった感情が喚起されると、脳は「これは重要だ、早く伝えなければ」という判断を下しやすくなります。これは、かつて危機を素早く仲間に伝えるために進化してきた、私たちの本能的な反応でもあります。

つまり、「気をつけているのに騙されてしまう」のは、意志が弱いのでも、頭が悪いのでもありません。感情と本能が正直に反応しているだけです。それを自覚することが、情報リテラシーの実はいちばん大事な第一歩だと私は思っています。

高校生だから特別ということではない——でも知っておいてほしいこと


今回の調査は高校生を対象にしたものですが、フェイクニュースへの脆弱性は年齢に関係しません。政府広報オンラインが発表したデータによると、偽・誤情報に気づかない人は実に85%にも上るとされています。つまり、私たちのほとんどが、知らないうちにフェイク情報と接触しているという現実があります。

とはいえ、高校生という時期には特有の心理的な特徴があります。アイデンティティが形成される途中であり、仲間との情報共有が自己表現の一部にもなっている年代です。「これを友達に教えてあげたい」という気持ちが、真偽を確かめるより先に動いてしまいやすい——そういう構造が、特にはたらきやすい時期でもあります。

私が「大切だな」と思うのは、フェイクを見抜く「正解」を教えることよりも、「一度立ち止まる姿勢」を育てることです。

「この情報はどこから来たのか」「誰が、なんのために発信しているのか」「なぜ自分はこれを信じたいと感じているのか」——この3つの問いを持つ習慣は、今日からでも始められます。情報を疑うことは、相手を信じないということではありません。自分の判断を大切にするための、知的な誠実さだと私は思っています。

メディアリテラシーの日に、改めて


6月26日は「メディアリテラシーの日」です。このタイミングで発表されたこの調査は、私にとってとても考えさせられるものでした。

私たちは今、毎日おびただしい量の情報を受け取りながら生きています。そのすべてを精査することは、現実的ではありません。でも、「これはどこから来た情報なのか」「誰が発信していて、なぜ広まっているのか」という問いを持ち続けることは、誰にでも、今日からでも、できることです。

6割以上の高校生が「情報を確かめることがある」と答えた事実は、次の世代への希望です。その姿勢を、私たち大人が一緒に育てていけたら、と感じます。そのためにも、まず私自身が日々の情報との付き合い方を丁寧に見直すこと——この記事を書きながら、そんなことを改めて実感していました。

まとめ


今回の記事でお伝えしたかったことを、3点にまとめておきます。

まず、「フェイクを見抜ける自信がある」こと自体が、必ずしも実際の能力と一致するわけではありません。「ダニング・クルーガー効果」のように、自信があるほど警戒心が薄れやすく、むしろリスクが高まる面があります。

次に、6割を超える高校生が「情報を確かめることがある」というデータは、確かな希望のサインです。大切なのは、「たまにする」を「自然にする」習慣へと育てていくことです。

そして最後に、「どこから来た情報か」「誰が発信しているか」「なぜ自分はこれを信じたいのか」——この3つの問いを持つ習慣こそが、フェイクニュース時代を生き抜くための、最もシンプルで力強い武器になります。

フェイクニュースを完全に避けることは、今の時代ではとても難しい。でも、一度立ち止まる習慣を育てることは、今日からでも始められます。情報と誠実に向き合おうとしているあなたのその姿勢は、すでにとても大切なことです。あなたはもう、その第一歩を踏み出しています。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。今日の記事が、皆さんの明日以降の一歩を考えるきっかけになればうれしく思います。


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