3人に1人が『情報の真偽を確かめたいとは思わない』──2026年最新調査が示すデジタル社会のリアル
あなたは最近、SNSで見た情報をそのまま信じてしまったことはありませんか?
「なんとなく怪しいな」と思いながらも、確かめるのが面倒で、結局スクロールして次の投稿へ。そんな経験、私自身にも正直あります。
医療の現場では、不正確な情報が患者さんの判断を大きく左右することがあります。だからこそ、情報の信頼性について人一倍敏感に向き合ってきました。
今回ご紹介する調査は、2026年に電通総研と日本ファクトチェックセンターが5,000人を対象に実施したものです。数字が示す現実は、なかなか衝撃的でした。ぜひ一緒に読み解いてみてください。
「確かめたいとは思わない」が、最多という現実
社会に広まる情報やニュースの真偽を確認・検証すべき主体として、公的機関、検索エンジン企業、テレビ局などが挙げられた一方、「とくに真偽を確かめたいとは思わない」と答えた人が31.9%にのぼり、これがどの機関よりも多い回答となりました。
これを読んだとき、私は思わず立ち止まりました。
「偽情報はよくない」という認識は多くの人が持っている。でも、実際に確かめようとする人は少ない。これは怠慢でも無関心でもなく、「確かめること自体が難しい」という現実の反映なのだと、私は思います。
医療の世界にも似た問題があります。「ちゃんと検診に行くべきだ」とわかっていても、行動に移せない人はたくさんいる。知識と行動の間には、いつも見えない溝があるのです。
「フィルターバブル」を知っていますか?
あなたはこの言葉を聞いたことがありますか?
フィルターバブルとは、SNSや検索エンジンのアルゴリズムが「あなたが見たいと思う情報」だけを選んで表示し続けることで、まるで情報の泡(バブル)の中に閉じ込められていくような現象のことです。
調査によれば、「フィルターバブル」を概念として理解している人はわずか6.8%、「エコーチェンバー」に至っては8.6%にとどまり、いずれも1割を下回る結果でした。
エコーチェンバーは、自分と似た意見だけが反響し合う閉じた空間のこと。気づかないうちに私たちは、自分に心地よい情報だけを浴び続けているわけです。
映画『マトリックス』に登場するモーフィアスの言葉を思い出します。「何が現実かを知ることが大切なのではない。現実だと信じているものが何かを知ることが重要だ」と(意訳)。デジタル空間で私たちが「現実」と信じているものは、本当に現実でしょうか?
責任は誰にある?という問いのむずかしさ
調査では、安心できるデジタル空間を誰が担うべきかという問いに対し、公的機関(33.5%)、マスメディア(30.4%)、デジタルプラットフォーマー(28.1%)が挙げられましたが、「わからない・あてはまるものはない」が35.7%で最多となり、社会的な合意が形成されていないことが浮き彫りになりました。
正直に言うと、これは当然の結果だと私は感じています。
情報の問題は、特定の誰かが悪いというシンプルな構造をしていません。プラットフォームの設計、ユーザーの心理、アルゴリズムの特性、政治的な思惑、これらが複雑に絡み合っているのです。だからこそ、「誰が担うべきか」という問いに答えを出せない人が多いのは、むしろ正直な反応とも言えます。
生成AIによる偽情報の拡散防止については、作成者以外の責任として「情報を拡散したユーザー」が35.1%と最多で、プラットフォーム(27.2%)、生成AI提供企業(25.5%)と続きました。一方で、68.6%が「利用者自らが正しい情報を見極める力を養うべき」と回答しています。
誰かに任せながら、同時に「自分でも学ばなければ」と感じている。この複雑な気持ち、あなたも心当たりはありませんか?
公認心理師として感じること
私は普段、カウンセリング業務は行っていませんが、公認心理師の資格を持つ医療関係者として、人の認知や行動変容について学んできました。その立場から言わせてもらうと、情報リテラシーの問題は「知識の不足」よりも「認知の歪み」に起因していることが多いと感じます。
私たちの脳は本来、「確認する」より「信じる」ほうがずっと楽なのです。認知的負荷を下げるために、脳は都合の良い情報をそのまま受け入れようとします。これは怠け者だからではなく、エネルギーを節約するための合理的な設計です。
だからこそ、「確かめましょう」とただ呼びかけるだけでは限界があります。構造を変えること、つまり社会のしくみや教育の設計を変えていくことが本質的な解決につながる、と私は考えています。
では、今の私たちにできることは何か
調査では、情報を適切に活用できる能力は「学校教育で教えるべき」との回答が62.3%、「家庭で学ぶべき」が50.7%にのぼり、教育の場での取り組みへの期待が過半数を占めていました。
その通りだと思います。でも、今すでに大人である私たちは、学校に戻ることはできません。では何ができるのか。私が実践している3つのことをお伝えします。
一つ目は、「違和感を無視しない」こと。 「なんか変だな」「これ本当かな」と感じた瞬間を、スクロールで流さないことです。その小さな引っかかりが、実は大切なシグナルです。
二つ目は、「一次情報に当たるクセをつける」こと。 誰かがまとめた記事ではなく、元の調査や発表に直接アクセスする習慣です。今回ご紹介した電通総研の調査も、プレスリリースという一次情報を確認しています。
三つ目は、「自分の見ている世界が偏っているかもしれない」と意識すること。 これは謙虚さの問題ではなく、認知の構造を知った上での、現実的な姿勢です。
完璧に偽情報を見抜くことは、誰にもできません。でも、少しだけ立ち止まる習慣は、誰にでも始められます。
まとめ
今回の調査が私たちに突きつけているのは、「知っていても動けない」という人間の本質的な課題です。
整理すると、現代の情報空間における課題はこの3点に集約されます。まず、情報の真偽を確かめたいと思わない人が3割以上いること。次に、フィルターバブルやエコーチェンバーといった概念の理解が1割未満にとどまっていること。そして、学びの必要性は感じていても、実際の行動との間に溝があること。
調査の総括として、偽情報がまん延しやすい仕組みへの理解が乏しく、情報を見極める力を養うことへの意識は高い一方で、実際の行動との間には依然として隔たりがある、とまとめられています。
この現実を知った上で、それでも私たちは前を向くことができる。なぜなら、あなたが今この記事を最後まで読んでくれたということは、「ちゃんと考えたい」という意志の表れだからです。
情報の海を泳ぐ力は、一日では身につきません。でも今日、一つの問いを持ったあなたは、確実に昨日より賢くなっています。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございます。今日の記事が、皆さんの明日以降の一歩を考えるきっかけになればうれしく思います。
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