見出し画像

40代以上のあなたへ―SNS詐欺師が狙う心理の隙間と自衛策

最近、親しい友人から「SNSで知り合った人に投資を勧められているんだけど…」という相談を受けました。

その瞬間、背筋が凍りました。これは典型的なSNS型投資詐欺の手口だからです。

2024年、日本ではSNSを悪用した詐欺被害が急増し、1万件を超える事案で約1,272億円もの被害が発生しています。しかも被害者の中心は40〜60代。つまり、あなたやあなたの大切な家族が、今この瞬間も狙われているということです。

公認心理師として、私はこの数字の背後にある一人ひとりの痛みと、犯罪者たちの巧妙な心理操作に深い懸念を抱いています。

でも、知識は力です。手口を知れば、防げます。今日は警察白書の最新データをもとに、あなたと大切な人を守るための知恵をお伝えします。



「信頼」を武器にする犯罪者たち―SNS詐欺の3つの罠

まずお伝えしたいのは、これは「意志が弱いから騙される」という話ではない、ということです。

犯罪者たちは、まるで熟練のカウンセラーのように、人間の心理を巧みに操ります。彼らが仕掛ける罠は、大きく分けて3つあります。

1つ目は「時間をかけた信頼構築」です。

SNS型投資詐欺ロマンス詐欺では、犯人は最初から詐欺だと気づかれないよう、何週間、時には何ヶ月もかけて被害者との関係を深めていきます。

毎日優しいメッセージを送り、相談に乗り、恋愛感情や親近感を育てる。そして、信頼関係が十分に構築されたと判断した時点で、投資話を持ちかけるのです。

これは心理学でいう「フット・イン・ザ・ドア」という手法です。小さな要求から始めて、徐々に大きな要求を通していく。まるで、ドアに足を少しずつ入れていくように。

しかも、実際の投資では最初は少額の利益を出させることで、「本当に儲かる」と信じ込ませる手口も使われます。これは「サンクコスト効果」を狙ったもので、すでに投資した金額が無駄になることを恐れる心理を利用しているのです。

2つ目は「高度な匿名化技術」です。

これが最も厄介な点です。犯罪グループは、匿名性の高い通信アプリを使い、メッセージが自動的に消去される仕組みを活用しています。

まるで、足跡を消しながら歩いていくようなものです。警察が追跡しようとしても、証拠が残っていないのです。

さらに、首謀者や指示役は海外に所在することが多く、SNSを通じて実行犯を募集する「匿名・流動型犯罪グループ」という新しい形態の犯罪組織が台頭しています。これはまるで、実体のない幽霊のような組織です。メンバーは緩やかにつながり、末端の実行者は使い捨てにされます。

3つ目は「あなたの弱さではなく、人間らしさにつけ込む手口」です。

私がここで強調したいのは、被害に遭うことは恥ずかしいことではない、ということです。

人を信じる気持ち、より良い未来を求める気持ち、誰かとつながりたいという気持ち―これらは全て、人間として当然の、そして美しい感情です。

犯罪者たちは、そうした人間らしさを武器として利用しているのです。

実際、被害者の年齢層を見ると、男女ともに40〜60代が最も多く、1件あたりの平均被害額は1,200万円を超えています。これは、ある程度の資産を持ち、人生経験も豊富な方々が狙われているということです。

つまり、「自分はしっかりしているから大丈夫」と思っている人ほど、実は危険なのです。


「楽で、簡単、高収入」という甘い罠―闇バイトの真実

次に、特に若い世代に広がっている「闇バイト」についてお話しします。

SNSや求人サイトで「高額」「即日即金」「ホワイト案件」といった魅力的な言葉が並んでいるのを見たことはありませんか?

これらは全て、犯罪実行者を募集する罠です。

応募すると何が起こるのか?

まず、匿名性の高いアプリに誘導され、運転免許証や顔写真といった個人情報の送信を求められます。これが、逃げられない仕組みの第一歩です。

犯罪グループは、この情報を握ることで「逃げたら家族に危害を加える」「個人情報をばらまく」と脅迫し、応募者を犯罪に加担させていきます。

しかも、約束された報酬が支払われないケースも多く、被害者は犯罪者であると同時に、搾取される被害者でもあるのです。

2024年8月以降、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県で相次いで発生した強盗事件では、まさにこの手口が使われました。犯人たちは「バールで店のショーケースを壊して宝石を奪う」という凶悪な犯罪に加担させられ、実行犯の多くは検挙されています。

高校生でも巻き込まれる現実

さらに深刻なのは、若年層への広がりです。

熊本県警察では、2024年10月に高校生が闇バイトに応募しようとした事案が発生しました。幸い、その生徒は実行前に不安を感じて警察に相談したため、犯罪者にならずに済みました。

しかし、これは氷山の一角です。警察では、このような事案を受けて、県内全ての全日制高等学校で緊急の非行防止教室を実施しました。

私が強調したいのは、「判断力が未熟だから」ではなく、「将来への不安や経済的なプレッシャー」が、若者たちを犯罪に駆り立てているという現実です。

これは社会全体の問題であり、私たち大人が若者たちを守る責任があります。

希望の光―警察の取り組みと、あなたができる3つのこと


ここまで読んで、不安になった方もいるかもしれません。でも、希望はあります。

警察は、様々な先進技術を活用して対策を強化しています。

例えば、AIを活用してSNS上の犯罪実行者募集情報を自動的に検出し、投稿者に直接警告する取り組みが始まっています。これにより、2024年には約1万4,000件の犯罪実行者募集情報が対処されました。

また、デジタルフォレンジックという技術を使って、破損したスマートフォンからでも証拠を抽出し、犯人を追跡しています。実際、水没や焼損したスマートフォンからでもデータを復元し、事件解決につながったケースがあります。

さらに、インターネット・ホットラインセンターでは、一般の方からの通報を受け付け、違法情報の削除依頼を行っています。令和6年には約6万7,000件の違法情報が分析され、約2,000件が削除されました。

では、あなたができることは何でしょうか?


私からの提案は、シンプルに3つです。

1つ目:「楽で、簡単、高収入」という誘いには、まず疑う心を持つこと。

これは冷笑的になるということではありません。健全な懐疑心です。もし本当に良い話なら、なぜSNSで不特定多数に募集する必要があるのか?と一度立ち止まってみてください。

2つ目:SNSで知り合った相手に、個人情報や金銭を渡す前に、必ず第三者に相談すること。

家族、友人、そして警察。相談することは恥ずかしいことではありません。むしろ、それが賢明な判断です。

警察では「#9110」という相談専用ダイヤルを設けており、24時間対応しています。「少しでも不安に感じたら」「これって怪しいかも」と思った瞬間が、相談のタイミングです。

実際、2024年の闇バイト対策では、警察庁がSNSや動画配信サイトを通じて「警察に相談に来てくれれば必ず保護する」という呼びかけを行いました。その結果、2025年4月末までに345件の相談があり、相談者やその家族が保護されました。

これは、「相談すれば守られる」という明確な証拠です。

3つ目:若い世代と対話する機会を持つこと。

もしあなたに子どもや孫、甥や姪がいるなら、ぜひこの話題を共有してください。「楽で高収入のバイトに応募したことある?」「SNSで知らない人からメッセージが来たらどうする?」といった、さりげない会話が、彼らを犯罪から守るかもしれません。

そして、もし彼らが悩んでいたら、「一緒に警察に相談しよう」と提案してください。若者たちは、一人で抱え込んでしまいがちです。でも、信頼できる大人が隣にいれば、正しい選択ができます。

結び:あなたの中にある力を信じて


最後に、私が心理師として一番伝えたいことをお話しします。

犯罪者たちは、あなたの「意志の弱さ」ではなく、「人間らしさ」を狙っています。人を信じる心、より良い未来を求める気持ち、誰かとつながりたいという願い―これらは全て、あなたの強さであり、美しさです。

だから、もし万が一被害に遭ってしまっても、自分を責めないでください。

そして、今この瞬間から、あなたにはこの知識という「盾」があります。

SNS詐欺も、闇バイトも、知れば防げます。そして、あなたが得たこの知識を、大切な人にも伝えてください。

あなたの一言が、誰かの人生を守るかもしれません。

私たち一人ひとりが、互いに支え合い、声をかけ合うこと。それが、この見えない敵に立ち向かう最強の武器です。

あなたは、変化を起こせます。今日から、一歩を踏み出しましょう。


#SNS詐欺対策 #闇バイトの真実 #家族を守る知識 #心理師が解説 #警察白書2025

いいなと思ったら応援しよう!

AIでエビデンスを探る_公認心理師 よろしければ応援お願いします。いただいたチップは、執筆のための書籍購入や、AIのために使わせていただきます。