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なぜ医療者と一般の方で、こんなにも見える世界が違うのか?

コロナ禍の医療現場。50代の患者さんが次々と命を落としていく光景を、あなたは想像できますか?私たち医療従事者が見てきた世界と、一般の方が経験された世界は、まるで別の惑星のように違っていました。家に帰れば家族にうつさないようタオルを分け、病院に泊まり込む医師もいた。そんな緊張の日々の中で登場したワクチン。SNSでは激しい論争が繰り広げられ、正直、精神的に参ってしまいそうでした。「何が本当なのか」自分自身も揺れ動きながら、それでも私がワクチン擁護の立場を取り続けるのはなぜか。ファクトチェックを続けてわかった「科学的思考」の本質と、対立ではなく対話を選ぶ理由を、現場の生々しい経験とともにお伝えします。

別世界で生きていた、医療者と一般の方

コロナが流行していた期間、私たち医療関係者と一般の方は、本当に別の世界で生きていました。

私たちが毎日見ていたのは、50代の方が簡単に命を落としていく世界です。特にデルタ株が猛威を振るっていた頃、感染経路も完全には解明されておらず、重症化しやすいという特徴もあって、医療現場は緊張の連続でした。

家に帰った後も気が抜けませんでした。家族にうつさないように、できるだけ接触を避け、タオルは家族と別にして、紙タオルを使う日々。同僚の中には、家に帰らず病院に泊まり込む医師もいたと聞いています。

病院の中と外。医療者と一般の方。私たちの生活は、まるで異世界のように違っていたんです。

ワクチンが登場して、現場が変わった

そんな中、ワクチンが開発されました。

最初に60歳以上の方への接種が進みました。同時に社会活動も制限されていたので、どちらの効果かははっきりとは言えません。でも、現場で実感したことがあります。その当時は、

60歳以上で新型コロナ感染症で入院される方が、ほとんどいなくなったんです。

一方で、ワクチンが打てない、社会活動をする中では最も年齢が高い50代の方が、相変わらず命を落としていく。その対比を目の当たりにして、「やはりワクチンが効いているのかもしれない」と感じました。

その後、オミクロン株以降は全体的に軽症化していきました。ワクチンの感染予防効果は確かに落ちてきましたが、重症化を抑制する効果は認められていました。

SNSで話題になる「ターボ癌」なんて、私は一度も見たことがありません。ワクチンで命を落とした人も、少なくとも私の現場では見ていません。

でも、それは「科学」じゃない


ただし、ここで大事なことを言わせてください。

これは、あくまで「私一人の経験」です。科学ではありません。

真実にできるだけ近づくためには、個人の経験だけでは不十分で、統計調査が必要になるわけです。その調査結果、研究結果はピンキリで、やはり信頼の置ける研究を優先すべきです。中には背景が怪しい論文もあります。信頼の置ける論文を読むと、現時点では、ワクチンは重症化抑制には有効との結論が優勢です。

科学の世界では、白黒がはっきりつけられることは、実は少ないんです。あいまいなことが多い。だからこそ、検証と更新を繰り返しながら、少しずつ真実に近づいていく。それが科学の本質だと思っています。

SNSの対立構造に、心が折れそうになった


正直に言います。SNSで吹き荒れるワクチン論争を見ていると、精神を病みそうでした。

医師対議員の炎上もありました。懐疑派の方の意見は、SNSのフィルターバブルによって増幅され、毎日のように目に入ってきます。

私は、どちらが良い、悪いとは思っていません。私たち医療者が常識と考えていることと、懐疑論の方の考えには大きな開きがあって、私自身、何が正しいのか揺れ動くことも多いんです。

だからこそ、自分自身でファクトチェックをするようになりました。

ファクトチェックで見えてきたもの


ファクトチェックを続けてわかったこと。

少なくとも、アンチワクチンで煽っている方の投稿には、一部の真実を含むものの、その他のほとんどが誇張、チェリーピッキング(都合の良いデータだけを抜き出すこと)などで、信頼に足るものではありませんでした。

陰謀論やアンチワクチンの考え方は、科学の「グレーゾーン」を白黒の二元論にして、分かりやすくしてしまいます。それが多くの人に受け入れられる原因になっているのでしょう。

でも、世の中は白黒ではなく、グレーなことが多いのです。

これからも、考え続ける

だから、私は今後もファクトチェックを続けていきます。

そして、もし自分が間違っていたら、考えを変更する覚悟もあります。科学とは、常に検証と更新のプロセスの中で発展してきているものですから。現時点での常識は、将来覆されることも十分に考えられます。

いろいろな意見があって当然だと思います。でも、対立にはしたくありません。

一緒に、現時点での「正しいと思われること」を探していきませんか?

医療現場で見てきたこと、感じてきたこと、そして科学的に検証してきたこと。それらを共有することで、少しでも建設的な対話ができたらと思っています。

完璧な答えなんて、誰も持っていません。でも、誠実に向き合い続けることはできる。私はそう信じています。

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