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スタンフォード大学SHEG提唱の「横読み:ラテラル・リーディング」とは?SNS時代に必要な情報の見極め術

SHEG(スタンフォード歴史教育グループ)と「横読み」誕生の背景

スタンフォード大学の歴史教育グループ(SHEG: Stanford History Education Group)は、学生や一般の人々がインターネット上の情報をどう評価しているかを研究してきました。彼らの調査で明らかになったのは、いわゆるデジタル世代と言われる若者であっても、オンライン情報の真偽を見抜くのが非常に苦手だということです。例えば米国の高校生3,446人を対象にしたある研究では、98%以上の生徒が気候変動に関する偽装サイトを信用してしまい、本当は化石燃料業界と繋がった偽情報サイトだと見抜けた生徒は2%未満しかいませんでした[1]。一部の鋭い生徒だけが、そのサイトを一旦離れて別の情報源で調べ合わせるという行動を取り、正しくサイトの信頼性を判断できたのです[1]

では、専門家はどうしているのでしょうか。SHEGの研究者サム・ワインバーグ氏らがプロのファクトチェック担当者(事実確認の専門家)を観察したところ、彼らは情報の真偽を判断する際に記事を隅から隅まで読むのではなく、別のサイトでその情報源を調べるという読み方をしていることが分かりました[2][3]。この手法は後に「ラテラル・リーディング(横読み)」と名付けられ、SHEGはそれを核とした教育カリキュラム「Civic Online Reasoning(市民のためのオンライン推論)」を2019年に開発しました[4]。背景には、SNSやブログなど誰もが情報発信できる時代において、従来の読み方では偽情報を見抜けないケースが多いという問題意識がありました。


「ラテラル・リーディング」と「バーティカル・リーディング」の違い

ラテラル・リーディング(横読み)」とは、あるウェブページに出会った際に、そのページ内だけで判断せずに、一度ページから離れて他のサイトで情報源を調べる読み取り方を指します[5]。具体的には、ブラウザで新しいタブを開き、その記事を書いた人物や運営組織の名前を検索したり、第三者の評価や関連情報を探したりします。こうすることで「その情報源について他のサイトは何と言っているか?」を確認し、情報の信頼性を外側から評価します[5]

一方、従来型の読み方は「バーティカル・リーディング(縦読み)」と呼ばれます。これは文字通り記事を上から下まで順番に読み込み、記事内部の手がかりだけで判断しようとする方法です[6]。例えば記事のデザインや体裁、ドメイン名(「.edu」や「.gov」なら公的機関だから信用できるかも…といった判断)、サイト内の「About(このサイトについて)」ページの説明などを頼りに信頼性を評価するやり方です[7]。学校教育では長年、テキストを丁寧に読み込み内容を理解して判断する姿勢が重視されてきました。そのため多くの人はウェブ上でもまず縦読みしてしまいがちですが、インターネット上ではこの「縦読み」戦略が裏目に出ることがあります[8]。ウェブサイトは自分に都合の悪いことは書かないものですし、見た目を立派に装うことで読者を信用させようとする場合もあるからです[9]

横読みと縦読みの違いをまとめると、縦読みは「情報源が自分で語ること」を鵜呑みにするのに対し、横読みは「情報源について他者が語ること」を確認する点にあります[5]。プロのファクトチェッカーはまさにこの横読みを駆使しており、最初に情報源の評判や背景を調べ上げてからでないと本文を深く読み込みません[10]。逆に縦読みだけでは、サイト自身が主張する「我こそは信頼できる」という自己申告をそのまま信じてしまう危険があるわけです。

SNS時代になぜ「横読み」が必要なのか

現代はSNSやブログ、動画サイトなどを通じて真偽不明な情報が爆発的なスピードで拡散する時代です。誰もが発信者になれる便利さの裏で、広告主やロビイスト、陰謀論者、場合によっては外国政府までもが、巧みに人々の注意を引いて信じ込ませようとする情報を流しています[8]。こうした偽情報・誤情報の洪水の中では、伝統的な読み方で一つ一つの情報にじっくり目を通していては対処しきれません。むしろ重要なのは「これはおかしいぞ」と感じたら一旦立ち止まって別の視点から調べること、場合によってはその情報をスルー(無視)する決断力さえ必要だと指摘されています[11]。ワインバーグ氏はこれを「批判的思考と同じくらい重要な批判的な『無視力』だ」と表現しています[8]


例えばSNSで見かけた怪しい情報に直面したら、一呼吸おいて他の信頼できる情報源で裏付けを取る習慣が大切です。 ネット上では、見た目がそれらしく専門用語が並んでいるだけで人は信じてしまいがちです。実際、大学教授や専門家であっても、巧みに作られたウェブサイトに騙される例が後を絶ちません[3]。特定の企業や団体が中立を装って作った宣伝サイトも数多く存在し、一見すると有益な非営利サイトに見えても、実は裏でスポンサーの意向を反映した内容が載っているケースもあります[12]。例えば「.org」のドメインだからといって安心はできません。スタンフォード大学の研究者は、ILSI(国際生命科学研究所)というサイトを例に挙げています。このサイトは「健康増進のための科学提供が使命の非営利組織」と謳っていますが、数秒検索すれば巨大食品企業がバックについており、規制緩和のロビー活動に利用されてきた団体だと分かります[12]。つまり、表面的な印象や自己申告をうのみにせず、外部の情報で裏取りする横読みが、フェイクニュースに惑わされないために不可欠なのです。

さらにSNSではアルゴリズムによって刺激的な情報ほど拡散しやすく設計されています。嘘か本当か検証される前に大量の人の目に触れてしまうため、私たち一人一人が「まず疑って調べる」リテラシーを持つ必要があります。SHEGのジョエル・ブレイクストーン氏は「現代のあらゆる社会問題に関するウェブサイトの中には、一見客観的な情報提供を装いながら実は企業などの利害が隠れているものが山ほどある。これは学生に限らず私たち全員が陥り得る罠だ」と警鐘を鳴らしています[13]。だからこそ、SNS時代を生きる私たちに横読みの習慣が求められているのです。

「横読み」の具体的な手順とコツ(実例付き)

それでは実際に「横読み」はどうやるのでしょうか。基本的な手順をステップごとに見てみましょう。

  1. まず別タブで情報源を検索する: ある記事や投稿を見つけたら、すぐには全文を読まずに、新しいブラウザタブ(またはウィンドウ)を開き、その記事の発信元について調べます[6]。例えばサイト名や記事の著者名、組織名でGoogle検索し、Wikipediaやニュース記事がヒットすれば目を通します。「〇〇とはどんな団体か」「誰が書いた記事か」を外部情報から把握することが目的です。

  2. 発信者の背景や信頼性をチェックする: 検索結果やWikipediaを読み、記事の著者の経歴・専門性や、運営組織のミッション、資金源、評判などを確認します[14]。ここで注目したいのは、発信者に特定の利害関係や偏り(バイアス)がないかという点です[14]。例えば運営団体のスポンサーや出資者を調べると、その情報発信の動機が見えてくることがあります。また、記事内で引用されている情報源についても、その出典が信頼できるものかをチェックします[14]

  3. 他の情報源と照らし合わせて検証する: 続いて、その記事の主張やテーマについて他の信頼できる情報源ではどう報じられているかを調べます[15]。具体的には、大手のニュースメディアや専門家の発言、政府・公的機関の発表などを探してみます。同じ話題について複数の独立した情報源が一致していれば信頼度は上がりますし、もしその記事だけが奇抜な主張をしているなら要注意です。ファクトチェック専門のサイトやGoogleの「Fact Check Explorer」などのツールを使って、その内容が既に検証済みでないか探すのも有効です[16][17]

  4. 読む価値があるか見極めてから本文を読む: 横読みで集めた外部情報を総合して、その元の記事にどの程度の信頼がおけるか判断します。信頼できそうだと分かって初めて、元の記事本文を最初からじっくり読んでみましょう[10]。逆に信頼性が低いと判明した場合は、その記事に深入りしすぎないことも大切です[10]。時間は有限ですから、価値のない情報に貴重な注意力を奪われるのを防ぐのも情報リテラシーの一つのスキルです[18]

例として、先ほど触れた気候変動の偽装サイト(CO2 Science)のケースを考えてみましょう。このサイトは一見すると科学的データが豊富で信用できそうに見えました。しかし横読みの手順で、そのサイトを運営する非営利団体名を検索してみると、すぐに「実は石油企業が資金提供しており、人々を欺く目的で運営されている」との情報が出てきます[19]。実際にある生徒はUSAトゥデイの記事を見つけ、「この団体に石油企業X社が協賛している」と突き止めました[19]。このように他の信頼できる媒体での評価を探すことで、サイトの真の姿が浮き彫りになるのです。横読みを駆使すれば、「権威ありげなグラフや専門用語に惑わされて騙される」というリスクを大幅に下げることができます。

最後にコツとして、検索エンジンを使う際の「クリック抑制」も意識してみましょう。いきなり検索結果の一番上に出てきたページ(往々にして元のサイト自身か、その関連サイトである場合が多い)をクリックするのではなく、まず結果一覧をざっと眺めてどの情報源が信頼できそうか判断します[20]。Wikipediaや主要メディア、大学・政府機関のサイトなどを優先し、不審なまとめサイトなどは飛ばす、といった具合です。こうしたリテラシーを活用すれば、限られた時間でも効率よく情報の真偽を見極められるでしょう[21]

情報リテラシー教育や社会生活での活用例

横読みは誰もが今日から実践できる手法ですが、特に教育現場でその効果が注目されています。SHEGの研究によれば、高校の授業でこの横読みスキルを含むデジタルリテラシーのレッスンをたった6コマ(計5〜6時間)実施しただけで、生徒が怪しいウェブサイトを見抜ける割合が2倍以上に向上したという結果が出ています[4][22]。わずかな指導であっても、生徒たちは「ウェブ情報を縦に読むだけでは危ない」という感覚を身につけ、検索結果を批判的にざっと評価したり、質の低いサイトを無視したりする術を学んだのです[23][24]。これは「デジタルネイティブだから放っておいてもネット情報を見極められるだろう」という大人の思い込みを覆す成果と言えます。実際には教えれば身につくスキルであり、カリキュラムに組み込むことで若者の情報判断力を高められる可能性が示されました。

学校教育では、社会科や総合学習の時間などでニュースの読み比べや調べ学習を行う際に、横読みの手法を取り入れるケースが増えてきています[25]。教師や学校司書が「インターネットで情報を調べるときには、一つのサイトで鵜呑みにせず必ず『背後に誰がいるか』『他の情報源は何と言っているか』『根拠のデータは何か』をチェックしよう」と指導し、実際に生徒のスマホやパソコンでそれをやらせてみる授業実践も報告されています[25]。短い動画教材を見せて横読みの重要性を解説し、その後の授業で生徒が自主的に別タブ検索をするようになったという大学の事例もあります[26]。このように「まず横読みしてみよう」と促すだけでも、学生の行動に変化が現れることが確認されています。

社会人にとっても横読みは日常生活で役立つスキルです。たとえば仕事で調べものをするとき、ネット上の業界データやニュース記事を参考にする場面があります。その際に、情報源の企業や発信者の背景をさっと横読みでチェックすれば、偏った宣伝資料に惑わされずにより客観的な情報にたどり着きやすくなります。健康や金融など重要な判断に関わる情報についても、SNSで見かけた断片的な投稿をうのみにせず、厚生労働省や金融庁など公的機関の発表や専門家の解説記事を探す「横読み思考」が安全策となるでしょう。家族や同僚から回ってきたチェーンメールや怪しいニュースも、「本当かな?」と感じたら是非一度検索してみてください。信頼できる情報筋が何も言及していなかったり、過去にデマだとファクトチェックされていたりすることが意外と多いものです。

日本での導入・注目事例

この「横読み」手法は日本でも徐々に注目されつつあります。ファクトチェックに取り組むジャーナリストや研究者からは、「限られた時間で効率的に真偽を確かめるには横読みが有効だ」との発信が増えてきました。例えば日本ファクトチェックセンター(JFC)のオンライン講座では、情報検証の効率化テクニックとして横読みが積極的に紹介されています。講座記事の中で「世の中にあふれる無数の情報すべてに厳密な検証をするのは時間的に不可能だが、効率的に実践するために多くの機関が推奨しているのが『ラテラル・リーディング(横読み)』です」と述べられ[27]、スタンフォード大学の教材を例に「ブラウザのタブを複数開いて当該情報を検索し、関連する公的機関や主要メディアの発信と比較したり、検証ツールを活用したりしましょう」と具体的な方法を解説しています[28]。実際、ファクトチェック活動に携わる国内の記者たちは日常的にこの横読みを駆使しており、SNS上の怪しい投稿の出所をたどったり、海外のファクトチェック記事を横串で検索したりしています。

教育分野でも、学校図書館や教育委員会が横読みの重要性に着目し始めています。たとえば神奈川県の学校司書研修や全国学校図書館大会などで、先述のスタンフォード大学の研究や横読みの指導法が紹介されました[29][25]。講演では「ブラウザのタブを次々に開いて元情報の社会的評価を調べる『横読み』という方法が、これからの学校で教えるべきリテラシーだ」と強調され[29]、「調べ学習の場面ではファクトチェックの専門家が行っている手法の一部を生徒にも取り入れる必要がある」と提言されています[30]。具体的には、中高生がレポートを書く際に一つのサイトだけでなく必ず他の情報源で裏付けを取るよう指導したり、授業中に生徒自身のスマホでその練習をさせたりするといった実践が報告されています[31]

また、日本のメディアリテラシーに関する情報発信も横読みを取り上げています。先述のビッグイシュー・オンラインの記事や、SmartNewsメディア研究所の専門家インタビューでも「ある投稿を見て確信が持てないとき、新しいウィンドウを開いてその情報発信者を検索し、投稿内容が事実かどうか確かめる」といった横読みの方法が一般向けに紹介されています[32]。こうした啓発によって、「鵜呑みにせず自分で調べる」という意識が少しずつ広がってきていると言えるでしょう。

日本ではまだ横読みという言葉自体はそれほど一般的ではないかもしれませんが、SNSリテラシーや情報モラル教育の文脈でその考え方が浸透し始めています。「疑わしきはすぐ検索」のようなキャッチフレーズで、大人向けの講座や企業の情報セキュリティ研修などに組み込まれる例も増えていくかもしれません。私たちも日々のニュース閲覧やSNS利用の中で、この横読みの視点を意識することで、情報に踊らされず主体的に取捨選択できるようになるでしょう。ぜひ今日から、気になる情報は一手間かけて横に読み解く習慣を取り入れてみてください。それがデマや陰謀論に流されない一番の防御策になります。情報があふれる今の時代、横読みという新しい読解術は、私たちが身につけるべき必須スキルと言えそうです。[33][13]

(ChatGPT-5 Deep Reseach により作成しました)


[1] [8] [9] [10] [11] [18] [19] [26] フェイク情報に騙されない教育とは:高校生の98%がネットで真偽を見誤る/米研究結果より | BIG ISSUE ONLINE

https://bigissue-online.jp/archives/12621

[2] [5] Teaching Lateral Reading | Civic Online Reasoning

https://cor.inquirygroup.org/curriculum/collections/teaching-lateral-reading/

[3] [4] [12] [13] [22] [23] [24] [33] It doesn’t take long to learn how to spot misinformation online, Stanford study finds | Stanford Graduate School of Education

https://ed.stanford.edu/news/it-doesn-t-take-long-learn-how-spot-misinformation-online-stanford-study-finds

[6] [7] [14] [15] [20] [21] [30] ファクト・チェッカーの技法である「ラテラル・リーディング」を体験的に学ぶことで、医学部3年生にネット上の偏見や医療誤報を見抜く力をつける - 医学教育つれづれ

https://medical-educator.hatenablog.com/entry/2024/10/10/060000

[16] [17] [27] [28] JFCファクトチェック講座3:検証の4ステップ 「横読み」で効率的に

https://www.factcheckcenter.jp/course/course/4-step-verification-efficient-skimming/

[25] [29] 22120645-キャリアデザイン学部紀要第20号_00前付.indd

https://cdgakkai.ws.hosei.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/05/gb202205.pdf

[31] [PDF] 偽情報時代のメディア情報リテラシーと学校 図書館

https://hosei.ecats-library.jp/da/repository/00023077/mil_1_2_p83.pdf

[32] メディアリテラシー教育の効用とは?~ジョセフ・カーン博士インタビュー(下) - スマートニュースメディア研究所 SmartNews Media Research Institute

https://smartnews-smri.com/literacy/literacy-1181/

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