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スマホ社会なのに"ラジオと油性ペン"が最強の防災グッズだった

東日本大震災から15年。あの日のことを覚えている人も、まだ生まれていなかった人も、この国に暮らす以上「次」は必ずやってくる。

ウェザーニュースが今年も実施した減災調査(回答者数10,269人)の結果が、なかなか考えさせられる内容だった。僕自身、公認心理師として「人はなぜ備えられないのか」「非常時に冷静でいられるのか」というテーマに関心を持っているけれど、今回の調査データは、まさにその心理的な盲点を浮き彫りにしていた。

「スマホがあるから大丈夫」——その思い込みが、いちばん危ないかもしれない。今日は調査結果を読み解きながら、今すぐできる備えについて一緒に考えてみたい。


災害情報、みんな何で取ってる?


地震が起きたとき、何を使って情報を得るか。調査によると、天気・地震アプリやニュースサイトなど、スマホ・ネット経由が主流になっている。5年前の調査でもこの傾向は指摘されていたけれど、デジタルシフトはさらに進んでいる。

ただ、面白いのは世代差だ。若い世代はライブ配信やSNSで情報を取り、年配層はテレビやラジオの割合が高い。普段の情報取得のスタイルが、そのまま災害時にも反映されるということだろう。

半数以上が「連絡手段を決めていない」


ここからが正直、ヒヤッとする話だ。

停電や回線混雑でスマホが使えなくなったとき、家族とどう連絡を取るか。最も多かった回答が「決めていない」で53.1%。災害用伝言ダイヤル「171」は20.0%、事前に決めた集合場所は18.9%で、半数以上が「スマホが使えない状態」をそもそも想定していないという結果になった。

心理学的に言えば、これは「正常性バイアス」の典型例だと思う。「自分はたぶん大丈夫」「スマホはなんだかんだ使えるだろう」という楽観が、備えの先送りにつながっている。

一方で、すでに対策している人の声がリアルで面白い。「公衆電話を探す」「震災時は固定電話で連絡を取り合った」という経験者の声に加え、「自宅ポストに油性ペンを常備して、アナログに伝言を書き残して避難する」なんて人もいた。デジタルに頼らないこの発想、正直うなった。

停電時の頼みの綱は「ラジオ」と「車」


スマホが使えない状況で、災害情報をどう入手するか。圧倒的1位は「ラジオ」で58.5%。テレビ、防災無線がそれに続く。

興味深かったのは「車」の存在感だ。「車のナビでテレビやラジオを見る」「エンジンをかけてテレビをつける」という声が非常に多い。車を単なる移動手段ではなく、情報源や電源として活用するという発想だ。また「乾電池とハンドル式ラジオが威力を発揮した」「ポータブル電源でスマホを充電して情報収集した」など、自前で電源を確保している人も少なくなかった。

普段はスマホでいつでも繋がれるからこそ、「バッテリーが切れたら?」「基地局がダウンしたら?」を想定しておくこと。外部電力や通信に依存しないアナログな代替手段を持つことが、現代の防災の第一歩と言える。

8割超が「フェイク情報を見抜く自信がない」


個人的に、今回の調査でもっとも注目したのがこの項目だ。

SNSのフェイク画像やデマを見分ける自信があるか?」という問いに、「ある」と答えた人はたった16.5%。「ない」が28.3%、「わからない」が55.2%で、合わせると80%以上が自信なし

AI技術の進化で、今は精巧なフェイク画像を簡単に作れる時代だ。災害時には実際の被害とは異なる偽画像や、悪質な救助要請のデマが拡散しやすい。混乱の中で「これは本当?嘘?」を判断するのは、プロでも難しい。

だからこそ、平時から「信頼できる情報源」を確認しておくことが大事だ。自治体の公式アカウント、NHKや大手報道機関など、情報の出どころをチェックする習慣を持つこと。これを私は「デジタル防災リテラシー」と呼びたい。

そしてもうひとつ。「自分は見分けられる」と思っている16.5%の人も油断は禁物だ。災害時は平時と精神状態が全く違う。不安や焦りの中では、普段なら引っかからない情報にも振り回される。いつも以上に慎重に、が鉄則だと思う。

帰宅困難への備え、地域で全然違う


東日本大震災で大問題になった帰宅困難。15年経った今、対策している人は約3割にとどまり、「意識はあるが具体的対策はできていない」が47.2%、「特に対策していない」が20.4%で、約7割が未対策という状態だ。

都道府県別のデータを見ると、対策率トップは宮城県の47.0%。東北地方の各県も高い。やはり震災を直接経験した地域は意識が違う。首都圏も東京40.1%、神奈川37.4%、千葉35.1%と、交通麻痺を経験した記憶が備えに反映されている。2016年の熊本地震を経験した熊本県も対策率が高い。

実に分かりやすい話で、「経験が備えを生む」のだ。逆に言えば、経験していない地域では備えが薄くなりがちということでもある。

都市部と地方、備え方が全く違う


面白いのは、都市部と地方で備えの内容がまるで違うことだ。

都市部では「革靴からスニーカーに替えた」「徒歩帰宅ルートを常に考えている。実際に10km歩いて帰る実験もした」「無理に帰宅せず会社に留まる。ロッカーに保存食と飲み物を備蓄している」といった、非常に実践的な対策が並ぶ。「歩いて帰るための装備」と「職場に留まるための備え」を両立している人が目立つ。

モバイルバッテリーや少量の食料を入れた「防災ポーチ」を持ち歩くという声もあり、災害時にむやみに移動せず群集事故を防ぐという意識も根付いてきている印象だ。

一方、地方では車が主役。「車内に水、簡易トイレ、毛布、寝袋を常備」「車中泊仕様なのでしばらくしのげる」など、車を「移動する避難所(シェルター)」として活用する考え方が広く浸透している。

ただし、ここに落とし穴もある。「田舎だから帰宅困難にはならない」「車があるから何とかなる」という楽観から、実際には車に何も積んでいなかったり、車から離れた場所での被災を想定できていない人が一定数いるのだ。

備えを見直すきっかけ、あなたは何?


備えを見直すきっかけで最も多かったのは「大きな地震のニュースを見た時」で40.9%。次いで「定期的に見直している」が16.2%、「防災の日や震災の節目」が14.4%、「実際に大きな地震にあった時」が13.2%と続く。

直接被災していなくても、他地域の災害ニュースをきっかけに我が事として備えを見直す人が多いのは心強い。ただ、いざという時に「非常食の賞味期限が切れていた」「電池が使えなかった」という事態を防ぐには、やはり定期的な見直しが大切だ。

ローリングストック法、知ってる?やってる?


最後に、備蓄を長続きさせるコツとして「ローリングストック法」の調査結果を紹介したい。普段食べている食品を少し多めに買い置きし、消費しながら使った分を買い足していく方法だ。

「実践している」が37.3%、「名前だけ知っている」が35.8%、「聞いたことがない」が26.9%。認知度はそこそこあるけれど、実行に移せていない層が同程度いるという状況だ。

特別な非常食を押し入れの奥にしまい込むのではなく、普段から食べ慣れたレトルト食品や缶詰、飲料水を少し多めに買っておいて、古いものから使い、使った分だけ補充する。これなら賞味期限切れも防げるし、無理なく続けられる。「日常と非日常の境界をなくす」ことが、備えを習慣にするいちばんのコツだと思う。

最後に


心理士の立場から言わせてもらうと、「備えなきゃ」と思うことと、「実際に備える」ことの間には、想像以上に大きな溝がある。人間の脳は「今すぐの快適さ」を優先するようにできていて、「いつか来るかもしれない災害」への備えは、どうしても後回しになりやすい。

でも、今回の調査を見て思うのは、別に完璧な備えなんてしなくていいということだ。家族と「171」の使い方を一度確認する。車に水を1本積んでおく。ポストに油性ペンを置いておく。そのくらいの小さな一歩でいい。

震災から15年。あの教訓を風化させないために、今日できるひとつだけ、やってみませんか。

#東日本大震災15年 #防災 #減災調査 #ローリングストック #デジタル防災リテラシー


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