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なぜ私たちは「月面着陸は嘘だ」という陰謀論を信じてしまうのか

「月面着陸は嘘だ」という話を、あなたも一度は耳にしたことがあるでしょう。

テレビの特集を見るたびに、「まさかとは思うけど、もしかして……」と少しだけ引っかかってしまったこと、ありませんか。

かくいう私も、長年医療の現場で働きながら、そういった「なんとなく気になる話」を完全に切り捨てられない自分がいました。先日、宇宙飛行士の野口聡一さんがテレビ番組に出演し、UFOや陰謀論について語るのを見て、思わずメモを取り始めました。公認心理師として「なぜ人は陰謀論を信じてしまうのか」という問いは、ずっと向き合い続けてきたテーマです。今日は、その番組から学んだことを、心理の側面から整理してみたいと思います。



「尿が銀河に見えた」夜のこと


野口さんが番組で語ったエピソードの中で、私がいちばん印象に残ったのは「尿の銀河」という話でした。

スペースシャトルの周囲に、ホタルのような無数の光の粒が漂っているのが観測されたことがある。宇宙飛行士たちは「これは未知の生命体ではないか」と驚いた。ところが調査してみると、その正体は宇宙船から放出された尿が、宇宙空間で瞬間的に凍結し、太陽光を反射していたものだったそうです。

「言葉にできないほど美しかった」と野口さんは笑いながら話していました。

未知のものを前にしたとき、人は「これは何か特別なものだ」と感じる。これは人間の認知の、ごく自然なパターンです。宇宙という極限の現場に身を置いた飛行士でさえ、最初はそう感じる。だとすれば、私たちが日常でUFOや陰謀論に「なんとなく引っかかる」のは、ある意味でとても人間らしいことだと思います。

UFO情報公開の、本当の意図


先日、トランプ大統領の指示により、アメリカ国防総省がUAP(未確認異常現象)に関する機密文書を大量に公開しました。緑色の球体や正体不明の円盤の目撃記録が含まれており、「ついに宇宙人の存在が認められた」と期待した方も多かったと思います。

でも野口さんは、ここで少し冷静な視点を示してくれました。

UAP(UFO)というのは、「管制下にない飛行物体」のことです。空は私たちが想像するよりずっとガチガチに管理されていて、識別できない飛行物体はその時点で「敵」として扱われる。今回の情報公開の背景にあるのは、「だから国防のために、もっと軍のレーダーや防衛システムに投資すべきだ」という、極めて現実的な政治・軍事的意図だというわけです。

宇宙人の話ではなく、軍事予算の話。そう言われると夢が壊れる気もしますが、「信じたい気持ち」と「現実」の間には、いつもこういったギャップが潜んでいます。

アポロ11号の捏造説が消えない理由


「なぜ旗が揺れているのか」「なぜ星が写っていないのか」「着陸音がしない」——月面着陸捏造説には、一見すると「確かにおかしい」と思わせる"証拠"が揃っています。

野口さんは、これらを一つひとつ丁寧に解説してくれました。

旗が揺れるのは、空気がなくても設置時の振動が続くから。月面では摩擦が少ない分、動きが長続きするのだそうです。星が写らないのは、明るい月面に露出を合わせると、暗い夜空の星は映像に収まらなくなるため。着陸音がしないのは、当時の宇宙船が「送信ボタンを押したときだけ音声が流れる」仕様だったから。そして何より、冷戦のライバルだったソ連が着陸の事実を認めたことが、最も強力な反証になっています。もし捏造なら、ソ連が即座に世界へ暴露していたはずだからです。

こうして聞けば、どれも説明のつく話です。それでも捏造説が消えない理由を、公認心理師として考えると、「確証バイアス」と呼ばれる認知の歪みが大きく関わっていると思います。

一度「嘘かもしれない」という仮説を持つと、人はそれを支持する情報ばかりを拾うようになる。否定する証拠が出てきても、「それも隠蔽の一部だ」と解釈してしまう。この思考のループが、陰謀論をいつまでも生き続けさせる燃料になっているのです。医療の現場でも、病気に関するデマが患者さんの心の中で同じメカニズムで広がっていくのを、何度も目にしてきました。

50年間、なぜ月に戻らなかったのか


ここで私が思わず膝を打ったのが、コンコルドの話でした。

超音速旅客機コンコルドは、アポロ計画とほぼ同じ時代に開発され、音速を超えるスピードで大西洋を横断していた。でも今は、もう飛んでいません。理由はシンプルで、「採算が合わなかった」からです。

アポロ計画も、まったく同じ構造で語れます。ソ連との宇宙開発競争に勝つという「国家の威信」のために、当時のアメリカGDPの数パーセントに相当する天文学的な予算が投じられた。目的を達成したあとは、その莫大なコストを維持し続ける動機がなくなった。だから計画は打ち切られ、50年間、人類は月に戻らなかった。

「昔はできたのに今はできない」という事実は、確かに陰謀論的な解釈を呼びやすい。でも、経済的な合理性というレンズを通して見れば、まったく不思議な話ではないのです。

今、アルテミス計画として有人月面探査が再開されようとしているのも、今度は「台頭する中国との宇宙開発競争で先手を打つ」という新たな動機があるからです。中国はすでに2019年に月の裏側にロボットを着陸させており、アメリカはその事実に焦りを感じ始めている。人も、国家も、動機がなければ動かない。その原理は50年前も今も変わりません。

「信じたい気持ち」との付き合い方


番組の中で野口さんは、宇宙には2兆個もの銀河があり、天の川銀河だけでも2000億個の星がある、と教えてくれました。そんな広大な宇宙に、知的生命体が地球人だけであるはずがない。でも、それが今この瞬間に地球を訪れているかどうかは、また別の話だと。

この冷静さが、私はとても印象的でした。

宇宙や陰謀論に「何か大きな秘密があるかもしれない」と感じること、それ自体はまったく否定しなくていいと思います。未知に引き寄せられる気持ちは、人間の知的好奇心の表れです。問題はそこではない。

「確証バイアス」に乗っ取られると、どれだけ事実を提示されても「それも隠蔽だ」という方向に走ってしまう。そうなると、もはや真実を探すための好奇心ではなく、「信じたいものを信じるための回路」になってしまいます。それは、とてももったいないことだと思います。

「尿が銀河に見えた」と笑いながら語る野口さんの言葉の中に、私はそのバランスを感じました。未知を楽しみながら、でも現実から目を逸らさない。その姿勢こそが、情報があふれる今の時代に最も必要な、一種の「知的な免疫力」なのかもしれません。

まとめ


今日お伝えしたかったことを、3つに絞ります。

ひとつ目は、UFO・UAP情報の公開は宇宙人の存在証明ではなく、軍事・政治的な意図が背景にあるということ。ふたつ目は、アポロ11号の捏造説は「確証バイアス」によって生き続けており、論理的な反証も物理的な証拠もきちんと揃っているということ。そして三つ目は、「信じたい気持ち」それ自体は自然なことだけれど、そのバイアスに気づくことが、情報と正しく向き合う第一歩になるということです。

陰謀論というのは、ある意味で「知への渇望が暴走した姿」だと私は思っています。だからこそ、否定するより「なぜ信じてしまうのか」を問うほうが、ずっと豊かな理解につながる。

宇宙の話は、いつも私に「人間って面白いな」と思わせてくれます。あなたも、次にUFOや陰謀論の話を聞いたとき、ちょっとだけ立ち止まって「自分はなぜこれに引っかかっているんだろう」と問いかけてみてほしいと思います。その一歩が、情報に振り回されないための、いちばん確かな処方箋です。

ここまで読んでくださったあなたに、心からの感謝を。「おもしろかった」「役に立った」と感じていただけたら、そっとスキを押していただけると、とても励みになります。


#UFO #陰謀論 #月面着陸 #公認心理師 #宇宙

追記:私も以前、アポロ月着陸について、詳細にファクトチェックをしました。ぜひ、ご覧ください。


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