AI イラスト の色表現! 合成染料は、世界をどう変えたのか? 【画像生成】
はじめに
こんにちは、きまま / Easygoing です。
今回は、AI イラストの色表現について考えてみたいと思います。

青・紫・赤の色表現
今回は、次の3つの色について見てみます。

青:インディゴ(藍)
紫:ティリアン紫、ロイヤル・パープル(貝紫)
赤:アリザリン(茜)
いずれも 鮮やかで深みのある 表現の色で、古くから天然染料として利用されてきました。
インディゴ・ブルー:日本でもお馴染みの染料
古今東西、人類と最も馴染みの深い染料が インディゴ です。
インディゴの名前の由来は ラテン語 の indicum(インドのもの)から来ていて、古い時代から インド産の青い染料 がシルクロードを通じて地中海地域に持ち込まれていたことが分かっています。
天然のインディゴは、色素のもとを含んだ植物の葉を、発酵・酸化 する複雑な工程を経て生産されます。

インディゴを使った染色は世界各地で行われていて、日本では阿波国(徳島県)を中心に 藍(あゐ) が広く栽培され、衣類の染色や日本画の顔料として使われました。
インディゴは、分子全体で光を受け止める
インディゴの分子は、次のような構造をしています。

インディゴは、六角形の亀の甲羅のような形をしたベンゼン環を中心に、単結合と二重結合が交互に出現(共役系)する構造を持っています。
この共役系は 特定の波長の光を吸収 する働きがあり、インディゴは太陽光から赤と緑の光を吸収し、深い青 を表現するのです。
紫の染料は、貝から採れる
インディゴに似た染料として、ティリアン紫(ロイヤル・パープル) が存在します。


ティリアン紫(Tyrian purple)の名前の由来は、現代のレバノンの南部に位置する都市 ティルス(Tyre:現地語ではスール)から来ています。

ティリアン紫は、この地方で採れる シリアツブリガイ と呼ばれる 貝の粘液腺 から抽出されます。
紫は権力の象徴!
ティリアン・パープル は、1つの貝からごく僅かしかとれないため、とても貴重な染料で、 金の3倍の価値 がありました。
古代ローマ帝国では、紫は 皇帝の色 と定められていて、紫の衣類を身につけて良いのは皇帝の一族に限られていました。

古代ローマ帝国の国教がキリスト教になると、カトリックでもこの習慣は踏襲され、紫色は 教皇 や 枢機卿 が身につける権威を象徴する色となり、王家の紫(Royal Purple)とも呼ばれるようになりました。
19世紀の後半に、合成染料が登場する
その後、天然染料は長い間 富と権力の象徴 として君臨しますが、やがて 19世紀の後半になると 合成染料 が登場します。
1856年、ロンドンの王立科学専門学校に通う 18 才の学生だった ウィリアム・パーキン は、休み中に 抗マラリア薬 の キニーネ を、コールタール(石炭を精製したときの副産物)から合成する実験をしていました。

パーキンは、キニーネの合成には失敗しますが、実験の最中に得られた黒い液体をエタノールで薄めると 紫色 になることを見つけました。
当時、ロイヤル・パープルをはじめとした紫色の染料は貴重だったので、試しに液体に絹糸を垂らして染めてみるときれいに染まり、熱湯や石鹸水で洗っても色落ちしませんでした。
パーキンが発見した、世界初の合成染料は モーブ と名付けられ、ここから合成染料の時代が始まります。

合成染料はドイツで発展する!
モーブが発見された当時、イギリスは産業革命を経て、世界最大の綿織物の輸出国になっていましたが、染料は植民地の インド からインディゴを輸入していたため、合成染料はあまり発達しませんでした。
その代わりに、当時の新興の科学国の ドイツ とその隣の スイス では、ライン川流域を中心に合成染料を扱う会社が次々と誕生していきます。
ドイツの染料会社

BASF は世界的な総合化学メーカー
スイスの染料会社

「色」は、庶民のものになる
モーブをはじめとした赤色系の色素は アニリン系染料 と呼ばれ、染料会社が改良して次々と新しい色が生まれます。


モーブ:世界最初の合成染料
フクシン:印刷用マゼンタの原型
アリザリン:茜(あかね)色
特に、1868 年に合成された アリザリン は、染色が容易で色落ちも少なかったため大ヒットとなり、それまで赤色の天然染料の材料として世界で栽培されてきた 茜(あかね)の産業は衰退していきました。
その後、1897 年 に インディゴ が、1909 年 に ティリアン紫 も合成法が確立して大量生産が始まり、それまで 富と権力の象徴だった「色」は、庶民のものとして普及 していくのです。

染料から医薬品に発展する!
染料会社はアリザリンの製造で莫大な利益を上げましたが、その中の一つ バイエル社は、1897 年に染料の技術を応用して医薬品の アスピリン(アセチルサリチル酸)を発売します。


サリチル酸は消炎作用がある薬として昔から使われてきましたが、胃腸障害 の副作用が強い薬でした。
アスピリンは、サリチル酸の構造を少し変えることで、内服しても胃腸の粘膜では作用せず、血中に入ってサリチル酸に変換 されてはじめて効果を発揮するように改良れていて、副作用が大幅に軽減されています(このような薬を プロドラッグ と呼びます)。
アスピリンは消炎鎮痛作用のほかにも、心筋梗塞や脳梗塞の予防効果 も証明されて、発売から 120年 以上経った現在でも広く使われる薬になっています。

AI イラストで色を表現する
それでは、AI イラストで色を表現してみましょう。
次の8つの色をプロンプトに入力して、いろいろな 画像生成 AI でどのように表現されるか試してみます。

maroon, burgundy, rouge, alizarin, royal purple, indigo, deep blue, royal blue
SDXL(anima_pencil-XL):原画

AuraFlow_0.3

Flux.1 [dev](blue_pencil-flux.1-v0.0.1)
![Flux.1 [dev]で生成されたアニメイラスト。黒いドレスの金髪女性が花束を持つが、色はややくすんでいる。](/https://assets.st-note.com/img/1759477405-t7lZLmKN3s8k2QBUDja91ic5.png?width=1200)
HiDream-I1-Dev

Qwen-Image

AuraFlow と HiDream は色の表現に特徴がある
新世代の画像生成モデルは、いずれも色をきれいに表現しますが、その中でも AuraFlow と HiDream は鮮やかな色を表現します。
AuraFlow は、version 0.3 で アートの表現を追求する改良 がされています。
HiDream は、プロンプトを解析するテキストエンコーダーを4つ搭載した画像生成モデルで、どのようなプロンプトでもきちんと拾い、自然に解釈する のが、最大の特徴になっています。
HiDream について
色の参考になるサイト
ここから、AI イラストで色を表現するときに参考になるサイトを紹介します。
Deep Colors

Deep Colors は、画像生成で使える 深みのある色 をまとめたページです。
今回利用した色も含めて、CFG の色表現とはまた違った 落ち着いた表現 ができる色を一覧にしてあります。
なお、一覧の中にある Coffee など実在するものをモチーフにした色は、名前を入力するとそのまま コーヒー が描写されてしまうため、代わりに カラーコード(#5C4033)を入力する再現できます。
HTML Color Codes(Color Library)
HTML Color Codes は、web デザイナー向けに デザインの参考になる色 についてまとめられたサイトです。
たくさんの色が分かりやすく紹介されているので、自分の好きな色を探す参考になります。
まとめ:合成染料は世界を変えた!
色は富と権力の象徴
合成染料で庶民のものに
AI イラストは、色のプロンプトに反応する
色は、人類の歴史と深く関わっています。
名前のついた特徴的な色には、それぞれの色が誕生した 深いエピソード があります。

現在は、タブレットとペイントアプリを使えばどんな色でも簡単に描ける時代ですが、そのような時代だからこそ、AI と一緒に 言葉による色表現 を探してみてはいかがでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございます!
参考記事
ComfyUI での色調整
今回のイラストは、AI による自動色補正 と LAB 色空間の HDR 処理 を行って仕上げています。
