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一発逆転を追いかけた48歳が、水戸黄門で目を覚ました話


1. 泥沼のフリーランス生活と焦り


去年、会社を辞めてフリーランスになった。
仕事はない。

会社員時代から細々と続けていた副業も、まったく鳴かず飛ばずだった。

持っていた資産の価値も、笑えないレベルで激減している。

48歳、情けない。

次々と現れる最新のAIツールにすがり、効率よく状況を打破しようと試みるものの、何一つ形にならない日々。

焦りばかりが募る完全な泥沼の中で、毎日ため息ばかりついていた。



2. 午前4時、唐突に鳴り響いたあの曲


ある日の朝方4時。
ふと目が覚めた。

部屋は真っ暗で、静まり返っている。

しかし、頭の中ではっきりと音楽が鳴り響いていた。

「人生楽ありゃ苦もあるさ 涙の後には虹も出る」

水戸黄門の主題歌、「ああ人生に涙あり」だ。
なぜ水戸黄門なのか。

別に好きな番組ではない。ただ、日本に住んでいれば誰もが知っているから知っている、という程度の曲だ。

その時は、深く考えなかった。
48歳。歳をとったから、ただ朝早くに目が覚めたのだろう。

変な夢を見たな。
寝ぼけた頭でそう片付け、再び布団を被った。



3. 繋がった点と点、30年前の記憶


それから数日後のことだ。

いつものようにパソコンの前で、AI活用の解説動画を眺めていた時。

唐突に、点と点が繋がった。
父だ。

12年前に亡くなった父は、水戸黄門が大好きだった。

記憶が一気に30年前にフラッシュバックする。

私は自分の部屋で、別のテレビ番組を見ていた。

階下の居間からは、父と母の声が聞こえてくる。

またチャンネル争いをしている。
結局、最後はいつも父が折れずに勝つ。

耳が遠くなりかけていた父は、テレビのボリュームを容赦なく上げる。

床板を通して響いてくるほどの巨大な音量で、あのテーマ曲が流れ出す。

月曜日の夜8時、我が家の、ありふれた日常だった。

当時の私はまだ10代で、親の見る時代劇なんて古臭くて退屈なものだと決めつけていた。

「うるさいな」と、自室で舌打ちをした記憶が蘇る。



4. 画面を滲ませた、父からのエール


点と点が、繋がった。

あの爆音のテーマ曲だ。

ただの偶然かもしれない。

疲れていただけかもしれない。

年齢のせいで、昔の記憶が勝手に浮かんだだけかもしれない。

それでも——。

父が、今の私を励ましてくれているのだ。

そう気づいた瞬間、視界が歪んだ。

画面の文字が、涙で滲んで見えなくなった。

情けなくて、悔しくて、でも少しだけ温かくて、声を出してボロボロと泣いた。

2月の終わりに立ち上げたこのnoteの文章を打っている今も、また泣いている。

いい年をした中年が、一人でキーボードを叩きながら泣いている。



5. 毎朝のルーティンとチョコレートクッキー


数年前から、私には毎朝のルーティンがある。

朝起きてすぐ、自分の食事をとる前に、真っ先に父の仏壇に向かう。

線香に火をつけ、お茶を供える。
そして、お経を唱える。

最初は見よう見まねで、印刷された紙をたどたどしく読んでいた。

今ではもう、紙を見なくてもすらすらと口から出てくる。

父が好きだったチョコレートクッキーを買ってきては、よくお供えしている。

もしかして、あの毎朝のお参りが効いたのだろうか。

毎日欠かさずクッキーを供える息子を見て、わざわざ励ましに来てくれたのか。

そう思うと、なんだか無性に嬉しかった。

生前の父は、お墓参りをとても大事にする人だった。

片道1時間かけて、毎月のように車で通っていた。

背中を丸め、熱心に手を合わせる姿を思い出す。

私は本来、不思議なことはあまり信じないタチだ。

幽霊の類は恐ろしくて苦手だし、非科学的なことには鼻で笑うタイプだ。

それでも、あの朝だけは、確かにそう感じた。



6. 魔法のツールではなく、不格好にコツコツと


地道で面倒な作業から逃げ続けていた。

でも、朝方4時に私をどん底から引き上げようとしたのは、最新のAIツールでも、魔法のプロンプトでもなかった。

30年前の、うるさいくらい大音量だった実家のテレビの記憶。

そして、父の存在だった。

「人生楽ありゃ苦もあるさ」

歌詞の通りだ。今は間違いなく、苦しい時だ。

虹が出るまで、泥水をすすってでも頑張らないといけない。

一足飛びの成果を求めるのではなく、実直だった父のように、不格好でも今日できる小さな作業を一つずつ、コツコツと積み上げていくしかないのだ。



7. これからの誓いと、鳴り止まないイントロ


毎朝の仏壇のお参りは、これからも絶対に欠かさない。

チョコレートクッキーも切らさないようにしよう。

そして今度は、私がお墓参りに行ってみようと思う。

往復2時間。面倒くさいなんて言ってはいられない。

パソコンの画面から目を離す。

部屋は静かだ。

でも、耳の奥ではまだ、あの爆音のイントロが力強く鳴っている気がした。

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