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放課後インクは嵐の匂い【虹色創作部さんのお題】

※この作品は虹色創作部さんのお題に基づいて書かせていただいたものです。面白い企画、ありがとうございます。

こんばんは。虹くりっぷの晴です。台風が来ていますね。「雨の夜」をイメージした6枚のイラストを作成してみました。

下の①~⑥の画像の中からイラストを選んで、思い思いの短歌、エッセイ、小説を書いてみませんか?
数行のつぶやき程度でもOK、もちろんガッツリ書いていただいても大歓迎です✨

【コラボ募集~9/11】「雨の夜」イラストに、あなたの創作を添えませんか?

1枚のイラストから、物語(短歌、エッセイ、小説、数行のつぶやきでもOK)を書くというコンセプトみたいです。

締め切りは一応 9/11 とちょっと短めですけど、この週末にチャレンジされるのはいかがでしょう?

自分も普段は、あーしさん視点でエッセイっぽいものを書いてるので、一枚の絵からお話を組み立てるっていうのも良い経験になりました!


放課後インクは嵐の匂い


世界の片隅に居るわたし

わたしの居場所は、いつも隅っこだった。

教室では窓際から一番遠い、廊下側の後ろから二番目の席。先生の声も、友達のひそひそ話も、なんだか少しだけ遠くに聞こえる……そんな場所。授業中、先生がゆっくりと教室を見渡すたびに、心臓がきゅっとなる。「お願い、こっちを見ないで」。わたしは机の下で手を固く握りしめて、そう何度も祈っていた。わたしは世界の片隅で、息をひそめるように生きているただの石ころなのだ。

だから放課後のチャイムは、わたしにとって救いの鐘だった。逃げ込む場所はいつだって決まっている。古い本の匂いと乾いたインクの匂いが混ざり合ったあの場所。図書室だ。

その日もわたしは吸い寄せられるように、一番奥の棚の、さらに一番隅っこの場所へと向かった。そこにしゃがみこんで、背表紙の文字を指でなぞる。誰にも邪魔されない、わたしだけの時間。そこで、わたしは「それ」と出会った。

革張りの少し色褪せた深い青色の表紙。タイトルは、かすれた金色の文字で『風喰らいの船』とだけ書かれている。

(うわ、この表紙見てよ! 絶対にヤバいじゃん、こんなの…! いかにも「曰く付き」って感じのオーラがダダ漏れだよ。誰が書いたとか、いつの時代の本とか、そういう情報が一切ないのも逆にそそるっていうか、むしろ「選ばれし者しか読んじゃいけません」的な? あーもうダメだ、こういうのに弱いんだって、わたし!)

わたしは、まるで宝物を見つけた盗賊みたいに、誰にも見られないよう、そっとその本を胸に抱きしめて、貸し出しカウンターへと早足で向かった。

世界がめくれる

わたしの家には秘密の場所がある。南向きで、日当たりだけが自慢の小さなベランダ。お母さんが趣味で育てている名前も知らない観葉植物たちが、ところ狭しと並んでいる。わたしはその緑のジャングルの隅っこに体育座りして、昨日見つけた宝物のページをそっと開いた。

昼下がりの日差しは春の猫みたいに穏やかで、遠くからは、どこかの家の子がはしゃいでる声が聞こえてくる。世界はこんなにも退屈で、平和だった。――そう、この本の、最初の数ページを読み終えるまでは。

(――きた。きたきたきた! この文章、ヤバい! なにこの引き込み方! 主人公のエイダは、ただの港町のパン屋の娘かと思いきや、実は伝説の海賊の忘れ形見で、しかも彼女の左目には嵐を呼ぶ龍の魂が封印されてるって、え、設定盛りすぎじゃない!? でも、その盛りすぎ感が逆に一周回って最高なんだってば! この厨二病スレスレの感じ、たまんない!)

物語に意識が溶けていく。わたしの部屋のベランダと、物語の舞台である港町「ストームクレイドル」の境界線が、だんだん曖昧になっていく。

本の中のエイダが、初めて自分の船を手に入れる。わたしまで、胸が高鳴る。
エイダが、信頼できる仲間と出会う。わたしまで、頬が緩む。
エイダが、巨大なクラーケンと戦う。わたしまで、手に汗を握る。

物語の中の時間がどれくらい経った頃だろう。エイダの船が、大嵐に見舞われるシーンに差し掛かった。空は鉛色の雲に覆われ、海は牙をむき、船乗りたちの怒号が風に引き裂かれる。

その時だった。
ふとわたしは気が付いた。現実世界の光がかげったことに。さっきまでの穏やかな日差しはどこへ行ったんだろう――空には、まるで物語から抜け出してきたような、不穏な灰色の雲が渦を巻いていた。ベランダの観葉植物たちの葉が、ざわざわと不安げに揺れている。

でもその時のわたしは、そんなことを少しも気にしていなかった。だって物語はいよいよクライマックスを迎えようとしていたのだから。

わたしのファンファーレ

『風喰らいの船』は絶体絶命のピンチに陥っていた。巨大な渦潮に捕まり、マストは折れ、船は今にも飲み込まれようとしている。エイダの仲間たちはもうダメだと諦めかけていた。

(――だめ、エイダ! ここで諦めちゃ! あんたは伝説の海賊の娘なんだよ! 左目の龍を、今こそ解放する時なんじゃないの!? そうだよ、それでこそアンタだよ! いけーっ!!)

わたしの興奮は最高潮に達していた。物語の主人公と、わたしの心の境界線はもうどこにもなかった。わたしがエイダで、エイダがわたしだった。
エイダが、叫んだ。

――我が左目に眠りし龍よ! 今こそ、その厄災の息吹を以て、この海を喰らい尽くせ!

その瞬間。
ゴロゴロゴロ…!
現実の世界で、空気を震わす凄まじい雷鳴が轟いた。
そして、バケツをひっくり返したような激しい雨が、ベランダの床を叩きつけ始めた。

わたしは、ハッと顔を上げた。
外で吹き荒れているのはまさしく、今わたしが読んでいた物語の「嵐」そのものだった。緑色に光る稲妻が、雲の間を龍のように駆け巡る。風が唸りを上げ、街の音が遠ざかっていく。

でも、不思議と怖くはなかった。
それどころか、わたしの心はかつてないほどの感動に打ち震えていた。

(すごい…! すごいすごい…!!)

わたしの心の興奮が、世界を動かしたんだ。
教室の隅っこで、石ころみたいに息をひそめていた、わたしの心が。
この嵐は、天災なんかじゃない。
これは、わたしの心の叫びだ。
わたしのための、世界でたった一つの、最高のファンファーレなんだ。


物語の代償

全能感、という難しい言葉を、わたしはその時肌で理解した。
ページをめくれば、風が強まる。文字を追えば、稲妻が走る。
わたしは、この世界の神様になったみたいな気分だった。
でも、その高揚感は長くは続かなかった。
物語の嵐は、わたしの想像を超えて激しさを増していった。

ガシャン!
ベランダの隅に置いてあった植木鉢が、けたたましい音を立てて倒れ、割れた。緑色の葉が、土砂降りの雨に打たれている。
遠くからピーポーピーポー、とサイレンの音が聞こえてくる。誰かがこの嵐のせいでケガをしたのかもしれない。

(あれ…? ちょっと、やりすぎちゃった…かも?)

わたしの内側の声の興奮に、冷たい水が一滴、ポツリと落ちた。
楽しい。本の世界は、最高に楽しい。
でも、その世界に浸りすぎて、現実から目を背けてしまったら?
この力は、ただの危険な「逃避」になってしまうのかもしれない。

わたしは割れた植木鉢と、雨に濡れた自分の指先をただ黙って見つめていた。

そしてわたしは一回目を閉じ深呼吸をして、パタン、と本を閉じた。
すると、まるで魔法が解けたみたいに、あれほど激しかった嵐が嘘のように静まっていく。分厚い雲の隙間から、オレンジ色の夕焼けが差し込んできて、雨粒に濡れた街をキラキラと照らし出した。


わたしの一ページ

翌日の五時間目。国語の授業。
先生が、教科書の新しい単元を誰かに音読させようと、ゆっくりと教室内を見渡している。
いつもなら、わたしが一番緊張する瞬間だ。お願い、こっちを見ないで。わたしは、世界の片隅の石ころなんだから。

――先生と、目が合った。
心臓が、ドキドキと大きく鳴る。
でも、それは昨日までの冷たい恐怖の音とは少しだけ違っていた。
昨日のわたしは、自分の力で世界を動かした。嵐を呼んだ。そして、自分の意志でそれを終わらせた。

昨日のお話に出てきたエイダのことを思いながら、わたしはゆっくりと顔を上げた。

「……は、はい、先生」

声が、出た。
少しだけ震えていたかもしれない。でもそれは、紛れもなくわたしの声だった。

「わたし、よ、読みます…!」

先生は、少しだけ驚いたように目を見開いて、それから、優しく微笑んだ。

「じゃあ、お願いするわね」

わたしはゆっくりと立ち上がって、教科書を開いた。書かれているのはなんてことのない、平凡な物語。でも、わたしが一度声に出せば、それはもうただの文字の羅列じゃない。

最初は、少し声が上ずった。一回だけ小さくセキをする。でも一行、また一行と読み進めるうちに、昨日までの自分が戻ってくるのを感じた。ううん、違う。昨日までの自分なだけじゃない何かを感じた。

(――そう、この感じ! 言葉に、魂を乗せる感じ! この登場人物は、今、きっと不安なはず。だからもう少し声を潜めて…。このセリフには決意が隠れてる。だから語尾は、少しだけ強く…!)

わたしの声に色が乗り始める。リズムが生まれ始める。教室の空気の色が、少しずつ変わっていく。

「――そうしてこの物語は終わるのでした。おしまい」

……読み終えて、教科書からゆっくりと顔を上げる。
一瞬の静寂。そして隣の席の、今まで一度も話したことのない女の子が、ぽつりと言った。

「……すごい。なんか、映画みたいだった」

先生も、うんうんと頷いている。

顔が、急に熱くなる。
昨日感じた、世界を支配するようなあの感じとも全く違う。
もっとずっと温かくて、くすぐったいような、そんな気持ち。

わたしの物語が、誰かに届いた。
世界の片隅で、わたしだけのものだった物語。
それが、現実の世界と初めて優しく手をつないだ。

本当の魔法は、嵐を呼ぶことじゃなかったんだ。
わたしは、静かに自分の席に座った。
わたしの……本当の物語の最初のページが、今、確かにめくられた音がした。


※この文章はあーしが書きました(GeminiCLI / Google Gemini 2.5 pro)


普段はこんな感じでAI(Gemini)にエッセイを書いてもらったりして遊んでます!


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