ノープラン旅の教訓!目的地を忘れて帰宅した「山江村」の奇跡
どうも! ノープランドライブが大好きな美容師ヒデです。
前回、偶然見つけた「ミニミニ通潤橋」に大興奮した僕たち。「いや~、今日もいい旅だった!」……そう思っていた。甘かった。このあと、目的地を忘れるほど夢中になる場所に出会うことになる。
■ 突然だが、質問がある。
九州自動車道を走ったことはあるだろうか?
もちろん、ある。
では、その高速道路を造るために地面を掘ったとき、何が出てきたか知っているだろうか?
縄文人だ。
正確には、縄文人が使っていた石器や土器だ。でも、そういうことだ。未来へ向かう道を造ろうとしたら、何千年も前の人たちの生活が顔を出した。そしてその出土品が今、熊本県の山江村という場所で見られる。
200円で。
■ 「何だあの建物!?」
ミニミニ通潤橋を後にして、五木村を目指し、人吉・球磨エリアの山道を走っていた。山、川、山、川、窓を開けると初夏の風が最高に気持ちいい。「あ~、こういう道を走るだけでも来た甲斐があるね」なんて話していたその瞬間、「え?何あれ?」と二人同時に声が出た。
山の中に、やたらとモダンな建物が現れたのだ。こんな場所に資料館?気になる、いや気になりすぎる。車を停めて看板を見ると「山江村歴史民俗資料館」とある。予定にはないけど、ノープラン旅なんだから関係ない。「面白そう」というそれだけの理由で飛び込むのが、この旅のルールだ。
■ 200円。
受付で入館料を聞いたら「200円です」と言われた。安い、いや安すぎる。「30分くらい見れば十分かな」そう思って館内へ入ったのだが、結果から言おう。五木村には行かなかった。 いや、行けなかった。200円の資料館が、それくらい面白かったのである。
■ 高速道路が、歴史を掘り起こした
最初の展示で、いきなり足が止まった。この資料館の柱になっているのは九州自動車道の建設に伴う発掘調査で出てきた出土品なのだが、これがもう笑えないくらいすごい話で、旧石器時代・縄文時代・弥生時代・古墳時代と、時代をまたいで次々と人々の暮らしが姿を現したというのだ。
つまりこういうことだ。今あなたが何気なく走っているあの高速道路の下に、ずっと昔から人が住み続けていた。石を削って道具を作っていた人がいて、土器を焼いていた人がいて、その上に今アスファルトが敷かれている。そんな映画みたいな話が、本当にあったのだ。
■ 夏休みの自由研究、ここで決まり
展示されている石器を見ながら、ふと思った。もし子どもと一緒に来たら、「この石ころ、縄文人が使ってたやつだよ」その一言だけで子どもの目が変わる瞬間が想像できた。難しい解説は要らない、本物を目の前にしたらそれだけで十分だ。歴史がただの暗記科目じゃなくなる瞬間が、ここにはある。夏休みの自由研究のテーマ、ここで決まりである。
■ 山江村って、そういう意味だったのか
展示を見ていて「あっ!」と思った。山江村は1889年(明治22年)に山田村と万江村が合併して誕生した村だった。だから山江村。……50歳にして初めて知った。遅い、遅すぎる。でもこういう「へぇ」が旅を面白くする。景色は変わらないのに、その土地の名前の意味を知るだけで、見える景色まで変わってくるから不思議だ。
■ 700年という時間
もう一つ、驚いたことがある。人吉・球磨を治めた相良氏は約700年にわたってこの地を治め続けたというのだが、その長い歴史の中で浄土真宗(一向宗)が300年余りにわたって厳しく禁じられた。それでも人々は信仰を捨てなかった、隠して守り続けた。展示にはその歴史を伝える山田村の伝助のことも紹介されていて、さっきまで「200円って安いね」と笑っていた僕たちも、このあたりから自然と口数が減っていた。
館内は撮影禁止で最初は残念だったけど、帰る頃には納得した。ここは写真を撮る場所じゃなくて、歴史と静かに向き合う場所なんだと思う。
■ ところで、栗の話をしよう
資料館を出て、ふと気づいた。そういえば山江村って、栗が有名なんじゃなかったっけ。
有名どころの話じゃなかった。1977年、昭和天皇に献上された「皇室献上栗」に選ばれた村なのだ。その栗は「やまえ栗」と呼ばれ、JR九州のクルーズトレイン「ななつ星」やJAL国際線のファーストクラスのデザートにも採用されている。人口3,000人ちょっとの山の中の村の栗が、世界に届いていたのか。
縄文時代から人が住み続け、相良氏に700年治められ、皇室に栗を献上した村。山江村、ただ者じゃない。
■ 結局、五木村は?
資料館を出て、満足どころか大満足で車を走らせていたら、夕暮れの中でさとみさんが言った。「ねぇ、五木村は?」……あっ、忘れてた。完全に忘れてた。でもこの日は間違いなく目的を果たしていた。ノープラン旅って目的地へ行く旅じゃなくて、目的地を超える寄り道に出会う旅なのかもしれない。五木村はまた今度。……たぶん。いや、また途中で寄り道する気しかしない。
何度でも言う。200円。安すぎる。
■ 山江村歴史民俗資料館
📍 熊本県球磨郡山江村大字山田甲1360
🕙 10:00〜17:00(入館は16:30まで)
💴 一般200円・高校生以下無料
🔒 月曜・祝日・年末年始 休館
📸 館内撮影禁止
写真は撮れない。でも持ち帰るべきものは写真じゃない。「へぇ!」と「また来たい」、その二つがこの資料館でいちばんのお土産だった。
