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【ショートショート】 『文学茶釜』

「おまえごときにもこの由緒正しき文福茶釜で、茶を淹れてやる。ありがたく思え」
「御隠居。だから屑屋に騙されたんですって。文福茶釜の茶釜は今も茂林寺にあるんですから」
「興を削ぐやつだなあ。本物だと言っていたのを買ったのだから、これは本物だ。その証拠に、無限のお湯が沸く」
「さっき水を足していたじゃありませんか」
「お前はせっかちだからだ。気の長い客には、茶釜から滲み出るありがたいお湯で淹れている」
「なら俺も待ちますよ」
「おまえは先刻、暇がないといっていただろう」
「いやいや、俺の仕事の場合、はやくやっつけるにはゆとりも大事なんです」
「なにをいっておるか。お前に見せる奇跡なんぞないよ」
「そこをなんとか」
「茶釜さまが機嫌を損ねる。だめだ」


 帰り道。戯作者は笑っていた。

「ああ言えばこう言うねえ。でもまあ御隠居と茶を飲みながら法螺話を聞いていると、いいものを書けるからねえ」

 なるほど無限にネタをくれる茶釜だ、などと思った。



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#文学茶釜

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