警察県 毎週ショートショートnote

野生の証明 【410字】
就職して俗に言う警察県に配属されてからというもの、犬の調教を続けている。
俺は上着が脱げない。犬は俺のYシャツの背中に張り付いている。他人と目が合うと敵対心剥き出しで吠えかかる野生に近い未熟なやつだ。小型犬なら可愛げもあるが、俺のドーベルマンは今や脇の下では収まらず、前身頃まではみ出している。
ここには関係者しか住んでない。したがって一般人に迷惑が及ぶことはないが、いくら身内とはいえ気が引ける。
でも俺にはわかっている。背中のこいつが大きな才能を秘めていることは。
東京の警察庁に出向いた時のこと、帰途でこいつは身を震わせて吠えた。その直後、拳銃発砲事件が起きた。こんな鋭敏な感覚を持つ犬はそうそういやしない。
あとは普段の気性の荒さを抑えるだけなんだが。
訓練開始から一年が過ぎ、俺は実地訓練に出た。
副都心の路地裏で、俺は不穏な気配を感じて逆毛立った。すぐさまそこにいた女の脚に、男の股ぐらに噛みついた。
ただの不倫カップルだった。
了

たらはかにさま
よろしくお願いいたします
