見出し画像

映画館で避難した日と、「まず逃げる」という危機管理

ショッピングモールの映画館で、二度目の『プラダを着た悪魔2』を鑑賞しているときだった。
映画の途中で突然画面が消え、再生が止まって灯りがつくと録音された自動アナウンスが流れた。

「火事です。避難してください。火事です」

映画に夢中になっていた頭がいきなり現実に引き戻され、一瞬わけがわからなくなったが、とにかく避難せよとのアナウンスなのだからとすぐ思い直し、荷物を掴むとさっさとシアターを退出した。

こういうとき、パニックに陥るひとがいなかったのは良かったが、少し気になることもあった。
状況がつかめないのか、「え?大丈夫だよね?」という感じできょろきょろしつつも、なかなか動こうとしないひとがかなりの人数いたことだ。

少なくとも、シアターという閉鎖された空間では、状況もわからないのだからさっさと逃げた方が賢明だろう。
実際のところ、火災報知器の誤報というケースは多いとは思う。でも、万が一ほんとうに火事で、恐ろしいことになっていたら?
もたもたしている間に、気づいたときには逃げ遅れているかもしれない。

危機感は、命を守るためにとても重要だ。
危ないことが起きている可能性があるかもと思ったとき、フットワーク軽くすぐ逃げるべきだとわたしは思っている。

開発協力の世界で途上国に行く仕事をしていると、安全管理についてはブリーフィングも受けるし、研修も受講する必要がある。

たとえば、テロに遭遇したら。強盗に押し入られたら。
実際に起きた恐ろしい話は昔から山ほど聞いてきた。
テロ対策研修では、レストランが襲撃された場合にどの席が狙われやすく、どこから逃げるかを教わった。
そのせいか、日本のレストランで食事をするときも、つい安全な席の位置を考えてしまうことがある。
でも、「何かが起きたら」というのを常にどこかで気にしていることが、ときに身を守るケースもあると思う。

この国ではテロが起きることは少ない(もちろんゼロではない)けれど、本当は世界のどこで何が起きるかなどわからないのだ。そして、火事はいつでも身近なところで起きる可能性がある。

もし、「誤報だったのに逃げたなんて恥ずかしい」という思いがちらりとでもあったら、そんなものは捨ててほしい。指示通り逃げて、あとで何事もなかったら、ああ無事でよかった、と言えばいいだけのことなのだから。

今回の映画館での件は、ショッピングモール内の駐車場で火災報知器が反応した誤報だった。
映画館のスタッフは、走り回りつつも冷静に客を誘導してくれた。シアターを出たところの廊下のスペースで観客たちは皆、少し不安げながらもスタッフの指示通り10分ほどおとなしく待った。

ただ、待っているあいだも、頭の片隅ではずっと出口の位置を確認していた。

安全が確認されると全員シアターに戻り、順番に中断されていた映画の上映が再開された。

エッセイ100本プロジェクト(2023年9月start)
【92/100本】


いいなと思ったら応援しよう!

横山仁美 |【雨雲出版】ひとり出版社とアフリカと よければ、翻訳机にコーヒーを一杯。 いただいた一杯が、次の本や旅の支えになります。