【論文発表】森田希輔獣医師が柴犬の角膜内皮炎に関する研究論文を発表しました
当院に所属する森田希輔 獣医師がまとめた研究論文が、国際的な獣医眼科学術誌である「Veterinary Ophthalmology」に受理され、web上に掲載されましたのでご報告いたします。
≪論文名≫
Clinical Characterization of Corneal Endotheliitis With Distinctive Features in Shiba Inu Dogs(柴犬にみられる特徴的な角膜内皮炎の臨床像)
研究の概要
本研究では、角膜内皮炎と診断された柴犬16頭30眼の診療記録をもとに、臨床所見や治療への反応、治療後の経過を調査し、原発性角膜内皮変性症との違いを検討しました。
その結果、柴犬の角膜内皮炎では、地図状の角膜内皮混濁や局所的な角膜浮腫がみられ、原発性角膜内皮変性症と比べて発症年齢が若く、角膜内皮細胞の減少も軽度であることが明らかになりました。
また、ステロイドによる抗炎症治療を行ったすべての症例で、炎症や角膜浮腫の改善が認められました。これらの結果から、柴犬の角膜内皮炎は、原発性角膜内皮変性症とは異なる病態である可能性が示されました。
森田希輔 獣医師からのコメント

日々の診療の中で、角膜内皮面が白く濁り、角膜浮腫や結膜充血を伴う柴犬を時折経験してきました。このような症例は、日本各地の獣医眼科の先生方からも経験があると聞いていましたが、まとまった報告や専門書での記載はありませんでした。私自身、大学・大学院時代から犬の角膜をテーマに研究を続けてきたこともあり、この病態を明らかにしたいという思いから本研究に取り組みました。
今回の研究では、「柴犬の角膜内皮炎」について、発症年齢や眼の所見、治療への反応などを整理し、従来知られている原発性角膜内皮変性症とは異なる病態である可能性を示しました。「柴犬の角膜内皮炎」という新たな病態・概念を報告できたことは、本研究の最も大きな成果だと考えています。
本研究を行うにあたり、ご協力いただいた飼い主様をはじめ、ご指導いただいた先生方、そして診療を支えてくださったスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。
今後は、本研究の成果を柴犬の角膜内皮炎の早期診断や適切な治療につなげるとともに、Patient-Based Veterinary Ophthalmologyをさらに推進していきたいと考えています。
当院で出会うそれぞれの症例を大切にし、その積み重ねを新たな病態の理解やより良い治療法の確立に活かし、次の患者さんへ還元することで、一頭一頭にとって最適な動物眼科医療を追求してまいります。
本論文は以下リンクよりご覧いただけます。
原著論文(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/vop.70169)
参考文献
M. Morita, M. Inagaki, K. Usami, et al., “ Clinical Characterization of Corneal Endotheliitis With Distinctive Features in Shiba Inu Dogs,” Veterinary Ophthalmology 29, no. 2 (2026): e70169, https://doi.org/10.1111/vop.70169.
