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【小説家を目指す人の読書記録】『完璧な病室/小川洋子著』を読んで

「完璧な病室」は、もうすぐ死を迎える弟を静かに見守り続ける姉が主人公の美しさと醜さのコントラストが効いた小川洋子さん初期作です。
もう一作、デビュー作の「揚羽蝶が壊れる時」が収録されています。この作品は、痴呆の祖母をグループホームに預ける主人公の私が、自らの内側にある正常さと異常さに葛藤を抱く物語です。

僕は、小川洋子さんの「猫を抱いて象と泳ぐ」を読んでから、その文章に宿る強さ、優しさ、美しさに胸を掴まれて離れられない人間です。
だからこそ初期作であるこの2つの短編には、小川洋子さんがこの世界を底の底まであるいは隅々まで目を凝らしてみて書いてやるぞという若い意気が全体を通して強く残ります。
「揚羽蝶が壊れる時」では、世界に不純と指されている部分を疑い、自らの存在を不確かなものとしてしまう主人公の心の隅にある震えを抉り出し、それが安易な他人の言葉や社会のルールによって区別されることへの主人公の恐怖心を描いています。または危惧のような重みもあります。たとえ社会が前に進んでいるように見えても、標本の揚羽蝶を壊した時の手に残る感触を忘れないと宣言するような小川洋子さんの芯を僕は受け取りました。
「完璧な病室」は死の美しさが際立つ小説です。
僕は、世界は今も理不尽だと考えています。なぜならば、僕たちが幸せを感じるのは、不幸せな状態があるからという、理不尽な真理があるからです。
「完璧な病室」を美しいと感じるのは、必ず死ぬというゴールに向かっているからです。直線的に用意された死にも、徹底的に掃除した後にも部屋の隅には必ず埃が溜まるように、些細な醜悪さがあるものです。

僕はこの2作品を通して、小川洋子さんの強く、優しく、美しい小説の基礎を知ることになりました。

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