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最上級を手放すときー8年使ったオーブンレンジの買い替えで思うこと

新居への引っ越しを機に、オーブンレンジを買い替えることにした。
これまで8年使っていたのはシャープのヘルシオの最上位機種。当時の価格は、確か20万円を超えていた。

壊れてはいない。でも、庫内の汚れが、すっきり落ちない。過熱水蒸気調理をすると白い粉が出るようになった。ミネラル成分か、洗浄のクエン酸の残りのようで、調べると害はないらしい。

でも、毎日使う道具だから、気持ちはよくない。

そこで買い替えを決めた。

高価なオーブンレンジを買ったきっかけは、HERS誌(残念なことに現在休刊)で担当した家電大特集だった。
モデルさんの自宅に伺って家電を撮影したり、メーカーさんの広報から、評判や売りポイントを教えてもらったり。家電の企画なんてやったことがないから、右往左往した。

そのとき家電選びの指南役として出演してくださったのが、家電ライフスタイルプロデューサーの神原サリーさんだった。

家電のサンプルを山ほどリースして、台車で会社のスタジオまで運び込んだ。
なかでもヘルシオは、大物だから設置にも一苦労。そこでWi-Fiにつなぎ、サリーさんに、ヘルシオをしゃべらせてもらった。

「今日は何を作りましょうか?」「ローストチキンがおすすめですよ」

わ、オーブンレンジがしゃべった!ネット環境がよくなく、片言だったけれど、衝撃的だった。

惚れた。

「これまでの家電は、性能を上げるたびに本体を買い替える必要があった。でもヘルシオは、ソフトウェアがアップデートできる。だから高くても、長い目で見ればお得なんです」というサリーさんの言葉に、私は何度もうなずいた。

私は一気にへルシオ買うぞモードに入った。

誤解のないように言うと、サリーさんが「買いなさい」と勧めたわけではない。ただ魅力を語ってくれただけだ。でも私は、取材で誰かの話を聞くと、その人や、その人が語るものに、心から惚れ込んでしまう。惚れないと、書けない。

その後、別の取材でお会いした勝間和代さんのメルマガでも、ヘルシオが熱く語られていた。ヘルシオを使えば健康的で手軽な食事ができる、と。
もう買うっきゃない。ビックカメラに突進した。

高かった。でも後悔は一度もしなかった。

子どもたちが食べ盛りだった頃、大きな天板に野菜や肉を並べて、ボタンひとつで一気に料理を作った。大きなホッケを2枚並べて同時に焼いた。低温調理でローストビーフや温泉卵を作った。

ヘルシオは、我が家の食卓を支えてくれた。

ちなみに、我が家に来たヘルシオも、よくしゃべった。調理が終わっても取り出さないでいると、「加熱ができました」と何度も何度も繰り返す。しつこい。次男はいつも「こいつうるさい」と言っていた。

ある日、仕事から帰ったら、ヘルシオが黙りこんでいた。次男に黙らされたらしい。

しゃべらせる設定に戻そうとしたが、やり方がよくわからない。まあ、しゃべらなくてもいいか、となった。

近未来の友人のようだったのに、以来ひとことも発していない

時は流れた。

子どもたちは独立し、夫婦二人の暮らしになった。魚はグリルで二人分焼けば十分。大きな天板を使う機会も減り、過熱水蒸気調理もあまり使わなくなった。

ヘルシオが変わったのではない。暮らしが変わったのだ。

今回、次の機種を探すにあたって、AIチャットに相談してみた。最初は、使い慣れたヘルシオの下位機種にしようかとも思った。でもそれだと、「落ちた感」がある。せっかく買い替えるのに、機能が減って、格が下がった、と感じるのは嫌だ

でも、他のブランドに変えれば、そもそも土俵が違う。多少機能が低くても、「こんなもんか」と思えそうだ。

そこで、ヘルシオの中位モデルの型落ちと、家電量販店でみた安いパナソニックを比べてみてもらった。
すると、AIが、オーブンレンジを何に使うかを聞いてきた。それで、今は、過熱水蒸気料理をしないことや、オーブン料理をしたり、ピザを焼いたりはよくするということを伝えた。すると、AIは東芝の石窯ドームを勧めてきた。ピザを焼くなら、熱の回りがいいので、絶対におすすめだと。

調べると、石窯というだけに、焼くのが得意で、ハード系のパンも美味しくできるらしい。玄人はだしにパンを焼く友人がいるので、作り方を習って、私も挑戦してみようか。

価格は5万円台。ヘルシオを買ったときの、4分の1以下。

OK、これにしよう。

家電は、賢くなった。
スマホ連携、AIレシピ提案、Wi-Fiでアップデート。
でも、結局 そんなには使わないにちがいない。
60代になって、最上級はトゥーマッチになった。
負け惜しみじゃなく

子育ての時代には、最上級が必要だった。あの大きな天板も、水蒸気調理も、全部使った。あの時代に、あの道具を選んだことは、正しかった。

でも今は違う。機能が少ない方が、迷わない。シンプルな方が、使いやすい。

安く買える分、他のもっとしたいこと、ほしいものにお金が使える。

ちなみに、今も、神原サリーさんとのご縁は続いている。

宝島社の「素敵なあの人」の家電連載を始めるとき、お願いにうかがうと、HERSの企画をよく覚えてくださっていた。今も、毎月楽しくお仕事をさせていただき、もう3年以上。今月もまた取材でお話を伺う予定だ。



手放すのは、単なる家電ではない
子育ての時代を一緒に過ごした相棒であり、大変だった取材の記憶と結びついた存在だ。
人生の一番忙しい時期を、支えてくれて、ありがとう。
そんな思いを胸に我が家から送り出したい。


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