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選抜とは、交配意図を最後まで貫く作業である。

「選抜」と聞くと、多くの人は「一番綺麗な株を残すこと」を想像するかもしれません。
もちろん、美しい株を見極めることは重要です。
しかし、私にとって選抜とは、それだけではありません。

選抜とは、遺伝という可能性を信じ、未知なる表現を生み出すために次世代を担う親木候補を選ぶこと。

これがacu'sの考える選抜です。

だからこそ、単純に「今一番綺麗だから」という理由だけでは、最上位の株にはなりません。


◎選抜は、交配が終わってから始まる

交配には必ず意図があります。

ある交配では葉形を追い求め、別の交配ではベルベットの質感を、また別の交配では色彩や葉脈の表現を目指します。

もちろん、「黒く丸いベルベット」というような具体的なゴールを設定することもあれば、「まだ見ぬ表現を探したい」という抽象的なテーマから始まることもあります。

交配ごとに目指す方向は異なります。
そして、その交配意図こそが選抜の基準になります。


◎acu'sが減点方式を採用する理由

acu'sでは選抜を減点方式で行います。

意図した方向性から外れた株は、どれだけ魅力的であっても最上位評価にはなりません。
これは、その株に価値がないという意味ではありません。

むしろ非常に魅力的な個体であることも少なくありません。

しかし、その個体が今回の交配で目指した表現と異なるのであれば、それは「別の可能性」です。

選抜とは、その場の美しさに流されることではありません。
交配前に掲げた目的を最後まで貫く作業です。

途中で「こちらの方が人気が出そうだから」と評価基準を変えてしまえば、その交配から得られる答えは曖昧になってしまいます。

育種は、その時々の流行を追いかけるゲームではありません。
一つの仮説を最後まで検証する営みだと考えています。


◎人気があることと、残すことは違う

市場性を無視しているわけではありません。
人気がある表現には、それだけ多くの人を惹きつける理由があります。

そのため普及を目的とした交配では、市場性も重要な評価項目になります。
より多くの人に、高品質な植物を手に取っていただけるよう改良することも、育種家として大切な役割だと思っています。

一方で、創作を目的とした育種では話が変わります。

市場性が交配意図を覆すことはありません。

「売れそうだから残す」のではなく、「目指した方向だから残す」。
この順番が逆になることはありません。


◎意図から外れた株は、価値がないのか

もちろん、そんなことはありません。
交配意図から外れた個性的な株が生まれることは珍しくありません。

そうした株は、acu'sにとって最上位の親木候補にはならなくても、別の方向性を持つ素材として大きな価値を持っていることがあります。

「この個性なら、自分とは違う発想を持った誰かが、新しい育種へ発展させるかもしれない。」
そう考え、市場へ送り出すこともあります。


育種の可能性は、一人で完結するものではありません。
だから僕は、自分が進む道を貫きながらも、別の未来へ繋がる可能性まで否定したくないのです。


◎選抜は段階的に行われる

選抜は一度で終わるものではありません。

・初期選抜
プラグトレーから2号鉢へ上げる段階で、生育不良や交配意図から大きく外れた個体を確認します。

・中間選抜
2号鉢から3号鉢(販売サイズ)になる頃には、交配意図を基準に全体の約半数から3分の2になるよう選抜します。
この段階から、販売用の上位品質である「赤タグ」や、将来性を感じる個体を示す「黄タグ(keeper)」の候補も見え始めます。

・最終選抜
3号鉢から4号鉢になる頃には、おおよその評価が固まります。
赤タグとして残る株は交配ごとに異なりますが、多くても10〜20株ほど。
黄タグ(keeper)は、その中でもさらに限られた、ごく少数だけです。


◎黄タグと赤タグの違い

赤タグは、その交配を代表する販売株です。
品質が高く、その交配らしさを十分に備えた個体です。

一方で、
黄タグ(keeper)は販売品質という基準ではありません。
未来への投資です。
「この遺伝子には、まだ見ぬ可能性がある。」
そう感じた株だけが手元に残ります。

黄タグのごく一部は市場へ送り出すこともありますが、
それは単に希少だからではありません。

その価値観を共有し、この株から新しい育種へ挑戦してくださる方に託したいという思いがあります。

だからこそ、その価格にも意味があります。


◎選抜とは、未来を決める作業

選抜とは、一番綺麗な株を選ぶ作業ではありません。
流行に合わせる作業でもありません。
交配前に描いた未来を信じ、その意図を最後まで貫く作業です。

そして同時に、自分が選ばなかった個性にも、新しい未来があることを信じることでもあります。

acu'sにとって選抜とは、可能性を減らす作業ではありません。
数え切れない可能性の中から、自分が進む未来を決める作業なのです。


acupom

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