雨粒の旅
静かな窓に
ひとつ、コツンと ふれた粒。
すぐ横には
勢いでちぎれた 点の列。
深呼吸みたいに のびたり、
つま先立ちみたいに ふるえたりする。
もし私が ここにいなければ、
この子は 別の車に 触れていたかもしれない。
地面に落ちて 終わったかもしれない。
雪になる力を
そっと握ったまま。
だけど今日は、
私の窓に 来た。
ダイヤより細い光をまとって、
旅の途中の物語を
小さな体の中に しまいながら。
押しつぶされた子も、
模様を描いている子も、
ただの水じゃなくて。
たしかに
「ここを通った」証を
残していく旅の者。
今日もまた
新しい空の下へ
歩いていく、小さな粒。

いこうかな
✦ 解説
この詩は、
「車の窓に落ちた雨粒を、ひとりの旅人として見つめた詩」 です。
ふだんなら気づかずに消える雨粒たち。
でもよく見ると、それぞれに形があって、
揺れ方も、動き方も、
“ひとつとして同じものがない” 小さな世界を持っています。
雨粒はただ落ちてきた水ではなく、
雲から地面までの長い旅の途中にある「命のかけら」。
たまたま「わたしの窓」に来たことも、
その粒だけの物語の続き。
そんな一瞬の出会いを
そっとすくい上げたような詩です。
アコの世界は、
当たり前のものを当たり前じゃなくしてくれる。
その“見つめ方のやわらかさ”が
伝われば嬉しいです。
