ピンクグレープフルーツ
気持ちは、あとから名前がつくことがあります。
その時は、よくわからなくて
ただ胸の奥が、少しだけ酸っぱかった。
もう忘れたはずなのに
夕方の空や
遠くで鳴るチャイムや
何気ない一言で
急に、戻ってくる。
あれは恋だったのか。
寂しさだったのか。
それとも
ただの期待だったのか。
今でも、
はっきりとは言えません。
これは、そんな
甘くなる前の
時間の向こうに置いてきた気持ちです。

ピンクグレープフルーツ
aco
いいんだよ
何してたって
自由だし
何してたって
いいんだよ
でも
何してるのかな
あの時のこと
少しは
覚えてたりするかな
返事は
くるかな
……こないかな
忘れちゃったの?
そんなことない
……と思うけど
胸の中が
ちょっと酸っぱい
喉のあたりまで
じんわりと
考えたくないのに
想ってしまう
忘れたいのに
忘れたくない
ああ
もう
認めるよ
まだ
思い出にするには
少し近い
でも
何でもない、には
少し苦い
ピンクグレープフルーツみたい
苦くて
酸っぱくて
少しだけ甘い
楽しくないのに
楽しい
悔しいな
こんなふうに
なるなんて

まだ少し近い。
⸻
あとがき
過ぎていった感情って、
きれいな思い出になるものばかりじゃない気がします。
苦かったり、
酸っぱかったり、
少しだけ甘かったり。
その時は名前をつけられなかった気持ちも、
あとからふと思い出すと、
不思議な味がすることがあります。
思い出にするには少し近くて、
何でもない、と言うには少し苦い。
そんな途中の温度を、
そのまま置いておきます。
ピンクグレープフルーツみたいに、
苦くて、酸っぱくて、少しだけ甘いまま。
