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「ビジュいいじゃん!!」から始まった年間12万円のピアノ沼|若者のピアノに呑まれる午後

大音量への憧れから始まった「音を浴びる」企画

大音量に憧れる。
テレビでもステレオでもいい、とにかく大きな音を体感したい。
一度でいいから、最大ボリュームまで上げてみたいと思った人は少なくないはず。

その延長にあるような、それでいて上品でありたい、と思うのが音を浴びる企画。
カーステレオ全開で真夜中のドライブもいいけれど、もう少し丁寧な何かはないだろうか、ということで。

『音を浴びる』
そんな風に勝手に名付けて、毎年エンタメを巡る企画を一人で勝手にやっている。

一昨年は「生演奏だ!」ということで、ウインドオーケストラのコンサートを鑑賞。
いわゆる吹奏楽コンサートだ。
浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァルのオープニングコンサートや、高校生、大学生の演奏会など。ちょっと嗜好を変えてヤマハ ジャズ フェスティバルへ。

昨年は、友人に誘われて映画館に通うことに。
愛知、岐阜、長野の映画館を中心に、邦画、洋画を問わず50本以上の映画を観に行くことができた。

ピアノリサイタルは借り物のピアノで勝負する舞台

今年、2026年はどうしようかと考え、ピアノリサイタルを攻めることにした。
後から名前をつけるなら、「若者のピアノに呑まれる午後」だと思っている。

ピアノリサイタルの面白さというのは、それがピアノであること。
そのピアノは会場が用意したもの、ということだ。

ほとんどの楽器演奏者は自分の楽器を持ち歩き、それを演奏する。
ヴァイオリンだって、トランペットだって、ギターだってそうだ。
それがピアノになるとどうだろうか。
会場に用意されているそれを、どれだけ弾きこなすかが勝負になる面白さがある。
その日、その環境に合わせて調律されたピアノを弾く。
もし、同じホールを借りることができれば、僕だって同じピアノを扱うことができる。

と考えるなら、ピアニストの勝負は土俵がフラットで、共通で、真の実力が試されるものだと思っている。
もちろんホールや調律やピアノの個体差はある。
それでも、自分の楽器を持ち込めないという意味では、ピアニストはその場に用意された土俵で勝負するしかない。 
あの人は1億円のヴァイオリンだから、というような楽器を言い訳にすることができない。

また、ピアノリサイタルとなれば、その場にいるのは演奏者だけだ。
大きなホールになると数千人という観客が見守る中、借り物のピアノで勝負するメンタルの強さには、次元を超えたものがあると思っている。

その昔、星野源のコンサートを観たとき。
星野源という名前で、星野源という歌手で、バックバンドの出演料もホールの利用料も何もかも背負っているんだから、あぁ大変なプレッシャーだな、と思ったこともあるが。
まして、ピアノリサイタルのように一人で舞台に立つとなれば、それはそれで別のプレッシャーだろう。

そんな面白い環境を試してみたくなって、2026年度はピアノリサイタルに全力で賭けることにした。
おおよそ、趣味に投資するとしたら、年間12万円。
その範囲でチケットを買ってみようと思うのだけど、そのキッカケは別のところから。

「ビジュいいじゃん!!」が、2026年を支配した

一昨年にウインドオーケストラのコンサートを楽しむため、アクトシティ浜松に通っていたのだけど。
浜松市という都市、アクトシティ浜松という場所は、僕にとっては高尚でハイソなもの。

浜松市は、ちょっとしたよそ行きのお出かけの距離だったりする。
そんなちょっとした特別感と、ヤマハ、カワイがある楽器の街だったり、スズキを筆頭に技術の街だったり、海鮮が美味しかったり。
ちょっとだけ憧れがあるような場所だからこそ、特別感がある。

そんな中、見つけたのがアクトシティ浜松友の会の「ビバーチェクラブ」だった。
年会費2,000円で会員になれるし、チケットも安くなるし、先行予約もできるという。
これも何かの縁だと思い入会した。

2026年4月に届いた案内に載っていたのは、富士山静岡交響楽団の年間スケジュールだった。
アクトシティ浜松で2027年2月21日に第140回定期演奏会が開催されるのだが、そこに載っていたのが務川慧悟さんだった。

「ビジュいいじゃん!!」

と思ったのが「若者のピアノに呑まれる午後 (音を浴びる2026)」のキッカケだ。
務川慧悟さんが繋いでくれていると言っても過言ではない。

富士山静岡交響楽団のスケジュールに載っているように、この日はラフマニノフのピアノ協奏曲など、ピアノとオーケストラの共演になっている。
協奏曲もいいけれど、それ以上に「務川慧悟さんのピアノが聴いてみたい」と強く思うようになった。

夜ピアノの通し券で後半戦が決まる

便利な時代になったもので、AIやGoogleに聞けばリサイタル情報は簡単に手に入る。
そんな中で、また出合いがあったのは、神奈川芸術協会が主催している「夜ピアノ」というリサイタルシリーズだ。

「世界の音楽界を席巻するピアニストたちをじっくり聴き比べる、究極のピアノリサイタルシリーズ」というだけのことはある。
SNSなどを検索してみても「この金額でこのラインナップはありえない」と、クラシック好きの方からも太鼓判。
2026年の夜ピアノ、4公演目、2026年12月16日に務川慧悟さんが出演する。
幸運なことにその情報をキャッチしたのは、ちょうど「夜ピアノ」の通し券が発売されている時期だった。
通し券を買うと、全6公演を同じ席で聴き比べることができる。

確かにお値打ちなチケットかもしれないけど、S席は26,250円となかなか良い金額になるのは事実。
また、会場はミューザ川崎シンフォニーホールだ。
神奈川県川崎市は新幹線を使って2時間かかる。
あまりにも距離があるとは思ったけれど、半年も先のこと。
交通費や宿泊費がかかっても、なんとかなるだろ!の勢いでチケットを買ってしまった。

これで2026年度の後半が埋まったのだ。
となれば、もう決めるしかない。
2026年度はピアノリサイタルに全力投球する。

キッカケは務川慧悟さんのビジュがよかったから。
そして夜ピアノに出演するから。

最高に濃度の高い音を浴びるための条件

そこから、僕なりに「最高に濃度の高い音を浴びるため」の、いくつかの絶対条件を設定してリサイタルを探した。

  • 若手ピアニストのソロリサイタルであること

  • 発表会やコンテストではないこと

  • ゲスト出演や連弾は除外する

  • 音響や空間に優れているホールやサロンであること

  • チケット代は5,000円以下、発券手数料込みで6,000円以下であること

  • 初心者に迎合したようなプログラムでないこと

舞台上で、そのピアニストがどのように場を支配するのか、そこに興味があるからこそ、ソロリサイタル重視になり、ゲストで誰かが出てくるとか、連弾は除外した。
例えば、石井琢磨さんがプロデュースしている8人16手のPIANO CLOVERなどは、それ自体はすごく気になるけれど、今回の2026年のラインナップとは別で考えたい。

発表会やコンテストではなく、その一連の演出が面白いから。
ピアノを演奏することが目的であっても、ストーリーを感じられるような舞台を楽しみたい。
また、会場のクオリティも大事で。
イベントというものは、主催者×来場客×会場の積によって満足度が決まるから。
会場選びも重要なポイント。
音響効果を楽しめるコンサートホールや、少人数だとしてもミュージックサロンのような場所を選定。

チケットも高ければいいわけじゃない。
幸いなことに、ピアノリサイタルのチケットはリーズナブルだ。
オーケストラの公演であれば、2万円、3万円というものもある。
が、ピアノリサイタルの場合は、1万円を超えるものは滅多に見かけない。
5,000円程度で収まるものばかりなので、ここは死守したい。

最後に。
初心者でも知っているような曲を並べたリサイタルは除外したい。
知っている曲を聴くというより、そこにピアニストのこだわりを知りたいから。
作曲者縛りでもいいし、国縛りでもいい。
思い入れのある曲だってたくさんあるはず。

それらを「聴かせてやるよ」という自信で演奏してくれるのが楽しみだから。
知らない曲ばかり続いたとしても、響くものはたくさんある。

映画館に通っていたときもそうだったけど、知らないものに出合える楽しみ。
僕が知らなくても、そこには心が通っていて、全力で仕上げている人がいるという興味。

僕の耳と心が、どう変わっていくのか

ビバーチェクラブの案内を受け取るまで、務川慧悟さんのことは詳しく知らなかった。
それでも「ビジュいいじゃん!!」と思った一瞬が、僕の2026年度を支配した。

こうして僕の「若者のピアノに呑まれる午後」は始まった。
4月、実際に愛知県芸術劇場で亀井聖矢さんのピアノを浴びたとき、その場を支配する圧倒的なエネルギーに、言葉通り「呑まれる」感覚を味わった。

今年は、このピアノリサイタルという沼に全力で没頭する。
僕の耳と心が、どう変わっていくのかが楽しみで仕方がない。

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